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〈本の紹介〉 ハンセン病とともに

「差別心と闘うのは現代人の責任」

 ハンセン病患者への残酷極まりない「隔離政策」がなぜ、日本国家によって延々と続けられてきたのか。

 岡部さんは14歳のとき結核にかかって以来、通学をやめ、闘病生活に入ったが、結核よりも苦しい立場にあえぎ、国と社会に人間性を踏み躙られてきたハンセン病患者の立場に思いを寄せてきた。故郷、血縁と強制的に隔絶されてきた悲惨な現実に向き合って岡部さんは患者たちの側に立って、励まし、闘ってきたのだ。

 本書は生涯、差別や理不尽と闘い続けた筆者の心の奥底からの願いを込めた一冊である。「自分の心の中に、つい大きく動きがちになる差別心とたたかうことは、現代人の責任だろう」と説く。同じ人間同士の、不当な優越と卑屈。その延長線上にある朝鮮、中国、東南アジアの人々への思い上がった民族的差別心。敗戦後も日本社会ではそれがしぶとく生き残ってきたと強調する。こまやかな心遣いとやさしい口調が心に残る一冊。(岡部伊都子著、藤原書店)

[朝鮮新報 2006.12.21]