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夏のコリアン医療、福祉セミナー07 実情と課題を確認

「同胞医療」、どう向き合う

 在日本朝鮮人医学協会とKS(コリアン学生)医療、福祉全国連絡ネット主催による、夏のコリアン医療、福祉セミナー2007が8月25〜26日、熱海ビレッジ(静岡県熱海市)で開かれた。今年2回目となるセミナーは、若手同胞医療人と在日医療、福祉系学生による全国的な交流会でもある。医協関係者を含む約70人が参加した。「同胞医療人としての心構えをしっかりと育んでもらえれば幸い」と、医協中央・李大国会長は語った。

「ベスト尽くす」

シンポジウムでは活発な質疑応答が行われた

 セミナーでは、高英成・京都第二赤十字病院心臓外科部長を講師に招いて「最近の心臓血管外科の現状と展望」についての特別講演が行われた。

 講師は、京都府立医科大学を卒業(1981年3月)後、東京女子医科大学日本心臓血圧研究所に入局、京都第二赤十字病院心臓血管外科の立ち上げ(1994年1月)に寄与した。学生の頃は、留学同の活動にも精力的に取り組んでいた。同胞医療人の中でも心臓外科医は希少な存在である。

 講師は、心拍動下バイパス術(OPCAB、心臓鼓動下において新しく血液の通り道を作る手術で、人工心肺を用いたときと比べ、より患者の負担が減る)、弁膜症手術、心房細動に対する手術などについて、日々の臨床の中で培った経験と実例をもとに解説した。

 講演の中で講師は、「ベストを尽くすことが大事」と再三にわたり強調した。現場ではもちろんのこと、選んだ道でベストを尽くす姿勢は自己の成長の原動力となり、また地位向上にもつながると述べた。

現状と展望

基調報告をする李大国会長

 シンポジウム「同胞医療の実情と課題について」では、李大国会長の基調報告に続いて、辺秀俊・共和病院院長、姜京富・朝日診療所院長がパネラーとして出演、「共和病院の40年」「学校保健事業に取り組んできた10年間の経験と課題について」言及した。文鐘聲・太成学院大学教員がコーディネーターを務めた。

 李大国会長は北南朝鮮、在日、在米、在中、在ロ同胞医療人による平壌医学科学討論会など、学問探求の活動に触れたほか、医協の活動と在日同胞社会における「地域集中医療」の変化について述べた。

 各パネラーは「同胞医療」の現場を視点に、その発展と同胞医療人として持つべき愛情、真心といった理念について語った。

 姜京富院長は、健康教育(保健教育)の重要性を強調。校医を置けない現状下にある朝鮮学校への取り組みの中で、「校医制」を導入し、学校保健活動を展開した経緯、そして課題について言及した。そのうえで、学校保健における学生たちの可能性やアプローチの仕方を紐解き、キャリアアップを奨励した。

長期「大計」で

 セミナーでは各種交流会や座談会、進路ガイダンスなども行われた。各班に医師たちも加わり意見を交換した。

 互いに医療、福祉の道を選んだきっかけと志を述べ、「同胞を楽にしてあげたい」という学生たちに、医師たちは「先輩」として温かいアドバイスを与えていた。

 どうしたら「同胞医療」と関わっていけるかの問いに、医師たちは地域の同胞社会に積極的に飛び出し、貢献することがひとつの方法であると答えた。女医は結婚できないという「通説」に対する問答もあった。詳細な「統計」が出でくるあたりは専門家集団の特徴と言える。

 留学同中央・趙斗城委員長はセミナーの閉会に際し、日本における医療、高齢者問題は同胞社会にも直結する問題だと指摘し、学生たちに対しここで学んだことをベースに「同胞医療」の現場で活躍を期待していると語った。

 医協関係者はこのようなセミナーは「1、2回の事業では意味がない。10年、20年の『大計』を考えて」おり、「そうしてこそ芽が出るもの」だと述べていた。(鄭尚丘記者)

[朝鮮新報 2007.9.3]