在日朝鮮学生中央体育大会 仲間と流した汗と涙、感動の3日間 |
中等教育実施60周年記念、在日朝鮮学生中央体育大会が6〜8日、東京の駒沢競技場など都内、関東地方の競技場、朝鮮大学校体育館、大阪朝鮮文化会館などで行われた。大会には高級部11校、中級部36校から約2000人の生徒らが参加し、3日間、熱戦を繰り広げた。高級部部門では陸上、サッカー、バレーボール、バスケットボール、野球、卓球、テニス、柔道、ボクシング、空手、ラグビー(8月30、31日)の11種目で男女16競技、中級部部門では陸上、サッカー、バレーボール、バスケットボール、卓球、柔道の6種目で男女10競技が行われた。各地の朝鮮学校のスポーツ選手たちにとっては夏季最後の大きなスポーツの祭典。それだけに同大会に賭ける選手たちの思いは特別だ。いくつかの種目をふり返ってみた。 ▽サッカー 東京朝中が初優勝、高級部も東京が制す
34校24チームが参加した中級部のサッカー競技。8日、駒沢第2球技場では東京朝中と神奈川朝中による決勝が行われた。 決勝戦、ゴールネットは早々に揺れた。前半2分、神奈川の8番鄭光俊選手(2年)が、相手ゴールキーパーがはじいたボールを押し込んだ。先制に神奈川の同胞が沸き立つ。 しかし東京は前半24分、左フリーキックからのこぼれ球を9番李圭悟選手(3年)が落ち着いてゴールする。同点のままハーフタイムとなった。 「東京!」「神奈川!」−チーム、同級生、学父母からの黄色い声援は五分と五分だ。 後半の立ち上がり。テンポのいいリズムを作ったのは東京。後半17分に、左からのコーナーキックを11番尹英勝選手(3年)が頭で合わせ、ついに逆転する。その8分後には、またも尹選手が追加点を挙げ、神奈川との点差を2点に広げた。神奈川が終了間際に怒とうの攻めに転じるが、スコアは変わらず、3−1のまま試合終了。 喜びを分かち合う東京。うなだれる神奈川。グラウンドは東京の歓喜と神奈川の悔しさであふれた。 東京は中等教育実施60周年の今年を中央大会初優勝で飾った(第1回大会は1975年)。同胞らは、「マダドゥルハッキョ、チョッタ!」と栄誉を称えた。 中央大会が3年間の練習成果を発揮する場であったと話すのは、東京の崔秀栄主将(中3)。ゴールキーパーとして最後尾から声をからした。一番しんどかったという決勝戦後、日焼けした顔を一瞬崩し、「うれしい」とはにかんだ。「部員全員がチームのために団結した。『ひとつ』になれたことで優勝できた」。中級部での思い出をチームメイトと味わっていた。 東京の金龍徹監督(31)は、優勝が決まり「ホッとした」という。礼儀など「人間的な素養」を常日頃から重んじている。それが技術の向上へとつながるからだ。 大会中、3年生を中心に部員同士が考えあうチームに成長したという東京。日本の大会での活躍に今後の期待が膨らむ。 一方、決勝で負けた神奈川は、準々決勝で今夏「全中」に出場した東大阪朝中をPKのすえに下した。生徒らは部活以外の日常生活を怠らなかったという。「その結果が決勝までの道のりに表れた」と崔仁樹監督(28)。「決勝では、いつものようにボールを横につなぎ展開できなかった。今後の課題だ」(崔監督)。 数十年ぶりに駒沢陸上競技場で行われた高級部サッカー競技の決勝は、東京朝高が愛知朝高に7−0で快勝。5年ぶりの栄冠を手にした。 東京朝高の洪泰日主将(高3)は今大会を振り返り、「優勝したものの修正点が多い」と語り、「今年こそ冬の選手権に初出場し、結果を出す」と気を引き締めた。(李東浩記者) ▽ボクシング 大阪、貫禄の全階級制覇、5年連続で団体優勝
ボクシング競技(6〜8日、朝鮮大学校体育館)の1部トーナメントはライトフライ、フライ、バンタム、フェザー、ライト、ライトウェルター、ミドル級の7階級で試合が行われ、東京、大阪、神戸、広島朝高の4校から今年度のインターハイ出場者5人を含む29人の選手が出場した。 トーナメント1部で注目を集めたのは、インターハイ出場者同士の対決となったライトウェルター級の決勝戦。全国選抜優勝、インターハイ3位の大阪朝高・金在鴻選手(3年)とインターハイ8強入りした神戸朝高の周光植選手(3年)の決勝は互いに打ち合う激しい試合展開となったが、金選手に軍配があがった。 フェザー級決勝では大阪・洪隆輝選手(3年)と東京・朴満基選手(3年)、ライト級決勝では大阪・朴勇貴選手(3年)と東京・任龍壎選手(3年)の「東西対決」となった。ライバル校同士の対決に選手も観客席も燃えた。選手の闘志もさることながら、リング外からは大きな声援が飛び交った。両試合とも接戦をものにした大阪が勝利した。結果、大阪朝高が全階級を制覇し、5年連続団体優勝の貫禄を見せ付けた。
