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〈同胞法律・生活センターPART4 F〉 子ども家庭福祉 @−少子化、児童虐待

従前とは大きな変化、子どもと家庭取りまく環境

 今、日本社会では少子化が問題になっています。少子化は急速に進行する高齢化とあいまって、将来の国の労働生産力や経済発展、そして年金など社会保障制度の担い手の減少と深く関連するため、なんとかこれに歯止めをかけようと対策が求められてきました。

 日本では、ここ数年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)が1.26前後で、世界的に見てもかなり低い数字を記録してきました。昨年は景気の回復に伴う雇用改善で1.3台にまで上昇したとのことですが、このまま出生率が増加していくかはまだまだ未知数です。私たち同胞の暮らしの周辺でも、「子を持つ経済的余裕がない」とか、女性の場合は「2人目となると仕事を断念せざるをえない」など、子を持つことをためらう若い世代の声を耳にすることはありませんか?

 日本政府は、関係省庁をあげて「子どもを産み育てたいと思っている人が安心して産み育てることができるような環境の整備」に取り組んできており、「エンゼルプラン」や「次世代育成支援対策推進法」など、子育てと仕事の両立を支援するために多様な保育サービスを充実させることや、家庭における子育て支援のために地域子育て支援センターの拡充など、各種の施策を提起しています。

 ところが一方では、ニュースで報道されない日がないほどに児童虐待が問題になっています。

 児童虐待は年々増加しており、昨年日本全国の児童相談所が受け付け対応した虐待に関連する相談は3万7323件となっています。これは児童虐待の防止等に関する法律(2000年制定、2004年に一部改正)の施行前に比べると、実に2倍を超えているそうです。死亡にいたるケースも年間50件を超えており、現在の日本社会における喫緊の深刻な問題となっています。

 児童虐待とは、親など実際に子どもを監護、保護する者によって、子どもに対して加えられる不適切な行為のことで、殴る、蹴るなどの身体的虐待、子どもに性的関係を強要する性的虐待、食事や入浴をさせない等の保護の怠慢(ネグレクト)、脅迫や無視など子どもの心を傷つける心理的虐待などがあり、さらには家庭内でのドメスティックバイオレンスなども虐待となります。

 実際のところ、同胞法律・生活センターにも夫からの家庭内暴力で苦しむ女性からの相談も多いので、相談者に子どもがいる場合はその子たちにも暴力が及んでいないか、あるいは精神的なダメージはどうなのか、子への暴力の影響がとても気になるところです。

 また、離婚の増加により母子家庭も年々増加しています。

 厚生労働省雇用均等・児童家庭局が実施した2003年の全国母子世帯等調査によると、母子世帯は約125万世帯で、うち離婚などによる生別の母子世帯は8割で、母子世帯になったときの母親の年齢は平均33.5歳、末子は平均4.8歳とのことです。幼い子を抱えての就労はかなり困難で、ほとんどがパート労働です。そのため、世帯の平均収入も年間212万円と一般のサラリーマン世帯に比べはるかに低く、経済的な支援も含めさまざまな支援が求められています。

 このように、子どもと家庭をめぐる環境は従前とは大きく異なっています。先に述べた少子化の進行や核家族化、共働き家庭の一般化、さらには地域社会における人のつながりや相互扶助の関係性の希薄化などといった現代的な社会状況に加え、長引く経済不況や所得格差の増大などに象徴されるようなまん延する社会不安などを背景に、子育てや家庭内のさまざまな課題を、親や保護者の責任として自助による解決を求めることは非常に困難になってきています。

 このような状況を踏まえ、現在子どもと家庭を社会的に支援していくことの重要性が叫ばれています。児童福祉の分野では、その対象として児童のみならずその保護者や家庭が含まれるものの、何か問題が生じた場合の事後救済的な対応ではなく、問題の発生を予防し、子どもと家族の発達と自立、そしてその自己実現を促す、次世代育成支援という視点に立った児童家庭福祉へと転換されつつあります。(金静寅・同胞法律・生活センター)

※NPO法人同胞法律・生活センターでは、暮らしをテーマにした各種の講座、学習会を企画し、そこに適切な講師を派遣します。地域の同胞を対象にした講座等の開催を検討されている総連本部、支部の担当者のみなさん、お気軽に事務局までお問い合わせください。TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429

[朝鮮新報 2007.11.19]