〈Jへの挑戦〜在日サッカー選手の心〜B〉 J2徳島ヴォルティス DF 金位漫選手 |
「在日」として負けない気持ち前面に 「Jリーグのどの在日選手よりも活躍したい。ほかの日本人選手や外国人選手に気持ちの面で負けたくない」−金位漫選手(27)はそういってほほ笑んだ。在日Jリーガーとして内に秘めたプライドは人一倍高いかもしれない。 慣れ親しんだJ1のジェフ千葉を離れ、昨年、四国にあるJ2の徳島ヴォルティスへ移籍した。昨シーズンはMFとして27試合2得点の活躍を見せた。今シーズンは、DFの右サイドバックで出場し1得点をたたき出している。タイミングよい攻撃参加と果敢なサイド突破を得意とする。今ではチームからの信頼も厚い。しかしジェフ時代は苦悩の日々を送った。02年からジェフに所属した3年間、一度も試合に出場できなかった。戦力外通告でチームを離れ、オファーがあったのが徳島ヴォルティスだった。
「(千葉時代は)つねにJ1チームのレベルの高い競争にもまれていたので、試合に出られなくても腐ることはなかった。ヴォルティスは環境もいいし、とにかく試合に出たい気持ちが強かった」 移籍後、Jリーグデビューはすぐに訪れた。水戸ホーリーホック戦(05年J2第3節)。MFの右ウイングバックとしてスタメン出場する。「緊張はしなかったけど、やっとここに立てたんだってすごくうれしかった。とにかくアピールしてやるって気持ちで試合に臨んだ」。 記念すべき初ゴールは第12節の湘南ベルマーレ戦。「ごっつぁんゴールでした(笑)。でもうれしかった。ちょうどアボジ、オモニが見にきていていいプレゼントになった」とふり返る。公式戦で観客が入っている中での緊張感、つねに試合に出ることで成長の度合いが全く違ったと語る。 金選手の持ち味、それは走り負けないスタミナだ。「ほかの誰にも走り負けない自信がある。『在日』ってやぱり負けないという強い気持ちが大切」。元来、ポジションはFW、MF。今はその攻撃センスをチームに生かしオーバーラップを得意とするスタイルを確立した。
東京第4、東京朝高では攻撃の要の選手だった。周囲の期待も大きく、将来を嘱望された。朝高3年時の97年、全国高校サッカー選手権大会・都予選決勝で帝京と戦った。そして駒沢大学サッカー部へ。そこでの4年間で一番学んだことが多かったとふり返る。「在日社会の狭い枠でサッカーやってきて天狗になっていた。大学にはうまいやつがたくさんいたし、今のままじゃ試合にも出られない、もっと努力しなきゃって」。自分のプライドをかなぐり捨て、いろんな人のいい部分を吸収し何でも受け入れた。謙虚さをつねに忘れなかった。そして大学2年からはコンスタントに試合に出場、4年時には主力選手として夏の総理大臣杯「日本大学サッカートーナメント」で準優勝、冬の全日本大学サッカー選手権大会で優勝している。「自分が下手だからがんばらなくちゃって必死でしたよ。この時期です、プロになりたいと強く思ったのは」。 大学4年時、ジェフ千葉から声がかかり練習に2回参加してJ入りを手中に収めた。千葉での苦悩の3年を乗り越え、今や徳島ヴォルティスでは欠かせない選手へと成長を遂げている。 「やっとプロになれたかなって感じで、まだ胸張ってJリーガーだとは言えない。スタメンをとっているからって慢心していない。つねに上を目指して、J1でのプレーを目標にしたい」 そしてもう一つの目標は朝鮮代表だ。「初級部から知っている安英学先輩が代表で出ているのを見ると、自分もがんばればできると感じた。余談ですけど日本代表FWの巻は、大学時代の一つ下の後輩。それが今ではW杯の日本代表メンバー。あれを見ると自分もここで踏ん張っていつか代表になってみせるって気持ちにさせられる」。試合に出て活躍すればおのずと代表の道も見えてくると信じてやまない。 そして、自分が得た教訓から「日本や世界にはもっとうまい選手がたくさんいる。限界を作らず、現状に満足せず、努力あるのみ。Jをまず目標にしてどんどん入ってきてほしい」と在日サッカー少年にエールを送る。(金明c記者) [朝鮮新報 2006.7.13] |