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朝鮮学校生徒 国体初参加 「新たな1ページ開く」

 第61回国民体育大会・のじぎく兵庫国体が9月30日〜10月10日まで兵庫県の各地で行われた。今大会から朝鮮学校生徒も参加できるようになり歴史的一ページを開いた。サッカー、バレーボール、ラグビー、ボクシング、ウエイトリフティング、水泳、競泳の6競技に中、高級部の生徒9人が出場。そのほか、成年男子ボクシングと成年男子ゴルフにも1人ずつ出場した。選手たちの活躍ぶりをふり返った。

▽少年男子ボクシング 「大声援があと押しに」−神戸朝高・周光植、大阪朝高・金在鴻

左ストレートを浴びせる周選手

 「気持ちで負けるな。兵庫県の代表、朝高の代表として闘志を見せろ」−県代表監督で神戸朝高ボクシング部の金潤徳監督(27)はセコンドにつき、周光植選手をリング上へと送り込んだ。

 ウェルター級準決勝。勝てば念願の国体決勝だ。「必ず勝つ」−そう意気込み周選手は1回から相手に牙を向いた。華麗なアウトボクシングを展開する従来の姿はなく、激しいパンチの応酬となった。一発がでればどちらかが倒れるような展開だったが勝敗は判定にゆだねられた。結果、宇佐美太志選手(岐阜県、岐阜工業高校)に軍配が上がった。

 「相手の方が一枚上手だったが3位は誇れる」と金監督。周選手は「みんなの大きな声援があと押しになった。高校最後の試合で自分の力を出し切ったから後悔はない」と。相手の宇佐美選手は周選手の印象について、「ボクシングがうまい。とくにポイントのとり方は絶妙」と話した。

周選手に声援をおくる神戸朝高の同級生たち

 一方、大阪朝高の金在鴻選手はライトウェルター級の準々決勝でライバルの福原徳光選手(広島県、崇徳高校)と再び顔を合わせた。全国選抜決勝、インターハイ準決勝に次ぎ3度目の対戦だ。2度の戦績は1勝1敗。金選手はインターハイで福原選手に敗れた。

 試合は、1回にダウンを奪った金選手がその後も有利に試合を進めるかと思われたが、相手も必死の形相でパンチを繰り出した。結果は判定に持ち越された。レフェリーは福原選手の手を高々と上げた。

 金選手は、「高級部最後の試合に賭けていたから悔しさが残る。ボクシングを通じて礼儀や人間関係の大切さなどたくさんのことを教えてくれた梁学哲監督に結果を残して恩返しをしたかった…」と話した。

「よきライバル関係」築いた3年間

 神戸朝高の周光植選手の国体3位入賞の裏には、3年間共にボクシング選手として過ごしてきた金在鴻選手とのよき「ライバル関係」がある。金選手が今年3月に行われた全国選抜大会のライトウェルター級で優勝した時、周選手は近畿大会予選の決勝で金選手に敗れ、全国へのキップを逃した。「むちゃくちゃ悔しかった」と語る。それからも2人は切磋琢磨し技量を磨きあった。今年の祖国の強化合宿では金選手が主将、周選手が副主将となって団を率いた。

 周選手は2年のインターハイでは1回戦負け、3年のインターハイでは8強。そして今大会で堂々3位入賞と結果を残した。「3年間のボクシングを通じて、どんな時でも負けない強い気持ちを学んだ。これからもしっかり生かしていきたい」と周選手の目は次に向かっていた。(金明c記者)

▽少年男子サッカー 来年もこの舞台に−京都朝高・李大顕

ドリブルで相手を抜きさる李選手

 少年男子サッカーの京都府代表に選ばれた京都朝高1年の李大顕選手。FWで背番号10は1年でチームの中核選手であることを示していた。10月1日、五色台運動公園サブグラウンドで行われた京都府の初戦は熊本県。試合開始とともに李選手は攻撃の起点となった。ポストプレーに空中戦、自らドリブルで切り込んだり、スペースに走りこんだりして何度もゴールチャンスを演出。そして前半早々、キーパーと接触しつつも強引にスライディングシュートで押し込み、見事先制点をあげた。試合は前後半で2−2。京都府は延長前半に1点を決められ、2−3で敗れた。

 李選手は、現在セレッソ大阪ユースに所属。京都第2初級時代は学校のサッカー部と地域のクラブチームでサッカーに明け暮れた。朝高サッカー部にも入ろうと考えたが、自らJリーグのユースチームへと足を踏み入れた。今回の国体の出場を何よりも喜んでくれたのはハラボジやアボジ、オモニ、親せきたちだったという。

 李選手は、「みんな見に来てくれてうれしかった」とほほ笑み、「将来、プロになるかどうか、まだはっきりした考えはしてないけど、来年もまたこの舞台でチャレンジしてみたい」と語った。(c)

▽少年女子バレーボール 「みんなと溶け込め最高」−神戸朝高・趙慶和

チームの勝利に喜ぶ趙選手(前列左から2番目)

