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〈本の紹介〉 憲法九条を世界遺産に

「芸」と「歴史」で語る平和論

 このところ、集英社新書のがんばりが目立つ気がするが、どうだろう。今年になって本紙が同新書を取り上げるのは3冊目。「メディア・コントロール」「戦争の克服」、そして本書である。

 いうまでもなく、これらの本の共通のモチーフは、いかに平和を守り、戦争を発動させないために何をすべきかという、真摯な取り組み、思索である。そして、日本の若者に右傾化の波が強く及んでいることを前提に、いま、若者に強い影響を及ぼしている旬の人たちを対談や座談に引っ張り出して平易に語らせているのも、なかなか苦労をしのばせて、同業者としても好感がもてるのだ。

 さて本書、かたや当代随一のお笑いコンビ「爆笑問題」の一人太田光さん。テレビに出ていない日はないような超売れっ子である。こなた宗教学者、哲学者として脚光を浴びつづける中沢新一さん。二人の対談がおもしろくないはずはないという予感があったが、結果もまさにその予感を裏切らなかったとだけ、指摘しておこう。

 二人は本の題名の通り、日本国憲法、とくに9条が次第に輝きを奪われつつあることに鋭い問題意識をもつ。この奇蹟をいかにして遺すべきか、いかにして次世代に伝えていくべきか。お笑い芸人の意地にかけて、芸の中でそれを表現しようとする太田さんと、その方法論を歴史から引き出そうとする中沢さんの稀にみる熱い討論。宮沢賢治をてがかりに交わされた二人の議論の行き着く先は…。

 ユニークで、おもしろく、あっという間に読める一冊。(大田光、中沢新一著、集英社)(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2006.8.28]