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くらしの周辺−船に乗って思うこと

 読者がいる出版物に、自分の書いた文章が載る。全く経験のないこと、いわゆる「お初」だ。広島朝鮮歌舞団に入団して今年で7年目を迎えたが、まるで入団後初めて歌った舞台での緊張感と非常によく似ている。とにかくドキドキする。

 私の初舞台はなんと「万景峰92」号の中でだった。広島の港から祖国へ向かい、その帰りの船で朝鮮民謡を歌った。今でも割れんばかりの拍手の音が耳の奥に残っている。

 先日祖国を訪問したが、船に乗るたびにその時のことを思い出しては、この船の、そして船に乗る学生や同胞たちの温かい愛情を受けながら活動する私たち歌舞団は本当に幸せだと感じる。

 そんな折に新潟で体験した今回の事態。自国の防衛力を高める朝鮮の訓練に対し、政府は日本列島を包み込む大騒動を繰り広げ、「万景峰92」号の半年間の入港禁止など、9項目の制裁措置をとった。マスコミも戦争前夜のような過熱報道を行ってきた。

 こんなときこそ、芸術のすばらしさを一人でも多くの同胞へ向けて発信していきたい。逆境を順境に。豊かで温かい同胞社会を目指して。

 このたびの過度な措置に対して平和の尊さをしみじみ思った。近くて遠い国といわれている朝・日が、近くて近い国になるのは一体いつなのだろうか。

 6者協議も、朝・日国交正常化交渉も、全てが中途半端である。問題が何一つ解決しない中で、日本政府は何をもくろんでいるのだろうか。外交交渉によらず力だけに頼ろうとする米日の動きは危険水位を超えている。(河弘哲、広島朝鮮歌舞団団員)

[朝鮮新報 2006.7.31]