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〈投稿〉 東京国際大学教授・下羽友衛先生を偲んで

東ア学生間の平和協力に尽力

朝大創立50周年記念祝賀会でスピーチする下羽教授

 東アジア学生間の平和交流と研究、その実践活動に尽力されてきた東京国際大学教授、下羽友衛先生が10月20日、急逝された。

 今思えば下羽教授との出会いは運命的だった。

 2002年当時、私が東京国際大学大学院で下羽先生の授業を受けていた時、朝鮮大学校と東京国際大学の学生交流の話しが持ち上がった。02年の朝・日首脳会談後、日本社会に「拉致問題」による朝鮮と在日同胞に対するバッシングの風が吹き荒れるなか、4人の朝鮮大学校の学生が初めて東京国際大学を訪れた。その日から5年にわたる朝・日の大学生たちの交流のドラマが始まった。

 両大学の学生たちは「東アジアの平和・日朝間の平和のために学生に何が出来るのか」をテーマに学習会やシンポジウム、共同スタディーツアーや学会での共同発表、展示会など、多様な交流活動を繰り広げた。また交流は海外にも広がりを見せ、03年には南朝鮮の慶熙大学が交流に加わり、06年にはドイツのトリア大学の学生たちが朝鮮大学校を訪れた。07年4月には下羽ゼミ生3人が平壌を訪問し、平壌外国語大学との交流を行なった。

 人と人との出会いから交流が生まれ、相互理解の増進、信頼関係の構築につながることを信念に、下羽先生はアジアの平和のための学生交流に生涯を通して尽力された。先生の配慮で、日本の大きな学会の場で、下羽ゼミ生と朝大生の共同研究発表も実現された。

 交流の過程では、下羽先生の学生交流、平和に対する信念、その行動力に多くの朝大生が影響を受け、自身の交流、学びの糧にしていった。中国、南朝鮮、フィリピンとの学生交流、そして02年からの朝大との学生交流を通し、多くの出会い、学びの場が生まれ、そして多くの学生たちが社会に巣立っていった。

◇      ◇

朝大、東京国際大、トリア大(ドイツ)の国際学生シンポジウムに参加した学生たちと共に(前列右が下羽教授)

 下羽先生をお見送りする場で久々に会ったある卒業生は、「交流を通して在日朝鮮人に対する見方が変わった。これからも広く社会に伝えていきたい」と涙ながらに語った。

 下羽先生と一緒に行ってきたこの交流は、朝・日関係の未来、東アジアの平和構築の担い手の育成という意味で効果的であり、画期的な交流になったと確信している。

 先生は「国際関係がいかに悪化した時でも、学生交流だけは必ず合意できる。朝大との交流は必ず未来の日朝関係に有益である」と述べていた(朝鮮大学校創立50周年記念シンポジウムにて)。

 私は先生との出会いを通じ、学生は未来の財産であり、学生交流は平和の担い手の育成であるということを心の底から実感した。

 下羽先生との出会いから5年。学生たちのたくさんの汗と涙があったこの交流を通し、私と先生との間に大きな約束・夢があった。それは、いつの日か北南朝鮮の学生、日本、在日、東アジアの大学生が一堂に集まり、東アジアの平和のための学生シンポジウムを開くことであった。

 残念ながら下羽先生と一緒にその夢は実現できなかったが、これからも先生の遺志をしっかりと引き継ぎ、無限の可能性を秘めた東アジアの学生交流のドラマを両大学の学生たちと一緒に創っていきたい。下羽先生のご冥福を心よりお祈りする。(宋修日・朝青朝鮮大学校委員会責任指導員)

[朝鮮新報 2007.11.12]