10月の兵庫国体に出場が決まっている金在鴻選手は、「国体を前にいい試合ができた。みんなが一生懸命練習してきたし今回、全階級で優勝できたことは大きな成果だった」と語った。 金選手に敗れた周光植選手も国体に出場する。「今大会でまた一つ大きく成長できた。決勝前の試合で広島朝高の片洸宙選手(3年、インターハイ出場)との打ち合いに勝てたことで自信を得られたし、決勝でも全力を尽くせたから悔いはない。国体につなげたい」と意気込んだ。 また、フェザー級で優勝した大阪の洪隆輝選手も国体出場を決めている。 競技終了後、全員参加のもと、東京ボクシング部後援会の主催で焼肉パーティーが行われ、選手、監督、応援に駆けつけた父母たちは互いに交流を深めていた。(金明c記者) ▽空手 型と組手で安定力、神戸(男女)総合優勝
空手競技(6〜8日、朝鮮大学校体育館)は初日に個人、団体の型競技、2日目に団体組手、3日目に個人組手が行われた。 今大会は神戸の活躍が目立った。団体型では男女共に優勝。個人の型でも男子は成炳久、女子も金香星選手が優勝した。また、女子団体組手の決勝でも大阪を破り優勝した。型と組手の両競技で安定した強さを見せつけ男女共に神戸が総合優勝を果たした。 男子団体の組手の決勝は東京と愛知が対戦し、東京が勝利した。 最終日に行われた個人組手は例年通り、盛り上がりを見せた。 男子決勝は、神戸の成炳久選手と神奈川の成瑛基選手が熱戦を繰り広げた。成瑛基選手が途中、足の裏を深く切るアクシデントに見舞われたが、痛みをこらえ試合続行。長いリーチを生かして有効打を奪った成瑛基選手が初優勝を飾った。優勝した成選手はまだ2年。「期待のホープ」と関係者は語る。 成選手は「勝つという気持ちを毎試合維持することができた。夏の厳しい練習を乗り越えて結果を出せたことに満足している」と笑顔で語った。 「決勝で会おう」合言葉に 大阪朝高の女子2選手
女子個人組手は崔美湖選手と金遥菜選手(共に3年)の大阪朝高同士の対決となった。 2人は今年5月、大阪で行われた第1回在日本朝鮮人空手道選手権大会の高級部・個人組手決勝で対戦している。この時は崔選手が勝利。崔選手は、8月22〜28日に平壌で開催された第2回国際武道競技大会に在日同胞代表として出場している実力者だ。 試合は、互いに気迫あふれる死闘を繰り広げたが、実力で勝る崔選手が優勝した。試合終了後、「勝ち負け以前に楽しくやろうと話し合った。それで『決勝で会おう』って。結果よりも内容ある試合をして堂々と大阪に帰ろうってね」と互いに笑顔を見せた。 2人は高1から空手部に所属。伸び悩んでやめたいと思った時もあったが、互いに支え励ましあい3年間ここまでやってきた。現在、同部に2年生の女子部員はいない。今は1年生だけだが「残る学校生活の間は、後輩たちをしっかり育てたい」と語る。 そんな屈強な女子部員にまじって、たった1人の男子部員として練習に励んできた愼修英選手(2年)は個人組手で3位入賞を果たした。「ここまで来られるとは思ってなかった。がんばればできるし自信がついた」と緊張した面持ちは、最後には笑顔に変わっていた。(金明c記者) ▽バスケ 大躍進の東京 全制覇、中、高ともにアベック優勝
バスケットボールには、中級部男子14チーム、女子13チーム、高級部男子7チーム、女子7チームが出場した。中級部、高級部、男女それぞれで東京勢の活躍が目立った。中級部、高級部ともに東京が男女アベック優勝を遂げた。 中級部男子決勝は、準決勝で尼崎との接戦を制した東京と、危なげない試合運びで勝ち進んできた神戸との戦いとなった。 互いに譲らず1点を争う展開のなか、神戸が2点リードで折り返した。しかし、終盤に入り着実にポイントを重ねた東京が72対60で勝利し優勝した。 ディフェンス面に課題を残していた東京だったが、優勝を目標にチームが一つになった。主将の全貴成選手(中3)は「成果の多い試合だった。みんなが走って声を出して団結できた」と語った。リードを許した場面でも「みんなで雰囲気を盛り上げて乗り切った」とチームの成長を喜んだ。 最優秀選手に選ばれた鄭清和選手(中3、東京)は、試合結果を左右する重要な場面でたびたびゴールを決めた。「練習の成果を発揮できた。みんなが力を出し切った」と語った。
中級部女子決勝は、共に準決勝を僅差で競り勝った東京と東大阪の対戦となった。序盤から東京がポイントを重ね最大15点差まで差を広げたが、東大阪が追い上げ終盤に4点差まで詰め寄った。しかし、最後は自力に勝る東京が連続でゴールを決め優勝を決めた。 主将の林香淑選手(中3)は「内容のある優勝ができたことがうれしい」と語った。大会前にチーム内でいろいろ問題があったが、みんなで乗り越えてきたという。「みんなで戦ってみんなで喜んで、心が一つになった」と語った。 最優秀選手には、2年生ながら高い得点力で優勝に貢献した李英華選手(東京)が選ばれた。 高級部男子は88対65で神戸を下した東京が3連覇を飾った。女子は大阪との接戦をものにした東京が昨年の雪辱を晴らし優勝した。(李泰鎬記者) [朝鮮新報 2006.9.14] |