高嶋伸欣教授の講演を聞いて 民族教育の尊さ 世界に発信を |
民族学校は、私たちの心のよりどころであり、さまざまな活動の拠点であるといえる。 今、世界各地に朝鮮人の移民がおり、その数は定かではないが550万、600万人ともいわれる。 民族としての誇りは言葉と文字であり、海外に住む同胞たちにとってはなおさらである。
今日、言葉と文字とともに民族性が失われつつある。昨年10月、東京での李玉禮創作人形民展に来られた在米同胞、金仁東(72)、金銀淑(68)夫妻は38年前渡米。3人の息子がいるという。その息子たちが母国語を話せない。すべてが自分の責任である。…民族固有の人形を在米同胞たちにも見せてあげたいと感想文に記した。 このように私たちは、世界のどこに住もうとも、朝鮮民族であり、言葉と文字は必要であろう。 私は現在、尼崎東朝鮮初級学校の近くに住んでいて学校に立ち寄ることが多い。校庭の花壇に色違いの草花を植え替えたり、その育成を眺めたり、カメラにも収める。 在校生に少しでも慰めになればとの思いからである。 当校は、JR尼崎駅から13分程度。周囲には日本の小学校もあり、民家に囲まれた比較的閑静な地域にある。通学の児童、生徒たちは、高学年になると自転車通学になる。 その行き帰りに生徒たちは謂れのない罵声をあびせられる。拉致問題以降頻発している。子を持つ学父母は毎日の安全を祈りながら胸を痛めている。 私はこの惨状を耳にすることが多い。そのたびにうんざりしてしまう。一方、学校周辺の住民は親切で学校の授業参観、運動会、バザーなどの催しには多くの市民が訪れ、協力的である。 このような中にあって、さる3月11日、神戸市勤労会館において、「東北アジアの平和を考えると題した講演会があった。 「拉致問題で歪む日本の民主主義」をテーマに講師の高嶋伸欣さん(琉球大学教授)が話された。同氏は著書の中で「石を投げるなら私に投げよ」と述べられているが、この日の講演でも、「在日朝鮮、韓国人が求めるのは、いざとなったら、理不尽な攻撃をしかける者と在日の人たちの間に割って入り、盾となって在日の人々に危機が及ぶのを防ぐ人々の出現ではないのか、日本の民主主義と拉致問題の解決のために何が必要であるのか」について力説された。 会場には、日本の関係者、多くの市民ら、同胞たち100余人が参加した。その会場において、神戸朝高生の李美蘭さん(2年)は、次のようにアピールした。 「私は神戸で生まれ、神戸で育った在日3世です。拉致事件以降、私たち在日がとても住みにくい日本となってしまいました。現在、一番のターゲットにされるのは在日であり、私たちチマ・チョゴリを着た女子生徒たちです。電車に乗ればいつもジロジロ見られ、時折チマ・チョゴリの裾が少し触れただけで手で払われたりもします。最近、チマ・チョゴリを着る生徒がめっきり減ってしまいました。私はそれがすごくショックだし残念に思います。 もっと辛かったのは、今年の3年生が祖国への修学旅行で新潟まで行ったにも関わらず、急に日本政府は『万景峰92』号の入港を禁止してしまったことです。私はまだ祖国へ行ったことがありません。来年には行けるのだと楽しみにしています。そのためにコツコツとお金を貯めています。 私たちに何の罪があるというのでしょうか。『万景峰92』号は祖国につながる人道の船なのです。 滋賀では朝鮮学校にまで警察の手がのびており、神戸市内の朝鮮学校の校門にペンキがかけられています。 でも、このような嫌なことばかりではありません。優しく手をさしのべてくださる日本の方々もいます。このような日本の方々がいるかぎり、きっと真の友好の日が訪れるものと信じています」 この女生徒の切実なアピールに対し、参加者は熱い拍手を送った。 今日、兵庫県下の同胞の怒りの目は、兵庫県警の不当な弾圧に向けられている。日本当局は在日朝鮮人に対する政治弾圧をただちに止めるべきである。 私たちは、何としても民族教育を守り、維持発展させていかなければならない。そのためにも民族教育を担う次世代が、その尊さを世界に発信してほしい。(李大煕、社協中央顧問) [朝鮮新報 2007.4.6] |