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それぞれの壁を乗り越えて

 3日、日本で「沈黙の半世紀」を生きた在日朝鮮人の日本軍「慰安婦」被害者・宋神道さんが、日本政府を相手に謝罪と補償を求め裁判を起こした10年間のたたかいを記録した映画「オレの心は負けてない」の試写会が行われた。

 劇中にたびたび登場する木野村照美さんは、15年前に宋さんと出会って以来、「在日の慰安婦裁判を支える会」でともにたたかってきた。

 炭鉱の町、福岡・田川市の生まれ。父親が炭鉱夫だったがゆえに「朝鮮人、朝鮮人」と周囲の子どもたちからいじめられた。「本当は日本人なのに」。ある日、その現場を目撃した朝鮮人炭鉱夫に助けられた。以来、子どもたちのいじめは静まった。しかし彼女の胸に残ったのは、「なぜ日本人の私が朝鮮人に助けられなければならなかったのか」という問いだった。同時に自身の中にある「朝鮮人への蔑視」を自覚した。10歳の時だった。

 30歳の時、日本軍「慰安婦」問題を知る。幼少期に感じた朝鮮人に対する「差別意識の自覚」という苦い記憶が木野村さんを奮いたたせた。

 しかし、宋さんとの間に「越えられない壁」を幾度となく感じ、喧嘩もした。

 「日本人はまた裏切るかもしれないという宋さんの不安な気持ちが、そばにいればいるほど痛いほど伝わってきた」

 2003年、宋さんの裁判は終わった。敗訴。現在も宋さんから電話がくると、仕事を休んでも仙台まで会いにいく。「宋さん、私のこと娘みたいなもんだって」。

 それぞれの壁を乗り越えて、たたかいは今も続いている。(陽)

[朝鮮新報 2007.8.6]