〈第84回全国高校サッカー選手権大会〉 大阪朝高堂々ベスト8 野洲高校にPK戦で惜敗、同胞応援団「来年こそ『国立』へ」 |
「みんな胸を張れ!」 第84回全国高校サッカー選手権、大阪朝高と野洲高校(滋賀県代表)の準々決勝が5日、市原臨海競技場で行われた。国立競技場で試合が行われるベスト4入りを賭けた試合は、前後半で両者譲らず1−1でPK戦へ。大阪朝高は4人中、3人がゴールをはずし、1−3で敗れた。しかし、堂々のベスト8入りに約4000人の同胞応援団は、泣き崩れる選手らに向かって「よくやったぞ!」「来年こそ『国立』や!」とひときわ大きな声援と拍手を送っていた。「ベスト4に進出したかったが、すべての力は出し切ったので悔いはない。朝高サッカーの実力を存分に知らしめた」と康敏植監督。次なる目標はもちろんベスト4の「国立」だ。【本社取材班=文−金明c、李東浩記者、写真−文光善、姜鐘錫、盧琴順記者】
「国立」へあと1勝と迫った。「ここまで来たなら否が応でもいってほしい」−そんな同胞らの願いはピッチの選手らへの大声援となってしっかりと届けられていた。 試合は一進一退の好ゲームとなった。 強靱なフィジカルと豊富な運動量を全面に押し出す「パワーサッカー」が特徴の朝高。対する野洲は、ダイレクトプレーを織り交ぜたショートパスを交換する「クリエイティブサッカー」。両者のチームカラーは対極にあり、関係者の戦前予想は全くの五分だった。 序盤は両者とも相手の出方を探る展開が続き、互いに決定機を演出できないまま前半の中盤を迎える。朝高の素早いプレス、攻守の切り替えの早さが次第に相手のミスを誘いはじめ、徐々に野洲を圧倒していった。後半に入ってもその流れを維持し、15分、DF金裕士選手の右サイドの突破からの折り返しにFW趙栄志選手が右足で合わせて先制点を奪った。
しかし「先制後、スキができたのかもしれない。もう1回チームが締まっていたら」と金裕士選手が振り返るように、後半20分過ぎから反撃を許し、32分に同点弾を許した。1−1で試合は終わり、勝負はPK戦へ持ち込まれた。 PK戦。大阪朝高は2人目の朴治宣選手は決めたものの、1人目はキーパーに阻まれ、3人目のシュートは外に大きくはずれ、瀬戸際に追いつめられた。そして4人目、DF沈賢治選手のシュートが惜しくもバーを叩き、大阪朝高は1−3のスコアで敗れた。 喜びを爆発させる野洲イレブンとは対照的に、ピッチにうなだれ泣き崩れる大阪朝高イレブン。悔しさで顔を上げることができない選手らを監督、コーチ、ベンチにいた選手らが抱え上げ「よくやった」と肩をたたきねぎらった。 うなだれながらも安泰成主将が監督、コーチらの下へ駆け寄り握手し抱き合った。「コマッスムニダ…」。涙で声がつまり、後が続かない。
野洲高校の山本佳司監督は「闘争心がある。最後まであきらめないひたむきな気持ちが伝わってきた。学ぶべき点だ。また、フィジカルが強く非常に良いチーム。さすが歴史的1勝から国見を倒し、勝ち上がってきただけある」と大阪朝高の印象を語った。 「今日も勝つ気持ちでいったがそう簡単にいかなった。PKで負けたが一丸となってがんばった。ウリハッキョで出会ったみんなと一緒にサッカーをしてここまで来られたことが本当にうれしい。後はすべてを2年生らに託したい」−安主将はあふれ出る涙を拭いながら語った。 そして、次の雪辱を誓う2年の趙栄志選手。「くやしいし、満足していない。『国立』まであと1歩だったのに…この気持ちは忘れない。『国立』という明確な目標ができた。次はエースストライカーになって帰ってきたい」。 「内容では負けていない」 試合の会場は、いつになく熱気に包まれていた。同胞たちは、昨年2月9日のW杯アジア最終予選の朝・日戦のような熱狂ぶりを見せていた。無理もない。大阪代表として2度目の出場の大阪朝高が、優勝候補・国見高校を破って準々決勝に進出したからだ。 「あの国見を破ってベスト8に進出したんですから。在日の同胞の方たちもさぞ喜んでいることでしょう」と当日朝のテレビ番組である司会者が語ったように、日本のメディアはむろん南朝鮮でも大々的に報じられ、数多くのメディアが取材に訪れた。 大阪勢のベスト8入りは21年ぶり。ベスト4となると、28年前、第56回大会の北陽高校までさかのぼる。全国大会に出られず悔しい思いをした先輩たち。ベスト4の快挙を後輩たちが果たしてくれることを信じてやまなかったが、壁は厚かった。 野洲高校との試合後、日本のある記者が康監督にこう質問した。 「選手権への参加が認められた1996年からちょうど10年目ですが、結果、『国立』の地を踏むにはまだ歳月が早かったということでしょうか?」 これに対し康監督は、きっぱりこう言い切った。「早かったという気はまったくない。もっとよくばって『国立』を目指したい」と。そして続けた。「現に結果は引き分けだったし、内容でも負けてはいないと思う。でも勝負は勝負。敗れたのはまだ経験が足りなかったということです」。 ロッカールームに置かれたホワイトボードには「우리가 국립에 간다(われわれが国立に行くんだ)」の文字が大きく書かれてあった。その下には「NEW LEGEND(新たな伝説)」の文字。準々決勝のミーティングの際に監督が書いたものだ。選手たちはこの文字の先に何を見ていたのだろうか。 「新たな歴史、伝統を築き上げ伝説を創ろう」−高校生なら誰もが憧れる「国立」の地へと迫った大阪朝高サッカー部。夢舞台の扉を開く日はもうそこまで来ている。 同胞ら、大阪朝高サッカー部を歓送 6日午後、JR東京駅で総連中央の南昇祐副議長、金尚一文化局長、朝鮮大学校、東京朝鮮中高級学校、体連関係者らが帰路につく大阪朝高サッカー部を歓送した。 南副議長は、「同胞だけでなく、日本の人たちにも大きな感動を与え名をとどろかせた。ウリ同胞たちの誇りだ」と激励の言葉を送り、康監督と安主将に花束が手渡された。 康監督は「同胞らの期待に応え、これからも一生懸命がんばりたい」と決意を述べた。 [朝鮮新報 2006.1.10] |