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東京都社会人リーグ1部 FCコリア 11月18日から関東大会へ

在日朝鮮人蹴球団時代の「ハート」忘れない 目標の「JFL昇格」へ突き進む

 「目標はJFL」を合言葉にまい進する社会人チームがある。「FCコリア」(代表=李清敬、在日本朝鮮人体育連合会副理事長)。同チームは、かつて日本サッカー界で「幻の王者」と呼ばれた常設チームの在日朝鮮蹴球団(以下蹴球団)のレベルを目標に定めている。今年度の東京都社会人1部リーグで2位となり、関東社会人サッカー大会に初出場する。JFLへ一歩近づく大会だけに、チームの士気も否応なしに上がる。着実に歩み続ける「FCコリア」。夢への挑戦はこれからが正念場だ。

走り負けしない体力

関東大会で優勝すると意気込むFCコリアの選手たち

 「おいおい、小学生じゃあるまいし、そんな簡単な失敗するな」。監督の叱咤がグラウンドにこだまする。

 週3回、午後7時の東京都北区の東京朝鮮高級学校グラウンド。FCコリアの面々がそれぞれ仕事を終えてやってくる。疲れた体に鞭を打つようにひたすら練習に励む。

 「今年はほかのチームに走り負けしない体力を養った。何よりも勝つというハートが大切だ」と高武司監督(40)は言う。「すこし古いかもしれないけど、朝鮮語で言えば『燈走穿(闘志戦)』。俺は選手から嫌われているかもしれないね(笑)。とにかく叱咤して走らせるから。どれもこれも強くなるため」。

 かつての「幻の王者」、蹴球団と重ね合わせてのことだろうか、「在日サッカーが日本のチームに負けてはならない」と、言葉の端々から熱い何かが伝わってくる。蹴球団にも所属していた高監督は、チームを率いてまだ9カ月だが、その情熱を選手たちにしっかりと伝えている。

 練習を見るととにかく走る、走る。仕事を終えてから、そのパワーとモチベーションがどこにあるのかと感心せざるをえない。

 主将の河貴大選手(25)は、朝鮮大学校サッカー部時代に朝鮮代表として02年の釜山アジアサッカー大会に出場した経歴を持つ。「ほかのチームよりも走りこんでいる自信があるし、チームのモチベーションも上がっている。関東大会では必ず優勝したい」。

今年は安定した力

 FCコリアは02年に誕生した。その背景を少し振り返ってみよう。

 かつての蹴球団は99年12月に活動を休止。非常設チームになった。当時の団長は金光浩さん(元朝鮮代表選手)だ。00年の本紙インタビューで、非常設チームになった理由を3つ挙げている。

 第1に、蹴球団本来の目的で、蹴球団にとって「公式戦」といえる朝・日親善試合が年々組みにくくなり、選手たちのモチベーション維持が困難になった。2つ目は、長引く経済不況により同胞商工人と組織からのバックアップが困難になった。3つ目としては同胞のニーズの変化で、日本のトップレベルと同じ土壌で試合ができない蹴球団よりも、全国大会への道が開かれた中、高級部の公式試合の活躍に振り向くようになったと話している。

 01年1月、日本サッカー協会の準加盟登録団体規定が変わり、外国籍の選手が6人以上登録されているチームが準加盟団体チームとして扱われるようになり、定住外国人チームにもFJL、全国社会人大会などの門戸が開かれた。それから蹴球団の名を改め、「FCコリア」として再出発した。

 チームには現在22人の選手が在籍する。「コリア」を名乗るチームだけに、当然、在日朝鮮、韓国人が主だ。朝高や朝大サッカー部、各地域の朝鮮蹴球団や日本の大学サッカー部で活躍したつわものが揃う。同クラブはNPO法人を取得。中には、日本人選手や韓国五輪代表候補になった経験を持つ韓国人選手も在籍している。

 FCコリアが目指すチームの形態はまだまだ模索段階にある。しかし、その成長に大きな可能性を秘めていることはまちがいない。

誇り、精神は変わらず

 今年のFCコリアは安定した力を見せた。東京都社会人リーグ1部で全14チーム中、9勝2分2敗で2位。総得点は50でリーグ1位だ。「たかが都リーグ」と思う人もいるかもしれないが、どこもそう簡単には勝たせてくれない。サッカー強豪の大学で4年間レギュラーとして活躍した選手がごろごろしている。

 そんな中、仕事を持ちながら試合に勝ち続け、モチベーションを維持するのは大変なことだ。「仕事、サッカー、どちらが主?」。そんなことが脳裏をよぎるかもしれない。

 主務の成燦Bさんは02年の創部当時をふり返る。「2年間は1部での残留争いに必死だった。選手のモチベーションも低くて、どう上げていくか本当に大変だった」。

 練習もままならず週に1回、4、5人という時もあった。しかし一つひとつ根気強くチームを修正し、創部5年目にして関東大会出場権を獲得。関東大会で決勝に上がった2チームは関東2部リーグに昇格し、同リーグ2位以上が関東1部に上がる。そこで優勝すれば地域リーグ決勝大会。これがJFL昇格戦だ。その道のりはまだまだ長い。

 成さんは、「みんな仕事を持ちながらも必死にがんばっている。やっと光りが見えてきた」と語る。

 「形態は変わっても誇りや精神は変わっていない」と高監督。「蹴球団時代の『ハート』は忘れちゃいけない。当面、目標はJFL昇格。関東リーグに昇格させたんだと、胸はっていえるように今がんばらないと。自分たちが歴史を作るんだから」。

 JFL昇格に向かってその一歩を踏み出すFCコリア。関東社会人サッカー大会は、11月18日から前橋総合運動公園競技場などで行われる。勝ち進めば21日が決勝戦だ。(金明c記者)

[朝鮮新報 2006.10.25]