top_rogo.gif (16396 bytes)

「朝鮮名峰への旅」(22) 豊穣な秋の味覚生む白頭山 トゥルチュク酒やコケモモ、ジゴボウ

鯉明水

 10月にはいると白頭山では、早くも雪が降りはじめる。紅葉は山頂から山麗へと駆け足で下りはじめる。

 この季節、山ではキノコ類を最も楽しめるときである。アカマツは生えていないので、マツタケにはお目にかかれなかったが、かわりにジゴボウがとれた。落葉松の中に生えてくるジゴボウは、味噌汁に入れてよし、ナベにしてよし、ラーメンなどの具としても相性がよい。

 すり下ろしたダイコンと醤油があれば、トゥルチュク酒に最高のつまみとなる。万能に近いこのキノコは素人でも簡単に見分けがつくので、たくさん採ることができた。

 カサの表面は明るい栗色をしており、艶がある。何より特徴的なのは、カサの裏側が黄色のスポンジ状になっていることである。

 撮影の天気待ちをしているときなど、時間つぶしによく林に分け入って、キノコ採りに興じた。雨降りのときはとくにキノコの育ちがよい。

 順次、山を下って生えてくるので、長いことその味覚を楽しんだ。

将軍峰とうろこ雲

 秋の味覚として、もう一つ忘れられないのは、ブルーベリーによく似たクロマメの木の実である。

 白頭山ではトゥルチュクと呼び、その蒸留酒は透明な葡萄色をした魅惑的な酒で、秋の夜長を堪能するにはぴったりの酒である。

 クロマメの木は50〜60センチの低木で、雑木林の中に枝を広げており、紫の小さな丸い実をつける。一粒一粒丁寧に採取しないとつぶれて、手が紫色に染まってしまう。

 われわれはこのトゥルチュクをぐつぐつ煮込んでジャムにした。

 コケモモも赤く小さな実をいっぱいつけており、焼酎漬にして長いこと楽しむことができた。

天池湖畔 氷のオブジェ

 山頂付近は天気が変わるたびに冷え込みが厳しくなり、新雪が降るようになった。

 天池湖畔に降り立つと、そこは純白の雪が斜面をおおい、日陰では消えなくる。

 冷え込んだ朝、湖畔を歩いていると、烈風に湖水が岸辺に打ち寄せられ、枯れ草が凍りついている姿に出会った。鈍い光を受けて氷が垂れ下がり、草の実のようであった。

 高くなった空には秋の雲であるうろこ雲が形を変えてゆっくりと西から東へと動いていく。

 さらに冷え込んだ朝、鯉明水にいくと、岸から噴出した湧き水が凍りつき、ツララの赤ちゃんがたくさん生まれていた。(山岳カメラマン、岩橋崇至)

[朝鮮新報 2006.10.26]