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千葉でハングル書道展覧会 「八仙女が次世代に託す夢」

平均年齢72歳の「初舞台」 筆に込められた1、2世の思い

 既報のように、ハングルの書道展覧会「八仙女たちの初舞台」が11月24〜26の3日間、船橋市民ギャラリー(千葉都船橋市)で行われ、約400人が訪れた。出品者は、女性同盟千葉県本部管下の千葉ハングル書道教室に所属する同胞女性ら8人。同教室初となる展覧会のために1年がかりで準備をした。会場には、1444年に世宗大王と集賢殿の学者らが集まって作った「訓民正音」序文の大屏風(8人合作)をはじめ、詩調や格言、など40余点の力作が披露された。

「たかが字、されど字」

 8年前、千葉に同胞文化サークルの一つとして、書道サークルが誕生した。手本は主に、漢字や仮名などだった。

 書道のおもしろさに少しずつ目覚めはじめたメンバーらは「ハングルを習いたい」という強い思いに駆られた。しかし、当時ハングルを教えることのできる講師は少なく、メンバーは必死になって探した。そうして、高麗書芸研究会常任理事(現在)の李裕和さんを講師に迎え同教室が発足した。それから今日まで、メンバーらは専門家の手ほどきを受けながら月に2回、ハングル書芸を続けてきた。

 詩調や格言、歌などを練習の題材に用い、時には生活の節々で感じた思いを文章にし、筆でしたためていった。

 同教室責任者の李槿愛さん(71)は、「実際、『お母さん』って書くよりも『オモニ』と書いたとき、なんとも言えない心地よさがあった」と話す。

 「たかが字、されど字」(李さん)。メンバーらは習えば習うほどにその奥深さを知り、今まで知りえなかった民族の歴史や伝統、文化を学ぶ喜びを感じた。

人生をともにするもの

 「八仙女」たちの平均年齢は72歳。

 松華の号を持つ劉日善さん(72)は、教室発足時から通い、今では筆を執ることが生活の一部となっている。子どもは祖国に帰国し、唯一の家族だった夫も数年前に他界した。そのうえ病気を患い、現在思うように出歩くことができない。

 劉さんにとって書芸は、「人生の喜怒哀楽をともにするもの」だという。教室以外に家でも筆を執る。

 「私のテーマは『ハナ(ひとつ)』。肉体的に難しくても、筆を通して平和を願い統一を訴えていきたい」と一筆一筆に込める真剣な思いを語る。今回の展覧会には合同作品を含め、6点出品した。そのうちの2点に、力強く「ハナ」と書いた。

 「生前、いつも隣で応援してくれた夫もきっと喜んでくれていると思う」と、劉さんは話す。

「遅咲きの『作家』誕生」

 今展示会で「八仙女」たちは、「クム(夢)」という文字を多く用いた。50代から80代までの1世、2世が見てきたもの、感じてきたものを、これからの未来を担っていく若者たちに伝えたかったからだ。そしてハングルのすばらしさを伝え、誇りに思ってほしいとの思いから今月4日には、8人が力を合わせて仕上げた「訓民正音」序文の大屏風を千葉朝鮮初中級学校に寄贈した。

 8年来彼女らを見守ってきた李永俊さん(78)は、「ハルモニたちは青春時代に戻ったようだ。とても上手で驚いた」と感想を述べた。

 また、船橋市に住む50代の日本人女性は、「言葉の意味はわからないけれど、墨の使い方、線の引き方、ハングル自体の形が心に訴えるものがあった」と話した。

 現在、同教室の講師を務める呉旻俊さんは、「彼女たちの熱意と努力はどんな書家にも負けない。8人の遅咲きの『作家』が誕生した」と称えた。(呉陽希記者)

書道教室の同胞たちが出品した作品

[朝鮮新報 2006.12.9]