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「差別はありません」

 ヘイトクライム(憎悪犯罪)という言葉がある。ある特定の人種、民族、宗教などに対する偏見、差別、蔑視感情などが元で起こされる犯罪行為(とくに暴行、脅迫、殺人などの暴力犯罪)を指す。このような犯罪が起こる根底には、無知とそれを許容、増長する社会構造がある。9.11テロ直後、ムスリムがその憂き目にあったのは記憶に新しい。西欧諸国では、この犯罪はその他の犯罪より重い刑が課される。

 近年、日本では話したこともない、見たこともない外国人に対する「恐怖」があおられ、憎悪と排除の対象になっている。「罪」よりも「人」が憎まれている。マイノリティは、その理不尽さを懸命に訴えるが日本政府は対策を放置したままだ。だから、また「恐怖」が増幅されてしまう。

 「掛け金も掛けていなのに年金を貰おうとする輩がいる」という話がインターネット上で「怪談」として紹介されていた。無年金のハルモニたちのことだ。「掛けたくても掛けられなかった」ことが無視されているし、ハルモニたちの「ただ年金が欲しいのではなく差別をなくしたいだけ」という気持ちが踏みにじられている。さらには「『ハルモニ』はもはや差別用語になるな」と言ってのける神経までも。嫌悪のせいで背景が見失われている。

 国連人権理事会は、第一歩として差別を認めるよう勧告しているが、それでも日本政府の主張は変わらない。「実態を調査することはない」ゆえに「わからない」ので「差別はありません」と。この理屈に「恐怖」する。(丘)

[朝鮮新報 2007.521]