〈同胞法律・生活センターPART3 M〉 胎児認知 |
離婚後、300日以内に生まれた子が問題になっています。法律上、離婚前の婚姻中に妊娠した子として前夫の子との推定を受けるからです。子の父親は前夫となってしまい、真の父親との親子関係が証明できなくなるので、出生届を出さないケースもあり、その結果、そのような子につき戸籍が作成されないため、就学、進学、就職や旅券の取得などその後の社会生活に支障をきたすなどの問題が生じています。民法改正の動きがあったものの、「離婚を促す」(?)とか「不倫を助長する」(?)といった保守派の壁に遮られてしまいました。 家庭内離婚や長らく別居している夫婦、家出をしたり離婚に応じようとしない暴力夫もおり、さまざまな事情で法律上の離婚ができないまま事実上離婚状態というケースも非常に多いのが現実です。「法律婚」という制度そのものが見直されているのかもしれません。 同胞法律・生活センターにもこれに類似した相談が寄せられています。センターの性質上、ニューカマーの同胞からの相談も多いのですが、今回は関西在住のニューカマーの女性からの相談を紹介します。 Q 夫の暴力から逃れるために来日し、知り合いの飲食店でアルバイトをしています。超過滞在です。現在、結婚を考えている日本人男性の子を妊娠中で、胎児認知をしてもらうことになりましたが、区役所でできないと言われています。どうしてですか? A 胎児認知とは、婚姻関係にない女性の胎内の子について、真の血縁上の父が親子関係を認める行為です。相談者の女性は法律上は婚姻中で、妊娠中の子は韓国にいる夫の子としての推定を受けます。そのため、子は胎児認知を受けることができないのです。 相談者のように、外国籍の女性でしかも超過滞在である場合、胎児認知を受けないままに子が生まれると、子は母と同じ国籍を取得するものの、在留資格を得ることができず母と同じく超過滞在となり、退去強制の対象となります。しかし、日本人の父から胎児認知を受けることで子は出生により日本国籍を取得(母の国籍も取得し重国籍となる)するので在留資格等の問題は生じません。子の福利からもまた安定した法的地位という観点からも、子が胎児認知を受けることは非常に大事です。 では、子が胎児認知を受けるためにはどうすればよいのでしょうか? 相談者にとっては大変困難なことかもしれませんが、夫との離婚を成立させることです。また同時に、夫と子の間に「親子関係不存在」確認の訴えを提起し、確定の審判等を得る必要があります。相談者が超過滞在で、夫との話し合いのため帰国が困難な状況でもあるので、多少時間や費用がかかりますが、弁護士を通して離婚訴訟などを提起することもできます。 今の段階では区役所では胎児認知はできませんが、胎児認知届を提出すると「不受理」の証明書を交付してくれます。上で説明した手続きが進行中で子が生まれた場合、離婚が成立していなくても「親子関係不存在」の審判等が確定すれば、それを区役所に提出すると先の「不受理」処分を撤回し、その時点に遡って胎児認知届が受理されることになります。子は日本国籍を取得し、子を筆頭者とする単独の戸籍がつくられます。(金静寅、NPO法人同胞法律・生活センター事務局長) ※NPO法人同胞法律・生活センターでは、暮らしをテーマにした各種の講座、学習会を企画し、そこに適切な講師を派遣します。地域の同胞を対象にした講座などの開催を検討されている総連本部、支部の担当者のみなさん、お気軽に事務局までお問い合わせください。TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429。 [朝鮮新報 2007.4.23] |