〈詩〉 日本刀と竹槍 |
突然ドカドカと家に押し入ってきた 我々は自警団だ 見れば町内会長 (いつもニコニコおはようと挨拶をしていたのに) 今にも襲わんばかりの剣幕で 睨みつけ詰め寄る チュウコエンコチッセン いってみろ ぼくはためらわずに15円50銭と答えた いやチガウ とイノウエさんが凄む (いつも田舎から届いたとおすそ分けをしてくれたのに) またもやぼくは15円50銭と返事した フザケンナとタナカさんがこぶしを挙げる (いつも子どもの面倒をよく見てくれたのに) ぼくは家族を抱きしめ 震える声で15円50銭とつぶやいた このチョンコ野郎 皆が一斉に日本刀をふり降ろし 竹槍で突いてきた がばっと起き上がった 夢だった 隣には妻と子がスヤスヤと眠っていた 額の汗をぬぐいながら アノ人達のことばがずっと耳に残った −謝るぐらいなら死んだほうがましだ 1923年9月1日 6000人もの朝鮮人の首をはねた日本刀は いまもギラギラと殺気だっている ベットリと血糊のついた竹槍は この国の床下で深く根を張っている まるで蛇がとぐろを巻くように (李芳世、詩人) [朝鮮新報 2006.8.30] |