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〈同胞法律・生活センターPART3 L〉 子の名前

 「少子化」が深刻な問題になっています。近い将来、労働生産人口や年金制度の担い手の減少が予測され、日本の社会保障制度の存続に関わるとされています。そのため、少子化社会対策基本法や次世代育成対策推進法などが制定され、子育て支援のための環境整備が求められています。これはこれでよいのでしょうが、個人的には少子化と社会保障制度の存続を直結させる考え方には疑問で、そんな捉え方だからこそ、某大臣の「女性は産む機械」などの発言も飛び出すのだと思います。

 同胞社会も少子化とは無縁ではないようです(表参照)。ここ5年間の統計をみても、父母ともにあるいはいずれか一方が同胞である「同胞の子」の数が9453人から5741人まで約半分近く減少していることがわかります。この原因が、世間一般に言われる晩婚化、未婚化なのか、あるいは「格差社会」の影響により、(同胞の場合はもっと深刻ですが)若い世代が不安定な地位と雇用条件で就労せざるをえないため子を持てないのか、同胞との出会いが少ないからなのか、さまざまな角度からの分析が必要でしょう。しかし、このままではここ数年内には同胞の出生数は死亡数を下回ることになります。帰化する人の数が年間1万人を越え、また特別永住者の数が毎年1万人ほど減少していることなども踏まえると、同胞社会の少子化は民族性の継承のみならず、在日朝鮮人運動の主体的力量の減少という同胞社会の根幹に関わる非常に重要な問題といえるでしょう。

 前置きが長くなりましたが、前回に引き続き「子の出生」に関連する問題を取りあげます。今回のテーマは名前です。

 Q 日本人妻との間に子がいます。その子の出生届の際に、役所で「子の名前の漢字『榮』は人名常用漢字の範囲外なので訂正するよう」に言われ、別の漢字「栄」にしました。ところが、日本国籍を離脱し新規に外国人登録をするときに、子の名前を当初の「榮」にしようとしたところ、できないと言われました。今となっては私と同じ朝鮮籍なので人名常用漢字など関係ないと思うのですが、訂正の方法はありますか?

 A たしかに、朝鮮や中国、台湾などのように本国法上姓名を漢字で表記する場合、日本人に対して通常適用される常用漢字や人名用漢字の範囲は関係ありません(1981年法務省民事局通達第5537号)。同胞の場合、この範囲外の難しい漢字表記の名前でも出生届は受理されます。

 ところが、相談者の子は母親の日本国籍も合わせ持ち、母の戸籍に「子」として記載されるため、訂正を求められたのです。相談者のいうように、日本国籍を離脱したので関係はないように思われます。しかし、出生届と外国人登録上の名前の表記が異なることで後々に本人の同一性が問題になることも考えられ、それを避けるためにもやむをえないでしょう。

 名前の変更は、原則としては本国政府が発行する「名の変更」を証明する書類を求められます。不当ではありますが、日本政府は未承認を理由に共和国の法律を一切認めません。共和国で「名の変更を証明する」書類を法務省は認めないと思われます。結果として、相談者の子の外国人登録上の名前を訂正するには、数年後に日本の家庭裁判所で名前の変更の申し立て(永年使用を理由とする)を行う方法があります。(金静寅、NPO法人同胞法律・生活センター事務局長)

  @同−同間の出生数 A父:同−母:同の出生数 B父:日−母:同の出生数 @+A+B=同胞の出生数 死亡数 性別死亡数(前が男性、後ろが女性)
2000 2,681 3,427 3,345 9,453 4,483 2,737/1,746
2001 2,390 3,437 3,204 9,031 4,513 2,781/1,732
2002 2,118 3,117 3,141 8,376 4,491 2,756/1735
2003 1,876 2,965 2,911 7,752 4,526 2,704/1,822
2004 1,777 1,861 2,103 5,741 4,446 2,653/1,793

 在日同胞の出生死亡統計(厚生労働省大臣官房統計情報部編「人口動態統計」に基づき作成、※同:同胞、日:日本人)

[朝鮮新報 2007.4.9]