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〈本の紹介〉 朝鮮民主主義人民共和国主要法令集

国際的な法の動きに敏感な朝鮮

 2004年10月29日、南朝鮮の朝鮮日報は、シンガポールの新聞の記事を引用し、同国のローファームが平壌市内に外国企業として初めて100%保有のローファーム支社を設立したと発表した(そのほか現在イギリスのローファームも平壌に支店を開設しているようである)。

 一方、金剛山観光事業、開城工業団地事業など北南の交流事業は核問題以降も現在まで中断されることなく続いている。このような事業が円滑に行われるためにはさまざまなものが必要であるが、そのなかでもとくに必要なのは一定のルールが確立されることであるように思われる。このため国家あるいは企業は、自己に有利なルールを定立するためにあらゆる手段でかけひきを行う。

 このような情報に接するたび、筆者は朝鮮の法制度はいかなるものなのか、またその水準はどうなのかに関心をいだくようになった。と同時に朝鮮と日本の関係が緊張関係にあり、情報的には「鎖国」的という前提において朝鮮の法律自体がもつ可能性、すなわち仮説ではあるが実は朝鮮の法情報は外国に開かれており、日本以外の各国がこれについての調査研究が相当進んでいるのではないかということである(日本との貿易関係は現在事実上の断絶状態にあるが、中国、南朝鮮、タイ、シンガポールなどとの貿易が依然として活発に行われていることをみると、仮説には十分な説得力があるかもしれない)。もしこのような仮説が事実であるとすれば、在日同胞はこれから北南の統一と東アジアの平和と安定が実現された場合、日本とともに出遅れる可能性もある。

 このような問題意識の中で2004年6月に朝鮮で法典が出版された。その後、法の改正、新たな立法に従い2005年12月までの法典増補版が出ている。

 筆者は、朝鮮大学校朝鮮法研究会のメンバーとして1年半にわたる法典翻訳作業に携わってきた。その過程において思うことは、朝鮮は国際的な法の動きについて敏感に反応し、自国の法制として積極的に取り入れているということである。筆者の専攻は民法であるので民法に関していうと、国際的な取引に関し新たなルールが定立され、多くの国で民法の改正がうたわれている現状において、その立法例を参照していると思われる条文が各所に見られる。

 ここまでは専門的な話になってしまったが、一般の方々にも興味をもってみていただける内容になっていると思う。たとえば在日朝鮮人の法律問題を解決するためには朝鮮の法の参照が必要であるが、結婚、離婚、相続などにかかわる条文も収録されている(在日朝鮮人の法律問題については在日朝鮮人人権協会編「在日コリアン暮らしの法律Q&A」参照)。

 また、近時日本でも知的財産に関する関心、また情報化社会における問題などが話題となっているなかで、朝鮮の「著作権法」「コンピューターソフトウェア保護法」などの法律も収録した。

 最後になるが、今回の法典翻訳にあたり若い弁護士、司法書士、研究者、協会スタッフなどが主として参加した。まだまだ未熟で不完全な部分も多くあるが、ご批判などがあれば真しに耳を傾け、今回収録できなかった法典などにも反映していきたい。(日本加除出版株式会社、在日本朝鮮人人権協会、朝鮮大学校朝鮮法研究会編、訳、TEL 03・3953・5642)(崔永昊、朝鮮大学校経営学部助手)

[朝鮮新報 2006.12.12]