〈同胞法律・生活センターPART4 @〉 より暮らしに密着を 開設10年−多様化する相談 |
新たな生活支援型の活動 同胞法律・生活センターは12月1日に開設10年を迎えます。 誰もが気軽に相談でき、また弁護士をはじめ各分野の同胞専門家が自らの専門知識と技術を同胞社会へと還元する、同胞の、同胞による、同胞のための常設の相談所として活動を始め、これまで延べ7000件を超える相談を受けてきました。 開設当初は国籍、外国人登録、在留資格、相続など、複雑な歴史的背景や本国法が関連する、ある意味「同胞に固有」のものが目立ちましたが、10年間の相談活動を振り返ると相談内容にも変化が見られます。 南の同胞との婚姻が増加し、婚姻手続きや配偶者や子の在留資格、健康保険の加入、里帰り出産、子の就学や、また南で定住するケースもあり、それに伴う日本の外国人登録や在留資格、年金等の手続きに関する相談など、「従前とは異なる」相談があります。 その一方では、「朝鮮バッシング」「制裁」などにより嫌がらせが多く商売が成り立たない、本名では商売ができない、融資が受けられない、自己破産、多重債務も増え、年金や福祉給付金、解雇、求職、夫の暴力や息子の引きこもり、離婚、生活保護、母子家庭の住まい探しや生活資金の融資、老親の扶養など、法律上の解決には馴染まない相談や生活の困窮に関連する相談も増えており、またさまざまな個別の生活課題を抱えている同胞が増えています。 この間、同胞をめぐる内外の状況も大きく変化しました。朝鮮半島においては6.15北南共同宣言以降の劇的に進展した北南の和合により、これまで途切れていた南の故郷との関わりが深まる一方、日本社会においては「拉致問題」を口実とする朝鮮敵視政策により、再び在日同胞の人権と生活が脅かされるようになりました。また長引く経済不況や、続く「骨太の方針」や「痛み分けの改革」なども同胞の暮らしを直撃し、10年間の相談内容の変化にはこのような背景があると言えるでしょう。 今、日本社会では生活に困窮する人々が増え、「ワーキングプア」や「ネットカフェ難民」という言葉もすっかり定着した感があります。先に言及したとおり、在日同胞も同様です。 生活困窮の背景には「格差社会」と「貧困」が背景にあると言われますが、私たち同胞の場合は、これらの背景にさらに根深い民族差別と昨今の日本政府による「制裁」が加わります。そのため、さまざまな理由で何か問題に直面したとき、生活に困ったとき、日本の公的あるいは私的な社会資源をフルに活用しづらい、そのためなかなかそこから抜け出られない、非常に時間がかかるという状況があります。 多様化する相談、そして同胞のさまざまな生活課題に接するとき、目前の問題やトラブルの解決のみならず、相談者の生活全般を視野に入れた長期的な支援の必要性を感じざるをえません。同胞をとりまく状況が厳しくなればなるほど、個別の、同胞の暮らしに寄り添った新たな生活支援型の活動が求められるでしょう。 もちろん、同胞法律・生活センターならではの得意分野、そして限界も踏まえ、日本の社会保障や福祉の諸制度をはじめ、公的、民間の諸団体とも連携しながら同胞が利用できるあらゆる社会資源などについても情報を提供し、実際に利用できるよう、暮らしと密着した活動を行っていきたいと思います。 その手始めに、「連続口座−使いこなせ! How To 社会福祉サービス」を今月22日より実施します。 同胞法律・生活センターは、同胞のみなさんのさまざまな相談から得た経験と教訓をバネに、同胞一人ひとりの権利擁護という視点で今後もがんばります。また本紙面にて連載をはじめることになりました。あわせてよろしくお願いします。(金静寅、NPO法人同胞法律・生活センター事務局長) ※NPO法人同胞法律・生活センターでは、暮らしをテーマにした各種の講座、学習会を企画し、そこに適切な講師を派遣します。地域の同胞を対象にした講座等の開催を検討されている総連本部、支部の担当者のみなさん、お気軽に事務局までお問い合わせください。TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429 [朝鮮新報 2007.9.15] |