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〈人物で見る朝鮮科学史−20〉 新羅の科学文化(2)

「ダ・ヴィンチ・コード」の数字の妙

新羅の石窟庵仏像(本尊・像高3.26メートル)

 世界最古の天文台といわれる瞻星台は建てられて1300年以上にもなるが、これまで一度も補修工事を行ったことがない。この事実は、当時の高い建築技術を示すものであるが、瞻星台の建立には百済の技術者たちが大きな役割を果たしている。その技術伝統は高句麗にまで遡るが、その代表的事例である集安の将軍塚は四角形でピラミッドのように石を積んだことに特徴があった。

 その後、朝鮮の建築技術は六角形、八角形とその形を洗練させ、ついには瞻星台の建築上の特徴である円に辿りついたのである。四角よりも円の方が設計、施工においてより高度な技術が必要となるのは容易に想像されるが、その極致ともいえるのが慶州吐含山の石窟庵である。石窟の内部には高さ3.5メートルの釈迦如来像を安置し、その後方に十一面観音像、菩薩、羅漢像などを配し、新羅仏教美術の頂点に立つといわれている。中国やインドの石窟は岩盤を掘って造られたものであるが、慶州石窟庵は大小の花崗岩でドーム型の石窟を築造したあとに土で埋めたものである。したがって、より自由な設計が可能となるが、実際に正六角形と外接円との関係やさまざまな比例関係を取り入れている。

 はその平面図であるが、唐尺(約30センチ)を基準に12と5.2がその基本となっていることがわかる。この数字がいたるところに用いられ、建造物全体の堅固さと美しさを保障しているのである。

 特定の数字の組み合わせといえば、近年、話題となった小説「ダ・ヴィンチ・コード」を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。そこでは、前の2つの数字を足して得るフェボナッチ数列(1、1、2、3、5、8…)を暗号として用い、その数列を無限に続けて連続する2つの数を割って得る数字を重要に扱っていたからである。その数字1.612…は1に対しての黄金比と呼ばれ、人間の建造物はもちろん自然界のいたるところに現れる神秘の数なのである。また、白銀比とよばれる√=1.4142…があり、こちらは紙のサイズのA3、A4などに用いられるほか、東洋の建築物に多く見られる。石窟庵では本尊の高さとそこから天井までの長さの比、また本尊の頭までと肩までの比が、白銀比となっている。

 貴重な文化遺産である石窟庵であるが、現在、深刻な問題を抱えている。というのは、1915年に朝鮮総督府がそれを保護するという名目でコンクリートで全体を覆ってしまい、地下を流れる泉を迂回させた。その後、湿気が増え結露が生じ苔が生えるようになった。その泉は温度調節の役割を果たしていたのである。現在はガラスで遮断してエアコンで調節しているが、完全な解決策ではない。

 現代科学技術といえども、自然との調和を目指した伝統科学の英知には及ばぬことがあるという貴重な教訓であろう。(任正爀、朝鮮大学校理工学部教授、科協中央研究部長)

[朝鮮新報 2006.11.24]