実話、民話、歴史成長物語 中学生が読む夏の1冊 |
真夏の夜は涼しい部屋で読書にはげもう! 暑〜い夏! 照りつけるような太陽の下で、蒸し返すような体育館の中で、はたまた屋内の部室で、スポーツ、芸術など、毎日の部活動に汗を流している中学生のみなさんに、お奨めしたい書籍をチョイス。 2学期の訪れを間近に、夜は涼しい部屋の中で読書に励んでみてはいかが? 本は一般書店ほか、コリアブックセンターでも注文できる。 【問い合わせ】 コリアブックセンターTEL 03・3813・9725、03・3818・7522。Eメール=order@krbook.net。 「モギ−ちいさな焼きもの師−」 高麗青磁に魅せられた少年 12世紀朝鮮の、高麗青磁の名産地チュルポに住む少年モギとトゥルミじいさんの物語。 モギはみなしごで、同じく天涯孤独のじいさんと一緒に、橋の下でゴミ捨て場からの収穫物と野草などを食べて暮している。でも、盗みと物乞いは決してしない。 じいさんはモギを心から愛し、かわいがり、生きる知恵や「山を読む」すべを教え、おもしろく含蓄のある話をたくさん話して聞かせてくれる。 ひょんなことから村で随一の陶芸家、ミンの下働きになったモギ。たきぎ運びや粘土漉しなど重労働をこなしながら、いつか作ってみたい陶磁器を空想する。 チュルポの陶芸家はみな、宮廷御用達の焼き物師になるという、めったにないチャンスを夢見ている。あるとき、都から王室の使いが訪れるという噂が流れる…。 2002年度ニューベリー賞受賞作。(あすなろ書房、リンダ・スー・パーク著/片岡しのぶ訳、TEL 03・3203・3350) 「ねこぐち村のこどもたち」 貧民街の子どもたちをモデルに 「豊かになった」と言われる南朝鮮の仁川市に今も実在する貧民街、「ねこぐち村」に暮す子どもたちの姿を描いた物語。2001年、南朝鮮で子ども、大人に読まれる100万部以上のベストセラーとなった。 著者の金重美さんは高校卒業後、看護師としてソウル・九老公団近くの工場労働者の多い地域の病院で勤務していた。そこで目にしたのは、「15〜16歳の少年少女たちが工場で切断した指をもって病院にかけこんでくる」様子だった。多くの少年少女たちは手術費が払えず引き返していったという。そのような社会の矛盾に直面した金さんは1987年、24歳の時、自身の故郷である仁川のもっとも貧しい地域である萬石洞に居を移した。 60年代の「ユンボギの日記」から40年を経た現在も、厳しい現実に翻弄されながら、互いに助けあって生きる一家や子どもたちの姿を生き生きと描いた感動作。(廣済堂出版、金重美著/吉川凪訳、TEL 03・3538・7212) 「中・高校生のための朝鮮・韓国の歴史」 明るく大らかな民衆の実像 東京都の公立中学と高校で社会科教師を30年余り務めてきた著者がまとめた、「中、高校生のための朝鮮、韓国の歴史」入門書。 T「古朝鮮から三国へ」、U「高麗王国」、V「朝鮮王朝」、W「苦難の『近代化』」、X「統一への願い」の5章で構成される。 自ら朝鮮史を学ぶ中で、「暗く、重苦しいとばかり考えていた朝鮮史の奥に、以外にも大らかで骨太な姿があった」と記す著者。日本とは比べものにならない侵略の被害の連続である朝鮮史の中で、自分の生活圏を侵された民衆たちが勇敢に立ち上がる姿をはじめ、たくさんの物語や人物を取り上げて、読者に親しみやすくまとめている。 本書は、2000年6月の「南北共同宣言」発表までを扱っており、いまだ続く統一への道を、「朝鮮の平和は、世界の平和にとって、大きな光となるであろう」とまとめている。(平凡社、岡百合子著、TEL 03・3818・0874) 「韓国昔ばなし上・下」 笑って泣ける朝鮮の民話100 昔、トラがたばこを吸い、黒いカササギがことばをしゃべっていたころのこと…。 動物やトッケビや鬼神などが入り乱れる豊かな想像力の世界。おおらかな笑いと共に、人生の大切な教訓や強欲な支配層に対抗する民衆の智恵があふれる朝鮮の民話が上・下巻で全100話収録されている。 第1部「冒険と奇蹟」、第2部「めぐる因果」、第3部「もっけの幸い」、第4部「世渡りさまざま」、第5部「とんちのチュモニ」で構成される本書には、本邦初紹介の話も多数。 その中の一編、「青大将の新郎」は、心優しい娘と結婚したヘビのアオダイショウが、りりしい若者に変身する物語。タニシが変身する日本の「たにし長者」とストーリーが似ており、両国の文化的近さを感じさせて興味深い。イラストは、絵本「さんねん峠」(岩崎書店刊)でおなじみの在日2世、朴民宜さんが手がけている。(白水社、徐正五再話/仲村修訳/朴民宜絵、TEL 03・3291・7811) [朝鮮新報 2006.8.11] |