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「北の文化遺産−平壌から来た国宝」 ソウル国立中央博物館で特別展

国宝50点など90点を出品

連日たくさんの市民が特別展を観覧している [写真=聯合ニュース]

 いまソウルの国立中央博物館では、解放後はじめての企画展として、「北の文化遺産−平壌から来た国宝」と銘打つ展示会が注目され好評である。

 これは、平壌の朝鮮中央歴史博物館と、ソウルの国立中央博物館との最初の交流事業の一環として実現されることになったもの。

 この展示会では、北側の自慢の重要文化財90点が出品されており、その中には、国宝50点と準国宝11点が含まれている。

 北からこのような大規模の重要文化財がまとめて外部に展示されるのは初めてのことといわれる。

 ソウル市民をはじめ、南の人々は、これまで見ることのできなかった北の文化遺産を直接見ることがができる貴重な機会として歓迎しており、ソウルでの展示に次いで、大邱でも8月28日から10月26日まで、国立大邱博物館で展示される予定だ。

563年ぶりに発見された王建の座像

 じつは、この企画を実現させるため、北南双方は1年の歳月をかけ、合意に達し、双方が展示品の取捨選択を重ねたすえ、90点の文化財を選び、その輸送は危険を考えて陸路によることとし、それらは金剛山を経て5月4日、軍事境界線を越え、その日の深夜ソウルに到着したのである。

 平壌出発にあたって、キム・ソンヒョン館長は、目を潤ませながら「この展示を通じて、わが民族が一つだということを証明する良い契機となることを期待する」と述べたが、これを迎えたソウルの李健茂館長たちも同じ思いであっただろう。

 昨年秋に新装された博物館では、市民たちのために展示説明会を毎日4回も行う力の入れようである。博物館側の熱意が察せられよう。

 さて、このたびの特別展示は、テーマ別に9室にわたって展示されるが、その主なものを簡単に紹介することにしよう。

 (1)前史遺物

平壌城銘文石 [写真=聯合ニュース]

 まず朝鮮の新石器文化を代表する「櫛目文土器」(平壌市三石区域湖南里の住居跡から1994年に発見されたもの)。高さ90センチ。

 これは朝鮮半島全般、および北はシベリヤ沿海州、満州の黒龍江・松花江の流域から、南は九州北部までの地域に発見されるもの。原朝鮮族の居住区域と文化の高さを暗示するもの。

 次に「鳥の足骨で作った笛」。青銅器時代、長さ17.2センチ。朝鮮最古の楽器である。また、同時代の「鏡の鋳型」(伝平南、孟山郡出土)も重要な意味をもっている。銅鏡が輸入されたものでなく、現地で生産されたことを示すからである。

 (2)三国時代では「枕の側面の飾り板」(高句麗初期。平壌郊外の真坡里古墳出土)。中央に精巧な細工で、太陽を象徴する三本足の烏が見られるが、これは古代東北アジア共通の王者のシンボル。

 (3)高麗時代。高麗初代の王、王建(877〜943年)の青銅座像。高さ143.5センチ。この像は、このたびの展示会で最も注目されるもの。1992年、北の社会科学院は、高麗初代王の陵である顯陵の補修工事(すでに盗掘されて、ほとんど遺物はなかった)を行ったが、その北側5メートル地点から所々に金箔の残る1体の青銅像を発見した。

金銅すかし彫り雲(高句麗時代中和郡真坡里1号噴出土)

 はじめ調査団は、これを奇妙な仏像と見て、ろくに発表もしなかったのである。ところが、歴史資料と合わせて研究が進む過程で、これははじめて朝鮮の統一を成し遂げた高麗初代王を尊崇する人々が、951年、王の座像を作り、開城の奉恩寺に祀り、最も重要な国家の象徴として儀礼を行ってきたのであるが、李氏朝鮮になって仏教を弾圧し、儒教を尊ぶ政策によって、1429年(世宗11年)顯陵の裏側に埋められたことが明らかにされたのだ。この像は実に563年ぶりに復活したことになる。王冠をいただき、錦衣をまとう威厳と慈愛の眼をもった王者の風貌を見られたい。

 (4)このほかに、近世を中心として、仏像、陶磁器、記漆工芸、絵画などが部屋ごとに展示されているが、絵画室では、鄭欽や金弘道の佳作、そして平壌出身の画家、楊基薫(1843〜1905?)の大作、紅梅花図などが目を楽しませてくれる。楊基薫は、開国後の1883年、米国へ初めて使節団を派遣する時、記録画作成のため、団長閔泳翊に従って渡米した人でもある。

 南の関係者も指摘するように「この展示は、過去を顧みながら現代と未来を結び、わが民族は元来一つであり、必ず統一することを確認させる」展示となることであろう。(金哲央、大阪経済法科大学客員教授)

[朝鮮新報 2006.8.10]