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〈第86回全国高校ラグビー大阪府予選決勝〉 3度目の「花園」出場ならず 「魅せた、大阪朝高ラグビーの底力」

強豪・東海大仰星に敗れるも善戦 同胞応援団 「感動もらった」

 第86回全国高校ラグビーの大阪府予選・第2地区の決勝戦(12日、近鉄花園ラグビー場第1グラウンド)で、大阪朝鮮高級学校ラグビー部は、昨年に引き続いて決勝の舞台でまたも東海大仰星に5−19で敗れ、3度目の「花園」出場への夢を断たれた。「一つ、信頼、勝利」をスローガンに、来年こそ「花園」の舞台に立つことを誓う。

「史上最強」の仰星

強敵を相手に健闘し朝高選手たち

 今年の東海大仰星は強い。金信男監督も「高校生レベルでは最強のチームだろう」と分析する。

 「仰星史上最強」−そう呼び名がつくほど高校生レベルでは敵なし。今年の公式戦は無敗、春の全国選抜も制している。練習試合も大学生とやるほどだ。

 体格差、実力ともに相手に分があるのは誰が見ても明らかだった。しかし、試合はやってみないと何が起こるかわからない。

全国大会出場を目前に惜敗し涙を流す選手たち

 全国一の激戦地区の大阪で、ラグビー未経験者の素人集団を全国レベルにまで押し上げていく大阪朝高の伝統ラグビー。「無から有、不可能を可能に」「いつでもチャレンジャー」の気持ちを忘れずに試合に臨んでいると金監督は語る。

 そんな大阪朝高の勇姿を一目見ようと、約3000人の同胞応援団が詰め掛けた。入場前、大阪朝高の選手たちの血走った目は決勝にかける意気込みを感じさせた。気合い十分、体中からアドレナリンが分泌している。

 試合開始とともに強力な東海大仰星のFW陣が攻めてくる。仰星はラインアウトからのモール攻撃でトライを狙う。反面、大阪朝高は粘り強く、低いタックルからのディフェンスで得点を許さない。朝高陣内での攻防戦が続く中、仰星が前半12分に10メートル右中間ラックから左へつないでトライ、ゴールを成功させた。

闘争心溢れるプレーに会場は拍手喝采だった

 そのまま前半を0−7で折り返した。善戦する大阪朝高に一筋の光りが見えてきた。「一生の中でのたった30分や。骨を折ってもいい。それぐらいの気持ちで最後まで走れ」と金監督の檄が飛んだ。

 後半戦。大阪朝高は好ディフェンスから隙をついて攻撃に転じるも、なかなか前に進めない。額から血を流す大阪朝高の選手、倒れる選手も続出するほど両者は激しくぶつかりあった。そんな中、大阪朝高は後半に一瞬の隙をつかれ、東海大仰星にバックスの好走から2トライ(1ゴール)を奪われた。

 試合終了間際の後半30分、大阪朝高も右中間ラックから左へ展開し、11番の金聊彦選手(3年)が1トライを返して一矢を報いた。ここでノーサイドのホイッスル。5−19で敗れたものの、大会関係者らは「(東海大仰星を相手に)これだけ善戦するチームは、全国大会でもそうないだろう」と話していた。

観客の心打つタックル

 「ようやった。泣くな、胸はれ!」

 同胞たちの大きな拍手と歓声がグラウンドに大きく響き渡った。

 観客席でひと際大きな声を送っていたナンバー8、権英皓選手(3年)のアボジの権裕成さん(49)は、「本当に感動した。史上最強のチームを相手に朝高生の魂の入った果敢なタックルで勇気をもらった。後輩たちにはこの経験を次につなげてほしい」と語った。

 選手たちは試合終了後、同胞たちに向かって深々と頭を下げて礼をした。涙でくしゃくしゃになったその顔をすぐにはあげることができなかった。金監督は、選手たちを一人ひとりねぎらった。そして「みんな気持ちがしっかり入っていたし、よくがんばった。全国に行ってもこれだけ善戦できるチームはない」と自負する。

 一方、東海大仰星の土井崇司監督は、「シンプルの中にも基本に忠実。気迫もあふれていて非常にいいチーム」と朝高の印象を語った。

 チームを率いてきた鄭圭哲主将(3年)は、「負けたのは悔いが残るけど、自分たちがやってきたことをしっかりできた。チーム全体、とくに3年生の22人が一つになってここまで来られたことを誇りに思う」とすがすがしい表情を見せた。

 2年生ながら唯一スタメンで出場した高健二選手は、「今日の決勝で朝高の底力を見せることができたと思う。気持ちで負けずに、泥臭さをもっと出していけばどんな相手にも勝つことができる。先輩たちが果たせなかった借りは来年、必ず返す」と雪辱に燃えていた。

 「無から有」を生む大阪朝高ラグビー部の「花園」へのさらなる挑戦は続く。(文=金明c記者、写真=盧琴順記者)

[朝鮮新報 2006.11.15]