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〈本の紹介〉 現代韓国と女性

伝統的家父長制克服への道のり

 少子高齢化という人口構造の急激な変化に直面する南朝鮮社会。90年代以降、未婚率が急速に上昇するとともに晩婚化が進み、出生率は先進国の中で最低水準にまで落ち込んだ。

 統計によると、1980年から2000年の間に、25〜29歳の女性の未婚率は、14.1%から40.1%へ、30〜34歳の女性の未婚率は2.7%から10.7%へと大きく上昇している。男女が結婚をしない理由は、男性の場合、「結婚費用の負担」(21%)、「所得不足」(19.2%)、「不安定な雇用」(17.3%)など経済的な理由を挙げる人が多い。一方、女性の場合、「適当な人にめぐり合わないため」(24.4%)、「仕事と家庭の両立が困難」(17.8%)、「結婚費用負担」(13.2%)の順に回答が多くなっている。

 この背景には結婚観の変化があると見られるが、韓国保健社会研究院が全国の未婚男女3417人を対象にした調査(2003年)によれば、結婚は「必ずすべきである」または「したほうがいい」と答えた比率は、男性78.1%に対し、女性は56.9%。一方、結婚は「しないほうがいい」または「しなくてもかまわない」と答えた比率は、男性19.9%に対し、女性は41.5%と、男女間で結婚に対する考え方に、かなりの意識の隔たりが見られることがわかった。

 近年、女性の高学歴化とともに結婚や出産よりも就業を優先する傾向が強まったこと、結婚後も働く女性は増加しているが、就業に関係なく妻の家事労働負担は重く、家庭内の性別役割を容認する考えが根強く残っていることなどが、結婚観における男女間のギャップに示されていると考えられる。

 南朝鮮では近年、政府と市民運動の連携により、女性の権利に関する制度的、法的枠組みが急速に整備され、女性関連政策は目覚しい発展を遂げた。しかし、このような制度的枠組みが整備されたものの、現実には実効性に乏しくなかなか成果に結びついていない。

 本書は、近年南朝鮮が経た変化を、「家族と少子化」「働く女性」「女性運動」「女性政策」「女性の政治参画」といった切り口から検証し、南朝鮮女性の今を多方面な角度から考察する。

 家父長的な男性優位の社会の中で、女性たちが差別や抑圧といかに対峙し跳ね返してきたのか、なにゆえにそれが可能であったのかを歴史的かつ構造的な視点から明らかにするタイムリーな好著。(春木育美著、新幹社、TEL 03・5689・4070)(金潤順記者)

[朝鮮新報 2006.8.28]