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〈みんなの健康Q&A〉 アレルギー(下)−治療と対策

 Q:アレルギー疾患でもっとも代表的なものは何ですか。

 A:気管支喘息、スギ花粉症も含めたアレルギー性鼻炎、それにアトピー性皮膚炎が3大疾患といえるでしょう。

 Q:俗にいう喘息がアレルギーによるものとは知りませんでした。

 A:はい。その基本病態はアレルギー性気道炎症であり、なかでも抗原抗体反応により遊離される化学伝達物質が病因である場合をアトピー型気管支喘息といいます。気道が狭くなるだけでなく過敏にもなって、発作性の咳が繰り返し起こり、「ぜーぜー」と吐く息が長くなり息苦しいという症状におそわれます。

 Q:子供の病気という印象が強いのですが、大人でも多いのですか。

 A:日本での気管支喘息の累積有病率は、小児6.4%、成人3.2%であり、近年国内外ともに増加傾向にあります。治療法の進歩により死亡数は減少しているようですが、喘息死のうち高齢者の比率が3分の2を占めており、その対策が今後の急務となっています。

 Q:日常生活でとくに気をつけなければならないことは何ですか。

 A:原因となるアレルゲンが特定されている患者では、まずそれにさらされないようにすることです。最も多いのは家のほこり、チリ、ダニですので、住宅環境の改善が重要です。寝具だけでなく、じゅうたん、家具、カーテンなどの調度類の掃除も大切です。猫、犬などの動物がアレルゲンの場合は、少なくとも寝室からはそれらを遠ざける必要があります。空気清浄を含めた掃除もやはり大切です。屋外においては何といっても花粉が問題になりますが、花粉の飛散時期には花粉症の治療を充分に行い、マスクなどによる防御もしなければなりません。

 Q:タバコは当然いけませんよね。

 A:言うまでもありません。能動、受動を問わず、喫煙は喘息を悪化させます。

 Q:風邪をひくとひどい喘息になる人がいます。

 A:感冒は喘息増悪の最大の原因です。ふだんからうがいや手洗いを励行しましょう。ストレス、お酒の飲みすぎ、過労、睡眠不足も喘息にはよくありません。

 Q:次に、アレルギー性鼻炎について教えてください。

 A:これは鼻粘膜でのアレルギー反応のため、発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉などに悩まされる疾患です。好発時期から、通年性と季節性いわゆる花粉症に大別されます。遺伝因子の関与が比較的大きいとされていて、家族歴からアトピー素因の存在が疑われることが少なくありません。また、日本におけるアレルギー性鼻炎の特徴は、スギ花粉症の占める割合が高いことです。

 Q:日常生活で注意すべきこと、また治療について教えてください。

 A:原則は気管支喘息と同じで、何よりも重要なのは抗原の回避です。花粉飛散情報の活用、マスクや眼鏡による花粉抗原との遮断、ダニ対策などが望まれます。最近はいろいろな対応商品が市販されていますね。

 Q:医師のもとで行う治療には、どのような方法がありますか。

 A:薬物療法と減感作療法が基本です。減感作療法というのは原因となる花粉の成分をわざと注射投与することによって、人為的にアレルギー成分に慣らしてしまおうという予防接種的な治療法です。現在、舌下減感作療法という注射によらない方法も行われるようになって、大いに期待されています。局所の外科的治療法として、最近はレーザーを用いた鼻粘膜焼却や高周波電極を用いた鼻粘膜の変性療法などが行われています。

 Q:アトピー性皮膚炎について教えてください。

 A:アトピー性皮膚炎は増悪と寛解を繰り返す掻痒のある湿疹を主病変とする疾患と定義されています。実は、免疫学的異常は必須のものではなく、実際には皮膚防御機構の障害をはじめとする非アレルギー性炎症の側面も認められています。そのほかにも、環境的要因、遺伝的背景などもからみあって生じるので、多因子性の疾患と考えられています。

 Q:純粋なアレルギー的機序からだけでは説明できないわけですね。

 A:とは言うものの、患者の多くはアトピー素因を持っています。まあ、似たような皮膚疾患がたくさんあるので、診断には専門医師の診察と検査が欠かせません。

 Q:日常生活指導はどのようにしていますか。

 A:かゆみを惹起しやすいような刺激物や皮疹を誘発しやすいような食事をとらないこと、掻破による二次感染を起こさないように皮膚を清潔にすること、ストレスなどの心因的要因を極力改善していくことなどを指導します。皮膚の清潔と保湿が重要であり、毎日の入浴やシャワーにより皮膚を清潔に保つようにします。保湿剤も皮膚の乾燥防止に有用なので、入浴後などに適宜塗布することをすすめています。

 Q:最近の治療の動向はどうなっていますか。

 A:治療の主役は副腎ステロイド外用薬とスキンケアであり、抗アレルギー薬は補助的に用いられているようです。近年、免疫抑制薬の外用薬も開発され、治療の選択に幅が広がっています。

 Q:アレルギー疾患はほかにも沢山あると思いますが、知っておかなければならないものを教えてください。

 A:まず、アレルギー性眼結膜炎がありますね。これは花粉症によるものと、家のほこりやダニが抗原となって生じる通年性のものがあります。

 Q:薬や食物のアレルギーはどうですか。

 A 適切に選択された医薬品の適正量が適切な方法で投与されたにもかかわらずまれに発生する有害な薬物反応のうち、アレルギー反応を主な機序として発生するものを薬物アレルギーといいます。薬物またはその代謝産物が抗原として作用するわけです。症状としては、けいれん、血圧低下、意識障害といった全身性のものから皮膚や肺といった特定臓器に限局したものまで多彩です。治療薬のみならず、検査で使う造影剤でもアレルギーは起こりえます。

 Q:食物アレルギーも同様ですね。

 A:はい、そうです。原因食物の上位には鶏卵、牛乳、小麦、そば、えびなどがあげられます。

 Q:皮膚に何かできてかゆいと、すぐじんましんという言葉を誰もが使うようですが、これもアレルギーの一種ですか。

 A:正式には、かゆみと共に突如として現れる限局性表在性の皮膚のむくみ、すなわち膨疹を主徴とする疾患をじんましんといいます。基本的にアレルギー反応によって引き起こされるのですが、特定の抗原が関与せず、明らかな誘因なく出没を繰りかえす患者も少なくありません。食物や薬剤も原因となりますが、疲労、ストレス、感染ななどにより誘発されたり悪化します。

 Q:ハチに刺されて死亡したというニュースを時々耳にします。

 A:ハチ刺傷もりっぱなアレルギー疾患です。ハチ毒が抗原となってアレルギー反応を起こすというもので、重症例では全身循環不全となり、日本では年間30〜40人が亡くなっています。

 (駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/)

[朝鮮新報 2006.9.28]