〈第4回「ヘバラギカップ」〉 白熱の36試合 295人のバスケ少年の夏 |
男子 北九州 2連覇、女子 東京第3 3連覇 第4回「ヘバラギカップ」在日朝鮮初級学校学生中央バスケットボール大会(在日本朝鮮人バスケットボール協会主催)が1〜3日、東京朝鮮文化会館で行われた。会場は各校の応援団と295人のバスケ少年たちの熱気でわいた。今大会には20校(合同チーム含む)、男女23チームがエントリー、男子2部、女子3部トーナメント制で全36試合が繰り広げられた。熱戦のすえ、男子の部では北九州が2連覇、女子の部では東京第3が3連覇を果たした。予選から決勝までの大会3日間をふり返る。 〈1日目 予選〉 大会の水準高し
大会初日には予選16試合が行われた。大会は男子、東京第1×西東京第2、東京第9×東京第4の試合で幕を上げた。 新人戦優勝校の第1は30−15、第4は42−6で勝利し順調な滑り出しをみせた。前回大会優勝の北九州は、崔凌也選手(6年、センター)が26得点の活躍を見せ、西東京第1を68−0、埼玉は横浜を58−4で下し、1部ベスト4進出を決めた。 女子の部では初日から好カードが続出し、会場をわかせた。 予選2回戦では東京第4と埼玉が激突。試合は均衡を保ったまま最終クォーターへ。終了間際、1点のビハインドでフリースローを得たのは埼玉。最高潮に達するプレッシャーの中、1本目は静かにゴールに吸い込まれた。同点。2本目はゴールに嫌われるも、リバウンドを押し込んだ埼玉が見事逆転勝利を収めた。駆けつけた「父母サポーター」は熱狂のあまり椅子から転げながら喜びを爆発させた。 さらに注目の試合は、合同チーム同士の対戦となった予選1回戦、「群馬、北海道」×京都「チャララ」(京都第2、京都第3の合同チーム)の一戦だ。週に1回の合同練習さえままならない京都、大会2日前にどうにか合同練習にこぎつけた「群馬、北海道」だったが見事なチームワークを見せてくれた。試合は第3クォーターまで京都優位で進んだが「群馬、北海道」が最終クォーターで意地を見せ18−11で勝利した。しかし「群馬、北海道」は2回戦で千葉に敗れ合同チーム勢の1部トーナメント進出の夢は断たれてしまった。 「チャララ」の李秀漢監督は「事前に調査したよりも、個々人の技術、大会の水準はもっと高かった。集中力が最後まで持たず敗北したがよい経験になった」と感想を語った。 1部ベスト4には東京第2、東京第3、千葉、埼玉が名乗りを上げた。 〈2日目 準決勝〉 「やればできる」 2日目、気温は28度と8月にしては低かったが、大会は初日よりさらに加熱していった。初日は各校10人前後だった応援団も2日目からは倍の20人を超えていた。この日は1、2部準決勝、3部トーナメント決勝までの14試合とフリースロー大会、初級部4年生たちの合同特別試合「コッポンオリ」が行われた。 女子1部準決勝、3連覇を狙う東京第3に対し千葉は内外から注目を集める173センチ、6年の崔希穂選手を中心にゴール下を固め悲願の優勝を狙う。しかし第3は「ダブルセンター」を擁し「制空権」を譲らなかった。今年の第3は穴がないと関係者は評価する。
第2クォーターまで点差はなかった。だが、後半から点差が開いていった。第3のランニングバスケットが功を奏し始めたのだ。 選手層で勝る第3が48−21で決勝に進出した。 千葉の呉伯根監督は「勝つ喜びを経験させるべく厳しい練習をしてきたが、学父母、選手の期待に応えられなかった」とこぼした。崔希穂選手は「選手権では優勝したい。練習は厳しいがバスケが好きだからもっと強くなりたい」と語った。 前日、派手な勝利を演じた埼玉は東京第2と対戦し、応援団に再び緊張と感動をプレゼントした。29−24の辛勝だった。 男子1部は東京第1×東京第4、北九州×埼玉の試合が行われた。 北九州は埼玉相手に前半を27−4で折り返し圧勝かと思われた。しかし後半の埼玉は男女とも別のチームに変わる。埼玉の得点シーンばかりが目立ち始めた。会場は三度「お祭りか?」とざわついた。後半だけみれば19−15と埼玉に軍配が上がったが、それでも前半の大量リードで北九州が決勝進出を果たした。 