第4回全日本女子アマチュアボクシング大会 大阪朝高女子ボクシング部 3選手が快挙 |
崔静香、高梨香選手が金(演技)、金聖姫選手が銀(実戦) 第4回全日本女子アマチュアボクシング大会(主催=社団法人日本アマチュアボクシング連盟)が10〜12の3日間、兵庫県加古川市立総合体育館で行われ、大阪朝高ボクシング部の金聖姫(高3、写真中央)、崔静香(高2、写真右)、高梨香(高1、写真左)選手らが出場した。実戦競技フェザー級で金選手が準優勝、演技競技に出場した崔(軽中量級)、高(軽量級)両選手らはそれぞれ優勝し、初タイトルを手にした。 12日、決勝シード権を掲げてリングに上がった金選手は、「必ず優勝する」と過去2連敗している水野知里選手と対戦したが、2R1分45秒RSCで準優勝に甘んじた。 一方、崔、高の両選手は、11、12の両日に分け、演技競技で5つの種目(フットワーク、打撃防御、シャドーボクシング、ロープ、サンドバッグ)を見事こなし優勝した。 大阪朝高ボクシング部 「男女ともに強豪校」
「ストップ」。第4回全日本女子アマチュアボクシング大会のフェザー級決勝の2R1分45秒で、試合が止まった。張り詰めた緊張が一気に緩んだのか、金聖姫選手(高3)の目から大粒の涙があふれた。RSC負け。高校最後の試合が終わった。 前日に後輩2人が演技の部で優勝し、「プレッシャーを感じていた」。試合前は、「最後の試合。優勝したい」と意気込んだが、後輩の2人には素直に打ち明けていた。 「(最後の試合だから)楽しみたいのに緊張するし、イライラする」 「勝った」と金選手は思った。2R。相手の右ストレートに首がよろけ、ガツガツした攻撃を見てしまい、コーナーに追い込まれる。右、左からのパンチをもらい、この回2度目のダウンでRSC負けした。「最後の大会で監督に金メダルをプレゼントしたかったのに…」。涙が止まらなかった。 梁学哲監督(47)は、「負けたものの、今までで一番良い試合内容だった。技術、速度での差はなく、経験、力の差が出た」と語る。 金選手は4月から看護専門学校に通い、共和病院に勤務する。もうボクシングは辞めようと思っていた。しかし試合後、「今日ここで終わったら、一生後悔する。やめられへん」。そして「OGとしてこれからも試合に出て、活躍することが監督はじめ支えてくれた人たちへの恩返しになる」と涙をぬぐった。 「人生観変えた」 金選手は、朝鮮新報に掲載された大阪朝高ボクシング部初の女子部員の紹介記事(02年7月22日付日本語版)を読んで、ボクシングを始めようと決意した。 朝高入学後、高1の5月に正式加盟、自身を含め女子部員は3人だった。初めは打ち合いに圧倒され「怖い」印象を持ったが、3年間やり通す決意を固める。ただひたすら鏡の前で基礎練習を地道に続けた。結果、第2回大会中量級演技競技で優勝。 高2の8月からは、かねてからの希望だった実戦の練習を始める。「新しいことだらけで充実していた」。 練習相手はもちろん同部の男子選手。実力差を感じ自信がなくなりもした。不安な気持ちをかき消し、挑んだ第3回大会で女子朝高生として初めて実戦競技に出場し、6人中3位の成績を収めた。先月の第2回近畿選抜大会で準優勝するなど実力を着実につけた。これまでの戦績は8戦3勝(1RSC)5敗だ。 金選手にとってボクシングとは、「人生観を変えてくれたもの」。 後輩には、「自分の力、部員を信じ、支えあいながら取り組んでほしい」と助言する。 アボジ金大植さん(47)は、「階級を上下しないで3年間がんばった。根性もついた。家で『やめたい』と言ったことは一度もない。なによりも一生の『仲間』ができたようだ。それに広い視野が備わってずいぶん変わった。親としてうれしい」と語った。 演技初優勝の崔静香、高梨香選手 「歴史刻みたい」
今大会、演技部門で崔静香(高2)、高梨香(高1)両選手は共に初タイトルを手にした。演技部門での優勝は、基礎技術の高さと闘志、パワー、速度、テクニックのすべてが要求される部門だ。 軽中量級で優勝した崔選手は負けず嫌いでさっぱりした性格。親の勧めで高1から朝高に編入した。見学後、不安はあったが、監督の一声で入部。「ボクシングは性にあっている。普段から納得いくまで練習する」。 第3回大会で6位だった崔選手は、優勝が決まった瞬間、「うれしいけど驚いた。徐々にテンションが上がった」と興奮を隠し切れないようすだ。鏡を見ながら正確な打撃を心がけ、シャドーの練習に力を入れてきた。今大会で体力面強化という課題ができたという。そんな崔選手の憧れは先輩、金聖姫選手。「身近でいつも『チャルハジャ』『なんでも言って』と声をかけてくれた」。優勝が自信につながったのか、「早く実戦でやりたい」とほほえんだ。 高選手は軽量級で見事優勝。直後、「信じられない。実感がわかなかった」。シャドーでは100%の実力を発揮できたという。幼い頃から同部OB会会長でもあるアボジの影響で洪昌守選手の試合などを観て育った。 マネージャーとして入ろうと同部の見学に訪れた際、「選手としてやりたい」と即決。元々「勉強より運動」の性格。「一つのことに夢中になるのはボクシングが初めて。家ではオモニが減量のためのメニューを考えてくれる。かたや元ボクサーのアボジは、いろいろとアドバイスしてくれる」。時々、肉体的にも精神的にも疲れがピークに達するという。「そんなときは何も考えずに遠くを見てボーっとするのが一番」。 「今は演技の部でやりたい。2年の静香先輩に追いつきたい」と意気込む。練習と勉強の両立が今後の課題だという高選手。「優勝は誇りです。女子ボクシング普及のため結果を残し、歴史に残るようなことをしたい」と目を輝かせた。 梁監督は、「聖姫選手が後輩をよく引っ張り、高校ボクシング界で男女共に『強豪校』として高く評価された。ひとえに民族教育の成果を示せた」と振り返った。(李東浩記者) [朝鮮新報 2006.3.16] |