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〈本の紹介〉 日本の中の外国人学校 月刊「イオ」編集部

硬直化した差別の壁 崩した

 子どもには教育を受ける権利がある。が、日本には正当な教育権を侵害されている多数の子どもたちがいる。ただ「外国人」という理由のために。

 本書は月刊「イオ」に連載された記事を収録したルポルタージュである。「記事は足で書くもの」といわれるが、編集部スタッフが全国を取材してつぶさに教育現場の実情を記録した、ほかに類例のない労作といえるだろう。

 現在、日本に住む外国人数は200万人を突破し、外国人学校数は200校に達する。周知の通り、朝鮮学校をはじめとする民族学校や国際学校は、各種学校の資格しか認められずさまざまな差別を受けてきた。

 さらに近年急増しているのがブラジル人学校(約90校)などの南米系学校である。これらは各種学校の認可さえ受けられないため極度の運営難にあえいでいる。

 10年前を思い出す。私は「国際化時代の民族教育」(東方出版)を出版した際、関西の外国人学校、国際学校を取材したのだが、外国人に対する日本の教育行政が諸外国に比べていかに時代錯誤的であるかを実感した。が同時に、かくも硬直化した差別制度はいずれ必ず崩れ去ることを確信した。

 一例を挙げれば、95年に阪神・淡路大震災が発生したとき、兵庫県内の全ての外国人学校はじん大な被害を被ったが、朝鮮学校が他校に呼びかけた結果、全国で初めて兵庫県外国人学校協議会が結成された。各校代表が団結して県知事に処遇改善を求めたところ、助成金の増額などの顕著な成果を得ることができたのだった。

 そしていま、外国人学校の権利を求める運動が急速に拡大している。昨秋、「多民族共生教育フォーラム」が神戸で開催されたのに続き、さる12日には愛知県で第2回フォーラムが開かれた。会場には多数の外国人学校関係者が参席し、共に運動を推進していくことを誓い合った。

 また今春には、静岡県でも外国人学校協議会が結成されたほか、南米系学校がついに各種学校の認可を獲得するなど、かつてなかった成果が実現されてきた。まさにいまや、絶壁のようにそびえ立っていた差別制度が音を立てて崩壊しつつあるのである。

 私は本書をすべての日本人や外国人、とりわけ在日同胞に読んでいただきたいと思う。在日同胞には最も過酷な弾圧をはねのけて民族教育体系を築き上げてきた実績がある。朝鮮学校が培ってきた経験をほかの外国人学校と分かち合えば、外国人学校全体の地位向上に大きく貢献できるに違いない。在日同胞がほかの外国人と手を携えて共通の目的に向かっていけば、必ずや朝鮮学校自身の権利獲得にもつながると信じる。

 民族教育問題をより広い視野から見つめ直し、新たな展望を切り開くために、本書はかけがえのない示唆を与えてくれるだろう。(明石書店、TEL 03・5818・1171)(高賛侑、ジャーナリスト)

[朝鮮新報 2006.11.28]