埼玉の洪貴恵監督は「うちのチームはスロースターターだから」と敗戦を悔やんだが「やれば出きることを選手たちは身を持って証明してくれた」と話した。 相手チーム得点源の崔凌也選手を抑えつつ自ら10得点の活躍をした申成剛選手(5年)は「大きくてうまい相手だった。まだまだ練習不足。もっとディフェンス力を磨きたい」と話していた。 東京第1は東京第4を30−18で下し、決勝へ駒を進めた。 2部男子決勝には、西東京第1と西東京第2、女子決勝には「群馬、北海道」と東京第4が進んだ。 3部では京都「チャララ」、横浜、東京第1に勝った名古屋が優勝した。 〈3日目 決勝〉 決め手は総合力 試合の舞台が約2倍の広さのオールコートに切り替え迎えた最終日。試合は男子2部決勝の西東京第1×西東京第2の「多摩ダービー」で始まった。 西東京第2は今年5月にできたチームで部員も7人しかいない。それでも気力と体力のあるチームに仕上がったのは、「徹底的に基礎練習を行った。大会前の練習試合では、ほとんど得点できない状態だったが、それから選手たちは自主的に早朝練習を始め、自信を付けていった」(金将志監督)からだ。気力で勝る西東京第2が「多摩ダービー」を制した。 女子2部決勝は東京第4が31−8で「群馬、北海道」を破った。 「群馬、北海道」の金麗和主将(北海道)は負傷のため決勝は途中欠場となったが、「印象深い試合は京都との予選の試合。人数が足りず参加できないと思っていた大会に出られて本当にうれしい」と感想を語った。 男子1部決勝は波乱の幕開けだった。東京第1のエースが開始早々に負傷、戦線を離脱した。 得点力ばかりが目立つが北九州は元来ディフェンスのチーム。北九州のオールコート、ダブルチームのディフェンスに対し、スターティングメンバーを1枚欠いた東京第1は42−10で敗れた。 北九州の李明哲監督は「まだまだ自分たちのバスケができていない」と辛口のコメントを残したが、選手たちは素直に喜びを噛み締めていた。 崔凌也選手は「とても緊張した。勝てたのも、たくさん得点できたのもみんなのおかげ」と話した。自軍の監督さえ予想できなかった動きを見せたのは芮秉龍選手。要所で相手チームの流れを断ち切る得点を上げていた。「決勝は絶対に勝つ」という気持ちが動きに輝きを与え、「たくさんの経験を得られた」とほほ笑んだ。 大会最終試合、女子1部決勝は過去2大会を逆転で優勝している東京第3対、今大会、接戦を制し続けてきた埼玉の試合。両チームとも後半戦に定評がある。
応援合戦では埼玉に分があったが、試合は東京第3のリードで展開した。シュート数は変わらないものの、ゴールの正確性、リバウンドの支配率が得点の差を生んだ。 関係者は第3の試合運びについて「『バスケIQ』が高い。小学生であそこまではなかなか…」と舌を巻いた。 前半を19−5で折り返すも第3ベンチからは「負けているのは自分たちだと思え」と檄が飛ぶ。 埼玉は「自分たちを信じて、1on1を勝っていこう」とし、後半にすべてを賭けた。 ラスト2分、東京第3のタイムアウトから流れが変わり、埼玉は36−15から36−20、38−23と追い上げるがここまで。会場には優勝の喜びを分かち合う第3の選手、監督の声が響いた。 康哲敏監督は「試合に勝つことよりも、つらくなったときに力を抜いてしまおうとする自分自身に勝つことで結果は必然的についてくる。『その瞬間の勇気』のために基礎練習をきっちりとしてきた。レギュラーの子どもたちが4、5年生に教えるグループ練習も徹底した。今日はそんな子どもたちの力が発揮できたと思う。正直V3はうれしい」と語った。柳愛加主将、姜珠恵副主将は「みんなのおかげでできた優勝だと思う。だからとてもうれしい。『夏の第3』と言われているけど今年は選手権でも絶対優勝」と喜びを爆発させていた。 第4回「ヘバラギカップ」は選手、監督、関係者の「冬の大会で会おう」という約束を残し、幕を閉じた。(鄭尚丘記者) ▲大会結果 【男子】 1部 @北九州A東京第1B埼玉C東京第4 【女子】 1部 @東京第3A埼玉B千葉C東京第2 [朝鮮新報 2006.8.17] |