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WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ 洪昌守選手、初防衛に成功

同胞応援団、統一旗振り応援 「引退してほしくない」

判定勝ちで初防衛に成功、ベルトを掲げる洪昌守選手

 WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチが2月27日、大阪市中央体育館で行われ、王者の洪昌守選手(31、金沢)が挑戦者・同級1位のホセ・ナバーロ選手(24、米国)を3−0の判定で下し初防衛に成功した。世界戦11勝は日本所属ジムとしては歴代3位。注目された今後の進退については「今日でスーパーフライ級は卒業します」と王座返上を宣言した。また、今後の去就について洪選手は、28日の金沢ジムでの会見で「9割は引退する方向だが1、2カ月はいろいろな人と話し合ってゆっくり考えて決めたい」と語った。

 「スーパーフライ級王者の最後の試合」−以前から噂されていたラストファイトということで、今回の1戦はいつになく注目を集めた。試合は得意のアウトボクシングで相手を追いやった洪選手の快勝だった。

 序盤から軽いフットワークでナバーロを翻ろう。左ジャブで相手との距離を保ちながら右ストレートを的確にヒットさせ、主導権を握った。

 1Rにはナバーロの右目上を出血させ、2R以降は打っては下がる「洪昌守ワールド」に引き込んだ。「打ってクリンチの連続で試合内容はおもしろくなかったかもしれないけど、今の自分にはあれしかなかった」と語る。しかし、そのボクシングスタイルで世界戦を勝ち続けてきたのも事実。完成されたアウトボクシングにナバーロも力を発揮できずじまい。12Rには離れ際の右でぐらつかせ勝利を確実なものとした。

洪選手の右がナバーロ選手の顔面をとらえる

 2月26日の調印式で「すごく体のキレはいい。試合がとても楽しみだ」と笑顔で語っていたが、試合直後、本人が明らかにしたところによれば、約2週間前、大阪市内で交通事故に遭い、その後、約2週間はまったく練習ができなかったという。減量にも苦しみリミットに達したのは試合前日の午前3時だった。

 それらの苦労を乗り越えての勝利は格別なものだった。リング上で、スーパーフライ級の王座返上を明らかにし、「どういう道を歩くかはまだ決まっていないが、ボクシングで培った根性を生かしてこれからの人生をがんばりたい」と観客らに向かって手を振り、笑顔で語っていた。

 また、今回も、会場の一角に陣取った同胞応援団が、「イギョライギョラ、ホンチャンス」の大声援を送った。手に「統一旗」を持ち関西の同胞らはもちろんのこと、他都府県からも約500人の同胞らが駆けつけた。

記者会見する洪選手(中央)と金沢ジムの金沢英雄会長(左端)

 98年に朝鮮の国家代表に選ばれ、朝鮮大学校・ボクシング部に所属していた白永鉄さん(25、府商工会職員)は、「相手も強かったが、チャンピオンは接近戦での距離感をつかむのがうまい。力をもらった。これからもがんばってほしい」と熱く語った。

 また、試合会場が地元の鄭健一さん(26、会社員)は、「年齢的にも厳しいと思うのにがんばってきた。応援のやりがいがある」と語った。

 生野区から駆けつけた安柄浩さん(22)は、「がむしゃらに相手に向かっていく姿を見て感動した。半年間だけだが大阪朝高ボクシング部に所属していたとき、チャンピオンに左ジャブを教わったことを今でも覚えている。正直引退してほしくない」と興奮気味に語っていた。(金明c、李東浩記者)

記者会見での洪昌守選手の話:気持ちとしては引退を考えているが、まだ自分の中でしっかりとした結論は出ていない。今のところは2、3カ月休んで会長やいろいろな人と話し合ってゆっくり決めたい。ボクシングを続けるならバンタム級に階級を上げて長谷川穂積選手(25=千里馬神戸)とのタイトルマッチもありえるし、引退なら自分の可能性をどんどん探していろいろなことに挑戦したいと思っている。

[朝鮮新報 2006.3.2]