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〈みんなの健康Q&A〉 心房細動(下)−治療法と対策

 Q:心房細動の治療法について教えてください。

 A:高血圧、甲状腺機能亢進症、心臓、肺疾患など原因となる疾患がある場合は、それらの治療を優先して行います。

 心房細動発作を止めたり予防する薬物にはたくさんの種類があります。これら抗不整脈薬は、その人の年齢や日常生活能力、自覚症状、基礎疾患の有無、心臓機能の程度などを考慮して選択処方されます。急を要する時にはいわゆる電気ショックで正常の調律に戻すという方法もあります。

 Q:内服を始めた場合、いつまで続けなければなりませんか。

 A:それは大変難しい問題です。とりあえず正常調律維持となっても、再発の可能性が高いと判断された例では、副作用に注意しつつ抗不整脈薬の投与が行われるのが普通です。薬物の中止に関しては、再発の可能性、薬物の副作用、無症候性つまり症状のない心房細動の存在などを十分検討したうえで、患者ごとに考慮して決定します。

 Q:治療でいったん正常化しても、しばらくしてまたなってしまうこともあるそうですが。

不整脈治療の主役として著名な薬草 ジギタリス

 A:高齢者では発作をくり返すうちに永続性になってしまう方が多くなります。

 その場合には心不全や脳梗塞といった合併症の予防に治療の主眼をおきます。一般的には、心房細動のままだとどうしても脈が速くなりがちで身体的に不都合が生じやすいので、まず心拍数が多くなりすぎないように生活指導や薬物治療を行います。

 心拍数が正常に保たれていても自覚症状が強く残る場合、心拍数のコントロールが困難な場合、血行動態が不安定で心不全や低血圧の危険がある場合には、薬物を変更してみるか、カテーテルアブレーションによる治療を考慮します。カテーテルアブレーションというのは、足の付け根などの血管を通して心臓に入れた電線の先から高周波を流して、異常な電気の発生源や回路を焼ききって不整脈を発生させなくする治療法です。

 Q:外科的手術による治療もあるのですか。

 A:近年注目されている治療法です。外科治療の適応基準はいちおう設けられていますが、心臓手術ですので症例の選択にはとくに慎重を要します。なお、植え込み型の心房除細動器というのも海外ではすでに臨床応用されているそうです。

 Q:心房細動で逆に心拍が遅くなりすぎるということはないのですか。

 A:実は、心房細動では頻脈の一方で極端に心拍が遅くなる、つまり徐脈になることがあります。脈が何秒も飛んで、めまいや循環不全を起こす例には心臓ペースメーカ植え込みが必要になります。

 Q:心房細動が原因の心原性脳梗塞の予防については、どのようにされてますか。

 A:血液を固まりにくくする、俗に言う「血をさらさらにしてくれる」薬物を服用してもらいます。こういった薬物はかってに中止されても困りますが、逆に過剰に服用すると出血性の合併症が引き起こされ大変なことになるので、きちんと服薬規定を守れる人でないと処方できません。大きく分けて2種類ありますが、年齢、基礎疾患、一過性脳虚血発作や脳梗塞の既往などを考慮して、厳重な監督下に投与されます。このうち血液を凝固しにくくするワルファリン剤を服用する場合には、定期的に血液検査を受けて、適切な投与量を決めてもらわなければなりません。また、ビタミンKを多く含む食品、例えば納豆、レモンなどの柑橘類はこの薬の効果を阻害するのでひかえめにしなければなりません。

 Q:日常生活で気をつけなければならないことはどんなことですか。

 A:心臓に悪影響をもたらす高血圧などの生活習慣病を予防することがとても大切です。また、心房細動を悪化させる要因としては精神的、肉体的ストレス、不眠、極度の精神不安、緊張などがあります。日常生活の心がけとして、精神的および肉体的ストレスを取り除き、睡眠不足、疲労の蓄積、過度の飲酒、カフェインのとりすぎを避けることが必要です。喫煙も不整脈にはよくありません。

 心房細動は医療の現場ではしばしば遭遇する疾患であり、決して怖いものではありません。きちんと診断を受けて、合併症の予防、日常生活上の注意についてしっかり理解することが大事です。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2006.11.30]