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〈本の紹介〉 「北朝鮮核実験」に続くもの

 「本書は『核』をめぐる最新の世界の現状をつとめて客観的にわかりやすく紹介し、今後も『核と共存せざるをえない人類社会』のあり方を模索した一般市民向けの啓発の書である」と著者がまえがきで述べているとおり、ともすれば難解になりがちな核開発、拡散問題を、非常にわかりやすく解説している。

 第1章では不平等条約といわれる核拡散防止条約(NPT)のもとでの世界の核開発、核保有の現状について、第2章では日本の核武装論の現実について分析した。第3章では朝鮮、第4章ではイランと、今最もホットな2カ国の核問題を扱っている。

 さらに、事実上の核保有国でNPTに加盟していないインド、パキスタン、イスラエル、核保有国である中ロ英仏米の5カ国の現状についても解説している。本書を読めば、世界の核問題の大体の仕組みがわかるようになっている。

 そして、「原発がなくならないかぎり、核もなくならない」とのリアリスティックな立場から核軍縮に向けた課題を提起している。その詳細については実際に本書を読んでほしい。

 朝鮮の核問題を扱った第3章では、93年の第一次核疑惑にさかのぼって、朝米のやりとりを中心に朝鮮が核実験をするに至った経緯が描かれる。この章の終わりで著者は、「北朝鮮が核実験を行ったあとでは朝鮮半島非核化と米朝国交正常化が実現しないかぎり、日朝国交正常化だけが切り離されて実現する見込みはない。言いかえれば、核問題が解決すれば米朝関係は進展する。北朝鮮は、米国だけを視野に入れて核カードを切っている」と書いたが、6者会談再開をめぐる朝鮮の動きを見ると、示唆するところが少なくない。(吉田康彦・著)(聖)

 定価=1200円+税、発行=第三書館(TEL 03・3208・6668、FAX 03・3208・6623)

[朝鮮新報 2006.12.15]