〈同胞法律・生活センターPART3 O〉 相続手続 |
センターがサポートする相談の中で、一番多いのが相続です。もともと相続は、遺産分割をめぐり兄弟姉妹が骨肉の争いを繰り広げて家庭裁判所で調停を行うこともよくあるなど、複雑になりがちで、この点は同胞も日本人も大きな違いはないようです。 しかしながら、在日同胞の場合、相続人が日、北、南に離散していたり、また相続財産が南の故郷にあったりと、相続人の確定や手続に必要な書類を準備するのに手間取ることがあります。また、南北の和合が進み官、民ともにさまざまな分野で交流が深まっているとはいえ、分断国家であるがゆえの法、制度上の壁や、朝・日間の非正常な政治状況が立ちはだかることもあります。同胞の相続が複雑で、一筋縄でいかないのはこのようなことも背景にあります。今回は相続に関する相談で、非常によくあるものをご紹介します。 Q 朝鮮籍のオモニが亡くなり、兄弟4人でオモニ名義の土地と預金を処分し分割することにしました。長兄が朝鮮に帰国していますが、相続手続はどのようにすればよいのでしょうか? A 死亡したオモニが朝鮮籍で本国法を共和国法とすると、実際には準拠法として日本民法により処理されることになります。相続人に朝鮮や南の故郷で暮らす人がいてもそれ自体、手続きには関係ありません。 まずは、不動産や預金をどのように分割するのか、相続人の間で話し合う必要があります。そしてその合意事項につき遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名、実印の押印のうえ、印鑑登録証明書、全員の外国人登録原票記載事項証明書(備考欄に死亡したオモニの名前あるいは親子関係について記載してもらうこと)、申述書(これは遺産分割協議をおこなう相続人4人以外に、相続人がいない旨を申述します)を添付します。 朝鮮にいる長兄にも遺産分割協議書に署名、実印で押印してもらわなければならないので、朝鮮の該当機関発行の「居住地証明書」「印鑑登録証明書」が必要になります。この2つの証明書については、総連中央本部を通して申請します。申請の際には、朝鮮にいる相続人の氏名、生年月日、現住所、帰国年月日などが必要です。 死亡したオモニについては、閉鎖済みの外国人登録原票記載事項証明書(本籍地を記載してもらい、備考欄には世帯構成、住所歴なども記載してもらってください)、また南の本籍地に戸籍があればそれも準備します。無い場合は、「戸籍が無い」旨の証明書を本籍地の面事務所などで発行してもらいます。 そのほか、遺産分割の対象である不動産については登記簿謄本(法務局で発行)、不動産の評価証明書(市町村役場で発行)が必要となります。(金静寅、NPO法人同胞法律・生活センター事務局長) ◇ ◇ 「こちら同胞法律・生活センター」のコーナーもすでにパート3となり、次回に向けパワーアップのためのお休みをもらうことになりました。 これまでセンターの実際の相談の中から、私たち同胞にありがちな問題や、「在日ならでは」の固有なもの、ちょっと変わった内容の相談などをアレンジして解説してきました。「新報を読んで…」と自分自身や家族の相談を寄せる人も多く、紙面を通じセンターの利用者が増え事務局としてはうれしいかぎりです。 今年の12月には開設10周年を迎える同胞法律・生活センター。この間、私たちと祖国を取り巻く内外の状況は大きく変化し、また同胞社会も変化しています。センターに寄せられる相談も開設当時とは質的にも異なる多様な内容で、同胞の生活上のニーズも多様化していることを実感しています。 今後のさらなる10年を目指し、同胞法律・生活センターは同胞のみなさんの生活に寄り添った活動を拡充させていきたいと思います。 ※NPO法人同胞法律・生活センターでは、暮らしをテーマにした各種の講座、学習会を企画し、そこに適切な講師を派遣します。地域の同胞を対象にした講座などの開催を検討されている総連本部、支部の担当者のみなさん、お気軽に事務局までお問い合わせください。TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429。 [朝鮮新報 2007.521] |