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報告集「トンポ高齢者を対象としたレクリエーションの実際と共有」

同胞福祉活動の一助に

 「同胞の生活と権利シンポジウム」が各地で行われたのは今から7年前のこと。愛知でも1999年7月に名古屋国際センターで行なわれた。テーマは「結婚、就職、福祉」であった。

 この年の12月、シンポに関わった有志で「愛知同胞福祉連絡会」を発足させ、2カ月に1回ずつの定例会を始めた。何をなすべきか。介護保険導入前、高齢者福祉といえば自立支援という観点よりも、特別養護老人ホームの建設という認識が強かった。焦る必要はない、どうせ遅いスタートなのだから、情報交換や学習会などできることからやろうと連絡会の方向付けがなされた。

 そして、愛知朝高での福祉セミナー、介護教室などを企画したり、福祉有資格者連絡会の発足を呼びかけたり、あいちムジゲ会の支援など、草の根的な活動をしてきた。

 シンポ以降、愛知県同胞社会での福祉に関する動きをネットワークでつなげることはできないか、と福祉連絡会でたびたび意見が交わされた。なかなか決断には至らなかったが、2002年9月17日の「朝・日平壌宣言」が私たちを大きく揺り動かした。在日としての日本での基盤作りへの焦り、「共生」を理念とするNPO法人の意義などからNPO法人取得を決意した。

人材不足のままスタート

 在日同胞高齢者、障がい者への福祉活動を主な活動内容に定めたNPO法人コリアンネットあいちが誕生して、今年の2月(設立総会)で満4年を迎えた。

 介護保険事業として始めたデイサービスセンター「いこいのマダン」も10月に4歳の誕生日を迎える。

 「いこいのマダン」開設において、最も苦心した事は人材確保である。

 経験者は誰一人といなかった。愛知同胞福祉有資格者連絡会に参加していた介護福祉士志望の一人が試験に合格するかどうか、一か八かの状態であった。そして彼女には、合格と同時にデイサービスセンターの生活相談員と介護保険請求業務が課せられ、大きな精神的、肉体的ストレスとなった。

 また看護師も最後の最後まで定まらず、週に1度の休みの日に小さな子ども連れで勤務してもらう不安定な状態であった。

 同胞社会福祉活動の過程は、在日朝鮮人運動において初の行路であり、さまざまな教訓を与えてくれている。

 私たちは「福祉」について、少なくとも1999年までは語ったことがなかった。ましてや、福祉分野の人材育成も念頭になかった。在日同胞社会においての福祉理念の構築、福祉理論の確立、実践の試みなどは「無」に等しかった。日本の社会が高齢化を憂い、介護保険を立ち上げるなかで、総連も意識するようになった。

 「いつか統一した国に帰る」と日本の制度に背を向けて生きてきた1世の時代から、同胞社会は完全に世代交代し、(日本に永住せざるをえない)私たちが、日本の制度に前向きに対応するようになった。

民族性重んじた福祉体系

 私は今、在日同胞社会の福祉を考えるうえで大切なのは、民族性を重んじた福祉体系作りだと思う。日本の制度を利用しながら、在日コリアンのアイデンティティ、オリジナリティを日本の社会に発信し、理解と協力を得ていくこと。真の「共生」は限りなく朝鮮人として堂々と生きていくことだと思う。

 そして、各地の同胞生活相談綜合センターを限りなく活性化させることに、その基盤があると思う。つまり、介護保険事業所としてだけではなく、すべての同胞生活相談綜合センターが同胞高齢者、障がい者、児童への支援マダンになることである。

 コリアンネットあいちでは、2年間にわたり愛知同胞福祉有資格者連絡会学習会を後援、主催してきた。昨年はとくに、「いこいのマダン」でのレクリエーション紹介を含めた報告集を発行した。

 なぜこのような学習会を催し、情報を公開するのか。それは、同胞障がい者や高齢者、子育て真っただ中の家族たちのために力になりたい福祉関係に携わる同胞有資格者が全国で活動していて、その人たちが提供するものを伝えられる力が同胞生活相談綜合センターのネットワークにあるからだ。トンポの事業所に来られない、またそのような事業所が近くにない1世の同胞たちがたくさんみえ、その方たちにも同胞福祉の輪に参加する権利があるからであり、その方たちに提供できる実績を積み上げたからである。

 日本の社会は、自立支援、地域福祉へと体系化が始まっている。同胞社会はどうあるべきか。愛知同胞福祉有資格者連絡会の学習会に賛同してくれた有資格者のみなさんを中心に、今、同胞福祉の概念化、体系化の作業が始まった。

 私たちの報告集がその活動の一助となり、現場でのヒントとなり、次世代への贈り物になるよう、まだまだ未熟ではあるが、全国のセンターで活用されることを望みたい。(金順愛、NPO法人コリアンネットあいち事務局長)

〈内容について〉

 学習会当日の発言をすべて収録し、提言内容、資料、いこいのマダンで行われているレクリエーション20種類を写真と解説、在日朝鮮人画家・洪永佑氏の民俗画の塗り絵で紹介している。

【テーマ】トンポ高齢者を対象としたレクリエーションの実際と共有

【提言内容】

 ・精神保健福祉の現場で働いてきた在日2世として(精神保健福祉士 姜和代)
 ・同胞障がい者(児)とその家族に私たちが今できる事(静岡ピアサポートセンター障がい者ケアマネージメント従事者 李恵順)
 ・ケアに携わる人の自己管理(メンタルマネージメント)−よりよいケースワークのために(東京都福生市子ども家庭支援センター相談員 辺貞姫)

【発言記録】高齢者グループ・障がい者グループ

【資料】精神障がいリハビリテーション、ウリハッキョでの「特別支援教育」一考

 頒価 200円、問い合わせ TEL 052・910・3309、FAX 052・991・0092

[朝鮮新報 2007.4.16]