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「遺族とともに−遺骨問題の解決へ」29日に全国集会 遺骨調査の「モデルケース」に

市民、行政、寺院、企業が力合わせ

 昨年夏、19人の遺族を招いて全国27カ所で集会を開き朝鮮半島出身者の遺骨問題の解決を訴えた「韓国・朝鮮の遺族とともに−遺骨問題の解決へ」。今年は岐阜県の飛騨神岡、高山でフィールドワーク(28日)を行い、名古屋で全国集会(29日)を開催する。遺骨調査、返還の「モデルケースになれば」と全国連絡会の関係者は思いを語る。

民間レベルは進展

昨年、北海道・猿払村で行われた大学生、市民らによる遺骨発掘作業

 朝鮮半島出身の強制連行犠牲者の遺骨調査は、2004年12月、「韓日首脳会談」での合意を受けて始まった。

 しかし、戦後60余年、調査は難航している。日本政府の非人道的で差別的な対応に批判が集まった。厚生労働省が祐天寺(東京都目黒区)に委託した遺骨の多くが偽物だった事実も判明し、「遺骨協議」は停滞している。

 だが民間レベルでの調査は着実に進んだ。戦争責任を問う日本の市民団体、真宗大谷派(東本願寺)、浄土真宗本願寺派(西本願寺)、曹洞宗などの宗教団体、強制連行に関与した一部企業などが遺骨調査に乗り出し、多くの情報が集まった。北海道では住民、行政の協力のもと、若者らによる発掘作業も行われた。

 今年の集会は、昨年の取り組みを踏まえたうえで、実際の遺骨調査と遺族探しについての方法や経験を学んで共有し、全国に広げようとの狙いがある。飛騨、高山が選ばれたのはその「モデルケース」になりうるからだという。

遺骨約80人分

 岐阜県飛騨市の三井鉱山神岡工業所(現・神岡鉱業株式会社)では鉛、亜鉛、銀などが採掘された。太平洋戦争期には大量生産が命じられ、これに多くの朝鮮人が駆り出された。1944年には全労働者約6500人のうち20%が朝鮮人だったという(現地研究者調べ)。また、周辺でのダムや水路建設にも動員され、多くの犠牲者が出た。朝鮮解放後も同地域に住みついた朝鮮人が多かった。

 宗教団体、市民団体などの調査によって飛騨、高山周辺の寺院から約80人分の遺骨がみつかった。強制労働の犠牲者やその家族、解放後に引き取り手がなく寺院に預けられた朝鮮人の遺骨などだ。地元行政や神岡鉱業の協力により40余人の犠牲者の情報も確認された。

 全国連絡会では、南朝鮮の日帝強占下強制動員被害真相究明委員会などに照会し、遺族を探し出した。今回の集会には金文奉さんの遺族(67、済州道在住)と、1944年に神岡鉱山に動員され採鉱に従事した金得中さん(81、全羅北道在住)が招かれる。遺族の思いと被害者の体験談を聞く。

人道的に誠意もって

 昨今、朝・日関係は最悪の状況に陥り、過去の歴史をめぐっても北南朝鮮と日本の間に大きな溝が深まっている。遺骨問題に関与することに躊躇する人が多いという。

 地元の研究家・下嶌義輔さん(強制動員真相究明ネットワーク呼びかけ人)は、神岡の寺院に眠っていた遺骨の遺族を探し出し、朝鮮式の祭祀で追悼会を開いたことで、遺族や住職らに感謝された逸話をうれしそうに語る。

 「人道的に、誠意をもって対応すれば、感謝されることはあっても非難されることはない」

 全国連絡会の上杉聰共同代表(アジア・太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ、心に刻む会呼びかけ人)は、飛騨市が資料を提供し、関連企業がフィールドワークでの立ち入りを許可したことなどを挙げ、「市民、行政、寺院、企業が力を合わせて取り組んでいる。こうした取り組みが全国に広がれば」と語る。(李泰鎬記者)

[朝鮮新報 2007.7.23]