 10月1〜4日、たつの市立龍野体育館で行われた少年女子バレーボール競技。兵庫県代表としてチームの一員となった神戸朝高の趙慶和選手(3年)の姿がそこにあった。最終的に試合に出場できる11人の登録メンバーには入れなかったものの、選抜された残り5人を含む16人が一つになって勝利を目指した。

 趙選手はブルーのメガホンを持って兵庫県応援団の席で大きな声援を送った。試合に出られなくても立派なチームの一員だ。神戸朝高バレーボール部の後輩たちも声援に駆けつけていた。

 宮城県との初戦は接戦につぐ接戦で2−2のフルカウントまでもつれ込み、3セット目をとった兵庫県が地元開催に花をそえた。

 趙選手は、「試合に出られない悔しさはあるけど、合宿や練習を通じてチームみんなと溶け込めていったし、雰囲気も最高によかった。県代表として選抜されたことで自信がついた。国体は普通の大会とは違って独特な雰囲気があると感じた」とほほ笑んだ。

 一方、オモニの李明淑さん(45)は、「娘は初4からずっとバレーを続けてきたけどまさか国体選手に選ばれるなんて思ってもいなかった。今回の経験でもっと成長していけると思う。今後も国体にたくさんの朝鮮学校生徒が出場して活躍できればいい」と語った。(c)

▽少年男子ラグビー 小柄な体にみなぎる闘魂−東京朝高・文炯駿

試合後、FWの前列3人で。中央が文選手

 ラグビーフットボール競技の少年男子1回戦(10月5日、姫路市立陸上競技場)。東京都代表は大分県代表と対戦した。

 ここに2番フッカーとして東京朝高の文炯駿選手(3年)が出場。みなぎる闘魂、朝高生としてのプライドを胸にボールを追った。試合は38−12で東京都が圧勝。続く2回戦(6日、太子町総合公園陸上競技場)では青森県を22−5で降し、準決勝(8日、太子町総合公園陸上競技場)では長崎県に7−14で敗れ、兵庫県と同率3位になった。

 今大会フッカーの平均身長は170センチ。中でも身長160センチと小柄な文選手だが、低く鋭いタックルには定評がある。試合前から気合十分だ。1回戦の後半5分には接触プレーにより鼻血が出るというアクシデントに見舞われたものの、持ち前の根性ですぐに復帰した。

 文選手と共にFWの前列でスクラムを組む1番プロップの高橋悠太選手(3年、国学院久我山)は、「元気がいい。スクラムはもとよりチーム内の雰囲気までも引っ張ってくれる」と絶賛する。一方で森秀胤監督(44)は、目立たないプレーの中にしっかりとした戦術眼を持つと高く評価する。「ラインアウトからのスローイングなども良い。場を和やかにさせるキャラクターだ」。

 そんな文選手。日本人選手と寝食をともにする過程で「みんな僕らと同じ普通の高校生」と感じたという。

 「朝高生としての重圧はあるけれども、今大会を通じてなにかを得たい」と語る。最後にこんな言葉が出た。

 「記者さん、同胞と会いたかった」。

 雨の中、にんまり笑う小麦色に焼けた好青年の笑顔がまぶしかった。(東)

▽少年女子競泳 「チーちゃん、大きく伸びる」 京都中高・蔡知怜

400メートルリレーに参加した3人と。左から2番目が蔡選手

 「はあはあ…」。荒い息づかいをかき消すように、蔡知怜選手(中級部3年)は唇を噛みしめた。腰に手をあて、視線はどんどん下に落ちていった。

 10月3日、尼崎スポーツの森で行われた少年女子Bの100メートル平泳ぎ(中3と高1が出場)の予選。記録は1分14秒31で自己ベストを0.07秒更新した。予選13位。上位9人までの決勝進出はならなかった(予選1位の記録1分11秒46、9位1分13秒18)。

 同日、400メートルメドレーリレー(京都府代表、2番手、成績8位)の決勝後、口を開いた。「全国中学校大会ほどの緊張感はなく、調子は良かった。(100メートルで)1分13秒台の好記録が出ると思っていたのに。来年はがんばりたい…」と涙を流し悔しさをにじませた。

 「負けず嫌いで自分でなんでも決めるタイプ」の蔡選手。チーム内では「チーちゃん」と呼ばれている。

 メドレーリレーに出場した他の選手らは、「とてもがんばっていた」(背泳ぎの藤ノ井麻優香選手)、「明るくて楽しい」(バタフライの中坊彩選手)、「国籍なんて関係なしに仲良くしている」(クロールの田井中千加選手、3選手とも京都外大西高校1年)と蔡選手について話す。さらに京都府少年女子の福田浩二監督(47)は、「大きく伸びていく楽しみな選手」だと語った。

 一方、九州朝高の金亜蘭選手(3年)は1日、少年男子Aの100メートル自由形に出場したが予選を突破できなかった。同日、800メートルリレー(福岡県代表、4番手)にも出場したが惜しくも予選突破はならなかった。(李東浩記者)

[朝鮮新報 2006.10.11]