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〈第37回全国中学校サッカー大会〉 戦う意識、チーム全体に浸透

仲間を信じ、みんなで勝ち取った16強

1回戦で芦原中学校と対戦。1−0で勝利を収めた。チームを引っ張った高希誠主将

 第37回全国中学校サッカー大会が19〜23日にかけて愛媛県の各競技場で行われた。1997、2004年に続いて3度目の出場を果たした近畿ブロック代表の東大阪朝鮮中級学校(以下東中)は1回戦を突破するも2回戦で惜しくも敗退し、ベスト16で会場をあとにした。

 「歴史を作ろう」−朴秀勇監督(37)はそう言って選手たちをピッチに送り出した。言葉は短い。それでも選手たちはその重みを痛いほど理解している。同大会に出場した過去2度、2回戦で涙をのんだ先輩たちがいたからだ。「この壁を乗り越えよう」。選手たちはこの合い言葉をしっかりと胸に刻んで「全国」の舞台を踏んだ。

 胸に刻んだものはそれだけではなかった。主将として1年間チームを率いてきた高希誠選手(3年)の言葉からそれを知ることができる。「自分たちは朝鮮学校の代表。勝つことで全国の同胞、応援に来てくれる学父母たちに喜びを与えたい」。

 04年の全国大会に出場を果たした時、高主将は1年。ピッチで涙する先輩たちの姿が目に焼き付いている。あどけなさの残る15歳の中級部生。そんな少年たちが戦うことの意味を心に刻み込んでいた。それはチーム全体に浸透していた。

1回戦で決勝ゴールを演出したFWの孫景大選手(右)

 4カ月前の予選から今日まで、府予選を勝ち抜き近畿大会でも優勝を手にしたその勢いを見せる時がきた。

 19日の1回戦、相手はあわら市の芦原中学校(福井県)だ。キックオフのホイッスルが鳴ると同時に、ゴールを目指した。緊張の見える東中イレブンを前に攻めに転じる芦原中。前半15分まで相手のペースで試合が進み、あわやゴールを許しそうな場面もあった。徐々に試合に慣れだすと以降は東中がペースをつかんでいった。前半0−0。後半に入り東中が再三チャンスを演出した。

 均衡が破れたのは後半15分。FWの孫景大選手が蹴った左からの直接FKをゴール前で待っていたMFの張英哲選手が頭で合わせ、決勝ゴールを奪った。

 張選手のアボジの張成祐さん(49)は、「入った時は本当にうれしかった。今日は朝から応援団も選手もみんなががんばった結果が出た。とにかく1回戦を勝ててよかった」と喜んだ。

魂こもった試合

選手たちを懸命に応援する東大阪朝鮮中級部応援団

 20日、2回戦の相手はひたちなか市の那珂湊中学校(茨城県)。同校は1回戦で浦添市立港川中学校(沖縄県)を5−0で退けており、攻撃力が自慢のチーム。とくにFWの個人技とスピードは今大会屈指を誇った。

 強豪を相手に物怖じせず、普段どおりのサッカーをして見せた東中が序盤の流れをつかんだ。東中は前半開始6分、右サイドからのセンタリングをFWの周祐慶選手がヘディングで豪快に決めて先制。1分後にはMFの姜慶太選手がミドルシュートを決め早々から2点をリードした。

 このままの流れでいくかと思われたが、那珂湊中は目が覚めたかのような攻めに転じた。9分、13分と立て続けにゴールを許し前半を2−2で折りかえした。後半は一進一退の攻防が続き、均衡を破ったのは那珂湊中だった。後半14分に相手FWの巧みなドリブルにDFが振り切られ勝ち越し点を許した。

 その後、東中はCKからのヘッドがゴールポストに当たり、ミドルシュートがバーの上を越えていくなど、再三チャンスを演出したが1点が遠い。ロスタイム4分、パワープレーに出た相手にまたも1点を許し2−4で敗れた。

 3度目の挑戦も2回戦の壁を破れなかった。「よくやった」と拍手で健闘を称える同胞たち。選手たちは顔を上げられずに泣いた。

 那珂湊中の大森剛監督(36)は、「初戦を見てもっと楽にいけると思ったが甘かった。スタートで出鼻をくじかれて目が覚めた。東中の方がフィールドをワイドに使っていた。最後はこっちがパワーで押すしかなかった。魂のこもった試合をするし、11番(周祐慶)のFWにボールを入れて展開する攻撃が印象に残った」と語った。

涙こそ宝

2回戦の相手は那珂湊中学校。先取点をあげた周祐慶選手(ユニフォーム白)

 赤のTシャツではるばる愛媛まで応援に駆けつけた大阪の学父母たちは一様に「全国大会の舞台に連れてきてもらったことを感謝したいし、みんなに希望を与えてくれた」と口をそろえていた。

 高主将のオモニの張春美さん(49)は、「息子の姿を見るとなんとも言えない気持ち…。2回戦の壁は超えられなかったけど、本当によく戦った。全国大会常連校になっていつか優勝することを願っている」と語った。

 高主将は、「大会を通してチームメイトみんながとても大切なんだと感じた。チームもベンチもみんな一つになってここまで来ることができた。試合に出られなかった同じ3年生の涙は一生の宝。夢は後輩たちに託したい」と涙を拭った。中盤を支えた2年の康貴裕選手は、「来年は同級生、後輩たちと全国を目指して先輩たちの分までがんばりたい」と心に誓った。

 朴監督は、「選手たちは朝鮮学校の代表としての誇りを持って堂々と戦いぬいた。同胞たちの声援を受けて戦うことで選手たちが大きく成長した。この大会に出ることに大きな意義があるし、全国7000校の16強は誇れる。選手たちをしっかりほめてあげたい。今後は大会の常連校となれるよう強化していきたい」と先を見据える。東中の「全中制覇」の夢は、まだついえていない。(文=金明c記者、写真=文光善記者) 

[朝鮮新報 2006.8.24]