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〈同胞法律・生活センターPART4 G〉 子ども家庭福祉 A−最善の利益を守れ

どれだけつなげられるかが課題 社会福祉の一分野として

 在日コリアンの福祉を考える学習会「連続講座 使いこなせ! How to社会福祉・サービス」の第3回「こども家庭福祉How to−ひとり親家庭支援、母子サービス、子育て、家庭内暴力etc…」が10日、NPO法人同胞生活・法律センターで開かれた。東京都福生市子ども家庭支援センター専門相談員の辺貞姫さんが深刻化する児童虐待や、ひとり親が直面する問題などをテーマに、専門家としてのアドバイスを行った。

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 「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」は子どもの権利(子どもの権利条約、1989年)である。これらの権利が侵害された場合、たとえ親であろうと子どもから引き離されることになる。

 日本では1970年の初め頃をピークに出生数、婚姻件数が低下している反面、離婚件数は増加の一途をたどっている。子どもと親を取り巻く環境は複雑化しており、社会不安を背景に尊重されるべき子どもの権利も不安定な状態にある。

 児童相談所への相談件数は年々増えており、子育て、養護、不登校、家庭内暴力など、あらゆる相談が舞い込むようになったと講師は話す。

 中でも児童虐待と、ひとり親家庭が置かれている状況の改善は焦眉の課題である。

 東京児童相談所に寄せられた相談の受付状況(平成18年度)によると、「育成」「養護」が全体の24%(約6660件)で一番多く、「養護相談」のうちの48%(約3300件)が「被虐待」である。

 講師は子どもが自由に「声」を発することができる環境作りを呼びかけ、地域からの報告に対して行政が負うべき調査、確認の義務について強調した。「児童福祉はどのようにあるべきか」の問いには、子どもの最善の利益を守るためのアウトリーチ型支援、保護者のエンパワーメントが大事だと答えた。

 子育ての第1次的な位置にいる保護者の生活力の向上と、援助でない支援は、社会福祉の一分野としての子ども家庭福祉には必要不可欠なものである。

 そのためのサービスとして「児童扶養手当」「児童育成手当」「母子福祉資金」「ひとり親医療費の助成」「ホームヘルプサービス」「母子自立支援教育訓練給付金」「母子家庭高等技能訓練促進費」「母子家庭常用雇用転換奨励金」などがある(いずれも東京都のサービス。名称、内容に相違はあるが、各自治体に相応のサービスがある。詳しくは担当窓口で確認を)。

 母子家庭に対する支援が多いのは、母子家庭と父子家庭ではその平均年収におよそ倍の開きがあるためだ。

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 家庭のプライバシーを最大限に尊重しつつ、行政サービスなどの支援体制を築くことは容易ではないと講師はその経験を語る。同胞社会では、第2回の学習会でも指摘されたように、サービスの利用状況や認知度は、日本のそれよりも低い状況にある。

 講師は「国籍条項があるからと、初めから利用できるサービスをあきらめてしまうことが大きな障害になっている。『困った』と感じたら遠慮せずに相談してほしい」と述べたうえで、同胞をサービスへと誘い、つなぐ意義を強調。同胞社会の中にある「仲介役」をより強いものにしなければならないと話した。

 「サービスは申請して初めて支給される仕組み。制度を知っているいる人がどれだけつなげられるかが課題」だと言う。

 社会福祉は「措置」の時代を過ぎ「利用」の時代へと移行している。最後に講師は、地域に密着した調査及び情報交換の重要性を訴えた。(鄭尚丘記者)

※NPO法人同胞法律・生活センターでは、暮らしをテーマにした各種の講座、学習会を企画し、そこに適切な講師を派遣します。地域の同胞を対象にした講座等の開催を検討されている総連本部、支部の担当者のみなさん、お気軽に事務局までお問い合わせください。TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429

[朝鮮新報 2007.11.26]