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金剛山歌劇団倉敷公演 「すばらしい公演をありがとう」絶賛の声あふれ

「いっそうの親善を実感」

 金剛山歌劇団倉敷公演が10月26日、倉敷市民会館で行われた。「会場使用許可取り消し」騒動を巡り、内外から大きな関心を集めての開演であったが、1100人の観衆が見守るなか、24回目を迎えた公演は無事、成功を収めた。「感動の連続だった」「すばらしい公演をありがとう」と観客席からは惜しみない拍手がいつまでも鳴り響いていた。

「仮処分を確信」

開演前には長い行列ができた

 会場は180人の警官、50人の市職員による警備の中で行われた。「場違いなところに来たかしら」と不安がる来場者の声が聞こえる。厳重警備は一連の騒動による影響だ。

 倉敷市は「会場での混乱が予想され、市民の安全確保のため」会場使用許可を、10月13日付で取り消すと発表した。これは全国で初めてのこと。「手続き上、なんの落ち度もなかった」(公演実行委員会)。使用許可は9月15日付で出されていた。

 会見(16日)で市側は「街宣車による活動のほか、市民から抗議の電話や投書、電子メールもあった。市民の安全確保のため」と説明。「今後も市民の抗議電話や街宣活動があれば中止するのか」との問いに「総合的に事情を判断した」と歯切れの悪い答弁をくり返した。

民族性に満ちた公演は絶賛を浴びた

 取り消しの通知を受け実行委では、李建男委員長を中心に内部の動揺と混乱を即座に収拾(14日、臨時実行委員会)、県議会議員、市民団体らの協力も得て、市と倉敷文化振興財団に使用許可取り消しの撤回を申し入れるとともに、岡山地裁に使用許可取り消しの取り消しを求める仮処分を申し立てた(16日)。

 「不当な圧力に屈した前例になる」(李委員長)

 同時に「悪しき前例になることを好むような市ではない」と、実行委では、9月中旬から始まった一部の人間による中止への圧力から、問題の背景を把握、「仮処分を99%確信」していた。

密着した朝・日友好

 倉敷には、地域に密着した朝・日友好の積み重ねがあった。それが公演実現につながった。

 取り消し発表後から24日までに、市に376件の電話やメールが殺到、6件が市の決定を支持するもので、それ以外は決定に対する批判だった。公演当日までにはさらに80件の電話、メールが寄せられたという。草の根朝・日友好の積み重ねと歌劇団公演を心待ちにする人々の純粋な反応と言える。

 岡山地裁は24日、「安全確保」の市の主張を一蹴、公演の中止は「経済的損失を被るばかりか、憲法の表現の自由が侵害される」と実行委の主張を全面的に認め、実行委の申し立てに沿って市側に処分の執行停止を命じる決定を下した。

 会見(24日)で李委員長は「公演が一部の主張と脅しで中止されることは絶対にあってはならないと信じていた。一応安堵した」と話し、実行委側の奥津亘弁護士は「使用許可取り消しは司法判断の結果を見越したうえでの抗議団体に迎合したポーズでは」と指摘した。

「正義が固い壁砕いた」

 開演3時間30分前には、一番乗りで着物姿の来場者が到着、会場は普段通りの賑わいを見せていた。

 不安がる声もなかにはあったが、街宣活動に「なんのためにやっているのか」との反発が多く、「朝鮮総連ダイキライ」とのヒステリックな街宣活動にいたっては、市民の間から失笑さえ漏れた。

 騒動を巡り、実行委では「いっそうの親善が深まったと実感」すると同時に、「地域に密着した対外活動とチームワークの重要性を再確認」している。

 公演に先立ち開演に尽力した、日本と南北朝鮮との友好を進める会の井本丈夫会長(元岡山県議会議員)は「正義が固い、固い壁を砕いた」「これからもどんな状況であろうと民間レベルでの友好を強化していく」と語り、岡山県議会の三原誠介議員は「実行委員たちの公演を成功させようという強い気持ちを感じた」「故郷を頭に描きながら統一、国交正常化の思いが込められた歌と踊りのエネルギーで会場は埋め尽くされるだろう」と公演に対する期待を述べた。

 女性器楽重奏「西道アリラン」で幕を上げた公演は、観客からの拍手、手拍子の中、歌と踊りの「アリランメドレー」で幕を閉じた。

 岡山県議会の山田総一郎議員(公明党県幹事長)は「いつもながらフィナーレがとてもよかった。妨害があり大変だったが開演できて本当によかった」と感想を語った。

 金慶和指揮者は「熱い視線を背中で感じていた。一段と気持ちのこもった公演になった」としながら、「もっと多くの子どもたちに民族の芸術に触れてもらいたい」と話した。

 これに李委員長は「次回公演にはウリハッキョの生徒はもちろん、日本の子どもたちも招待して盛大にやりたい」と応えていた。

当日の街の様子

 公演当日の倉敷駅周辺は普段と変わらないようすだったが、市民会館への道に進むにつれ警官の姿が多く見られるようになった。そして観光地である美観地区周辺の道路が渋滞しだした。

 原因は右翼の街宣活動のせいだった。「一人一殺」「一殺多生」と書かれた街宣車が怒声を発し低速運転していた。

 ここ1カ月の街の様子を、地域のベテランタクシードライバー数人に聞いてみた。すると、別段変わりないとの返事が返ってきた。

 9月末から右翼の街宣活動が激化との一部報道があったが、ドライバーたちは「そうじゃったかの?」と首をかしげ「大きな迷惑じゃ」とこぼしていた。

 右翼による抗議行動からの「会場許可取り消し」の報があるが、それ以外のなんらかの不純な圧力があったことがうかがえると同時に、拡声器から流れる「倉敷市民の総意」が「総意」でないことがわかる。(尚)

[朝鮮新報 2006.10.30]