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「韓国・朝鮮の遺族とともに−遺骨問題の解決を」全国集会

「遺族に誠実な対応を」

 「韓国・朝鮮の遺族とともに−遺骨問題の解決を」全国連絡会が主催する全国集会が7月29日、名古屋名進研ホールで行われ、関係者ら約300人が参加した。集会では、各団体の事業報告と今後の課題について話し合われ、決議文が採択された。また、集会に先立つ7月28日には岐阜県飛騨神岡、高山地区でフィールドワークが行われた。

体験者の証言も

金文奉さんの遺骨を受け取る金大勝さん

 集会では、全国連絡会の内海愛子共同代表があいさつ。28日のフィールドワークで1体の遺骨を遺族に返すことができたと述べながら、「遺骨の収集」と「遺族への援護」が義務化されていないことにより、旧植民地出身者に対する謝罪と遺骨返還が大幅に遅れていると日本政府の対応を非難した。

 続いてあいさつした南朝鮮の「日帝強占下強制動員被害真相究明委員会」の朴聖圭事務局長は、日本政府と企業のより積極的な協力を促しながら、この問題は市民団体の協力が欠かせないと訴えた。

 集会には過去、神岡炭鉱で労働を強いられた金得中さん(80)も参加し、自らの体験について語った。

 金さんは、食べるものも満足にない状況で、もっとも危険な場所で働かされたと述べながら、「『たくさん掘ればたくさんカネをやる』という言葉を信じて一生懸命働いたが、布団代や靴代などの雑費を差し引かれ、手許にはいくらも残らなかった」と証言した。

 基調報告を行った全国連絡会の上杉聰共同代表は、飛騨、高山周辺の寺院調査により約80体の遺骨が確認されたことに触れながら、今後の展望について語った。

証言する金得中さん

 上杉共同代表は、曹洞宗が中心となって行った飛騨市での調査で、戸籍受付帳が大量に発見されたことは大きな意味を持つとしながら、「政府の責任で戸籍記録を整理収集させるための運動を展開すれば、朝鮮人労働者の死亡情報が相当程度明らかになる展望が開ける」と強調。政府、企業に対し情報公開を強く求めた。

 集会では、曹洞宗、真宗大谷派をはじめとする各団体の活動も紹介された。

 各団体の代表らは、「生きていた人の魂は遺族に返さなければならない」と一様に述べながら、市民団体と宗教団体が心を込めて遺骨調査を行えば、遺族の元に遺骨を返すことができると指摘。大事なのは、遺族の気持ちに誠実に応えられるかどうかだと強調した。

 集会では、決議が採択された。

 決議では、@朝鮮人に対する労務動員は1939年7月4日の閣議決定後、政府の責任で実施されたものであり、遺族の悲痛な思いに対して遺骨返還という形で応えること、A遺骨返還のための情報は、政府が地方自治体に委託している戸籍関係書類に多く含まれており、政府はそれを自覚して自身の責任で情報収集作業に尽力すること、B遺骨の返還時には、遺族に死亡の経過を報告できるよう政府の持つ資料を公開したうえで、企業や地方公共団体にも情報提供を依頼すること、C遺骨の返還時には、遺族に対して政府が謝罪するとともに、渡航費や祭祀費などの負担を、誠意を持って負うこと−などを求めた。

「まずは真相究明」

 7月28日に行われたフィールドワークでは、徴用で日本に連行され、41年4月に神岡町のダム建設中に亡くなった金文奉さん(済州道出身、当時52歳)の遺骨が、甥の金大勝さん(66、済州市在住)に手渡された。遺骨はそれまで両全寺に保管されており、66年ぶりに故郷に帰ることになった。

 寺で献花を終えた金大勝さんは、「一日も早く遺骨を故郷に持ち帰りたい。行方不明になったとばかり思っていたが、遺骨を見つけることができて本当にありがたい」と語った。

 そもそも、金文奉さんの骨箱に本籍地が記されていることは昨年10月、「強制動員真相究明ネットワーク」の調査によって明らかになった。

 神岡では、植民地時代に炭鉱労働やダム建設に従事した約30人の朝鮮半島出身者の死亡記録が確認されており、飛騨、高山周辺の寺院では約80体の遺骨も発見された。遺骨の中には、幼い子どもと見られるものも含まれているという。

 愛知強制連行真相調査団事務局の金順愛さんは、「遺骨の返還とともに何よりも重要なのは、真相が明らかにされるべきだということ。真相が究明されてこそ、謝罪と補償があるということを基本に、すべての問題を包括的に解決していきたい」と述べながら、すべての団体が団結して根本的な問題解決に取り組むべきだと強調した。(鄭尚丘記者)

[朝鮮新報 2007.8.10]