〈同胞法律・生活センターPART3 J〉 住まいサポート編−生活空間の確保− |
Q 生活空間の確保は、社会的存在としての人の経済的かつ精神的な自立と結びつくばかりか、安心と安定のバロメーターでもある。「住」は、人が生きるうえで、最も重要とされ3要素のうちのひとつであるが、日本では誰もがそれぞれの持つ条件や希望に添った生活空間を確保しているとは言い難い。国や地方自治体、業者の取り組みはどうなっているのか? A 高齢者、障がい者、一人親家族、外国籍住民、DV被害者、ホームレスなど社会的に弱い立場にある者ほど家や部屋の確保が困難だとされている。 とくに外国籍住民への入居差別は、戦前から今もって解決できずにいる根の深い問題であるばかりか、国や行政によって長い間、放置され続けてきた深刻な社会問題である。事実、大阪である同胞が入居拒否を理由に部屋のオーナーを相手取り起訴し、現在も裁判が進行中である。入居差別により、泣き寝入りを余儀なくされたり、諦めのため息をついた同胞たちも少なくないはずである。人権を無視し、住民として外国籍住民を受け入れようとしないこのような事態を長い間私たちが黙って見過ごしてきたわけではもちろんない。しかし、1980年代以降の出入国管理および難民認定法の改正によって受け入れた中南米の日系人、難民など多くのニューカマー外国人が日本に渡ってくるようになるまで社会的問題として提起され、一般に認識されることは、あまりなかったと言える。 1990年代後半以降、外国籍住民が抱える問題や彼らを取り巻く状況について話し合う場として、自治体による外国人会議がさまざまな地域で設置され、自治体へ向けこの問題の解決を促す提言が出されるようになり、外国籍住民の入居問題は行政、業界などが解決に向けて行動を起こさざるをえない事態となった。 川崎市では、2000年外国籍市民代表者会議などの提言、調査結果を受け、市が住宅条例を制定し、「川崎市住宅支援制度」を立ち上げ、日本で初めて自治体独自の保証人制度を実施するに至らせた。また、神奈川でも2001年外国籍県民かながわ会議の提言を受け、神奈川県が外国籍県民入居支援制度を立ち上げ、外国籍県民の住まいに関する支援を充実するために大きな役割を果たすべく「かながわ外国人すまいサポートセンター」設立の基盤を構築した。横浜市でも2004年「民間住宅あんしん入居事業」を立ち上げ、保証制度を実施した。 川崎の制度は、まちづくりを、横浜市は、福祉を基本ベースに立ち上げられたという事情から、多少の違いはあるが、内容的には大枠で一致する。この制度は、外国籍住民だけでなく高齢者、障がい者、一人親家族、生活保護受給者、ホームレスなどを対象に賃借人が家賃の30%を賃貸契約時に支払い、2年間の保証をするシステムである。横浜市の制度は、とくに支援を要する人たちについては保証料の優遇もあり、内容的にも非常に充実している。川崎市の制度も保証対象を高齢者、障がい者、外国人に限っていたが今年度から対象を大幅に広げた。 また、国でも(国土交通省)高齢者、障がい者、外国人および子育て世帯が入居限定を受けている現状を踏まえ、民間住宅への入居を困難とする住民たちへの新たな事業である「あんしん賃貸支援事業」を展開することとなった。 この事業は、国が地方自治体、不動産業者などと協力し、民間賃貸住宅の登録制度を設け、その情報提供を行う。インターネットなどで検索した物件を登録業者を通して契約をするという新しい試みで、全国の地方自治体を募り、来年度から本格的に実施される。また、言葉の問題や日本での家の借り方、契約手続きの順序、生活の仕方、守るべきルール、マナーなどニューカマー外国人が最も困難とする問題を乗り越え、入居手続きなどが速やかに行われるよう国際交流団体などの地方公共団体、NPOなどとも連携する。この制度において、外国籍住民は、制度利用対象者のみならず、登録オーナー、登録業者にもなることができる。 このように、国や地方自治体がNPO、業者、オーナー、外国籍住民と協力、協働しながら住民の要望や希望に応えていくことは、これからの行政のあり方を考える意味でも重要な要素と言えよう。しかし、このような時代の流れを作り、実践してきたのは、誰でもなく、私たち自身であるという自負も決して忘れてはならない。 権利は、命を授かった全ての者に保障されなければならない。しかし、私たち在日コリアンにとって権利とは戦いの中で獲得するもの以外、何ものでもない。(「安、同胞法律・生活センター住まいサポート部責任者) ※同胞法律・生活センターでは「お部屋探し応援隊!」活動を行っています。進学、就職、転勤などによる引っ越しが多い季節となってきましたが、当センターにご連絡いただければ、不動産業者、大家さんの協力を得ながら、物件探しをお手伝いします。ご希望に添う物件を迅速に見つけるためにもぜひご利用ください。なお、同胞の住まい探しに協力してくださる家主の方、不動産業者の方も募集しています。ぜひ同胞法律・生活センターまでご連絡ください。TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429。 [朝鮮新報 2007.3.5] |