〈みんなの健康Q&A〉 アレルギー(上)−要因と種類 |
Q:最近「アレルギー疾患」が増加しているといわれています。 A:厚生労働省の最近の調査によると、目や鼻、皮膚などに何らかのアレルギー症状を感じたことのある人が日本では35.9%もいて、このうち、医療機関でアレルギーと診断された人は全体の14.7%にものぼるとのことです。それゆえ、現代ではアレルギー疾患対策が社会全体の医療を考えるうえできわめて重要となってきています。 Q:薬を服用したら動悸がした、古くなった牛乳を飲んだら下痢をした。これってアレルギーですか。 A:どうもアレルギーらしくはないですね。それらは薬や牛乳に含まれている成分が直接生体に悪さをしたということで、薬でいえば副作用と考えられます。薬や食べ物のために生体内でアレルギー反応がおこり、熱がでたり、皮膚にブツブツができたり、血圧低下、意識不明などをきたした場合にはじめてアレルギーと呼びます。 Q:なるほど。そもそもアレルギーってどのようなものですか。 A:みなさんは免疫という言葉をご存知でしょう。文字通り「疫すなわち病気を免れる」ということを語源としています。この免疫というシステムにおいて重要な役割を演じるのが抗原と抗体です。外界から体内に進入する抗原あるいはアレルゲンというのは、ウィルスや花粉など生体内に入り込んで病気の原因となる異物をさします。 これに対抗して生体内には免疫グロブリンとよばれる抗体というものが作られ、抗原による攻撃から生体を守る働きをします。抗体ができているということはすでにその抗原に対する抵抗力が備わったということなのです。だから、次に抗原が入り込んできてもやっつけてくれるというわけです。これらが作用しあって生じる種々の反応をそのまま抗原抗体反応といいます。 Q:インフルエンザのワクチンなどもそうですか? A:例をあげれば、インフルエンザなどのワクチンも、抗原を健常人にわざと投与して抗体を作らせることで病気の発生をおさえようという考えから生まれたものです。このように免疫系というのは病気から体を守る防御機構で、これのおかげで人間は今日まで感染症や類縁疾患との戦いを勝ち抜いてきました。 しかしながら、生体にとって有利に働くはずのこの免疫機構が変調をきたし、逆に悪さを働いてしまうことがあります。外来抗原に対する過剰な免疫応答の結果、生体にとって不利な反応が起こり、標的となった細胞や組織の傷害がひき起こされるのです。こういった現象をさして一般的にアレルギーといいます。 Q:もともとは体を守ってくれるはずの免疫反応が異常をきたし、人体に害を及ぼしてしまうことをアレルギーというのですね。 A:アレルギー反応は抗原やアレルゲンにより刺激を受けた白血球とくにリンパ球の作用により免疫グロブリンE抗体が生産される感作相から始まります。次いで、抗原が記憶されたT細胞、肥満細胞とよばれる白血球の仲間に抗体が結合し、この反応によりこれらの細胞から諸症状を引き起こす化学伝達物質やサイトカインとよばれる物質が放出されます。これらが気道、皮膚、鼻腔、まぶたなどに到達して呼吸困難、皮膚のかゆみ、鼻水、涙目などを引き起こすわけですが、同時にまた活性化されたアレルギー炎症性白血球が局所浸潤し、組織傷害因子などを放出してそこの臓器にちょっかいを出し、症状発現に加担するのです。 Q:かなりややこしい話のようですが、アレルギー疾患の発症機序は今なお不明な点が多いそうですね。 A:病態形成には多くの因子が関与しています。例えば、遺伝的因子についていえば、責任遺伝子はまだ発見されていませんが、家系調査を行ったところ、ある家族にアレルギー疾患患者が集中していたという報告が数多くあります。外的要因として環境による影響は無視できません。とくに近年の都市化による大気汚染を含む都市環境の悪化は深刻です。また、建築様式の欧米化により住宅が気密化したことがむしろ悪影響を及ぼしているともいわれています。ダニなどのアレルゲンや車の排気ガスをはじめとする化学物質への曝露、ペット飼育、喫煙、上気道のウィルス感染、職場における化学物質への曝露などの環境因子は、アレルギー疾患の発症や増悪因子として要注意です。近年注目されているのはアレルギーと寄生虫、ウィルス、結核菌あるいは細菌による感染症との関連です。食生活の欧米化で動物性脂肪分摂取量が増加したこともアレルギー疾患増加と関連があるといわれています。 Q:アレルギー反応にはいくつか種類があるそうですね。 A:5つぐらいに分類されていますが、ここでは詳しい説明は省きます。抗原と抗体が主役ですが、同時にアレルギー性炎症にはたくさんの炎症細胞も関与しており、ネットワークを構築し自己増殖して、アレルギー疾患の悪化、難治化を引き起こします。 Q:アトピー体質という言葉を聞いたことがあります。 A:アレルギー性炎症に影響を与える重要な遺伝的因子のひとつと考えられています。その特徴のひとつは血清免疫グロブリンEを生産しやすい体質です。この抗体はアレルギー反応で中心的役割を担っていて、先にもお話したように、これを介してアレルギー反応を起こす細胞が活性化されるのです。 (駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/) [朝鮮新報 2006.9.21] |