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西東京第2初中 働く学父母をサポート 「全校給食」試験的にスタート

朝鮮の味を伝える工夫も

おいしそうに食べる園児たち

 共働きの学父母をサポートするため、04年から初級部低学年の児童らを対象に学童保育所「トトリ(どんぐり)」を運営している西東京朝鮮第2初中級学校(東京都町田市)で、今月から試験的に「全校給食」が行われている。

 新入生受け入れのため、同胞宅を訪問し、入学案内の話をしたとき、「日本の学校には給食があるのに朝鮮学校にはない」「毎日お弁当を作るのは大変…」とつぶやく働くオモニたちの声が李政愛校長を突き動かした。「近県で全校給食を行っている千葉朝鮮初中級学校の経験を聞いて、わが校にも取り入れられたらと、学父母を対象にアンケート調査を行い、踏み切った。現在は試験的に週3回実施している」。

 李校長によると、給食は月、水、金曜日で、火、木曜日は業者にお弁当を依頼、土曜日はオモニの愛情弁当を持参するようになっている。

「こぼさないように気をつけてね」

 児童たちの中にはキムチを食べられなかったり、日本人のオモニをもつため、民族食になじみのない子もいるという。そこで、「給食ではなるべく民族的な食べ物を取り入れて、ピビンバやトックなど、少なくても月1回は民族的なメニューを入れるよう工夫している。給食初日には、端午節を祝い、全校生がヨモギ餅を食べた。端午節のヨモギ餅には、無病長寿の意味が込められている」(李校長)。

 調理場ではモクモクと白い湯気が立ち上がり、大きな鍋の中ではグツグツとお湯が沸いていた。この日のメニューは、かき玉にゅうめん、かぼちゃの煮つけ、ハムと玉ねぎのマリネ、きゅうりのキムチ。4人のオモニたちが、麺を湯がき、かぼちゃを皿に盛りつけ、使い終わった調理器具を洗い、濡れた作業台を拭くなどして、手際よく動き、給食の準備を急いでいた。

 「12時には幼稚班の子どもたちが降りてくるので、50分頃また火を入れます!」と、同校教育会で働く洪栄春さん(47)が指示する。その傍で卞清美さん(46)が幼稚班の子どもたちが食べやすいよう、麺をはさみで切っていた。2人は給食作りの主力メンバー。

幼稚園児には食べやすい工夫も

 「現役のときは忙しくて、やりたくてもこういうことはできなかった。ウリハッキョ(学校)が子どもたちを立派に育ててくれたおかげで、今は恩返しのつもりでやっている」(洪さん)、「私は日本人で、朝鮮人と結婚して朝鮮料理を学んだ。先日、給食でレングッ(冷スープ)をはじめて食べたという子もいた。小さい時に食べた味は大きくなっても忘れないもの。給食には、キムチやナムルなど、朝鮮料理らしいものをかならず1品は入れるよう心掛けている。食事を通して民族の味を伝えられたら」(卞さん)と話した。

 この日助っ人として掛けつけた申玲恵さん(49)と金英姫さん(44)は、「子どもの喜ぶ顔を見るのが親の楽しみ。給食実施で忙しいオンマが家庭で子どもと過ごす時間が少しでも増えるのなら良いのでは」(金さん)、「いつも調理場に4、5人いれば苦ではないが、2人で毎回作るとなると負担も大きい。周りの協力体制も整えていかなくては」(申さん)と話していた。

 昼休み−。食堂は一気ににぎわった。「マシッソヨ!(おいしい)」と満面の笑顔で給食を頬張る幼稚班のチビッ子たち。5年生の権景雲、李成賢、朴瑛煥くんらは3人そろっておかわりをした。

 「麺にキムチ味のスープが染込んでいるところがおいしいね」(権景雲くん)、「家ではあまりおかわりをしないんだけど、今日は特別おいしかったのかな?」(李成賢くん)、「辛いのは少しなら大丈夫。給食でキムチチャーハンなんかも出してほしい」(朴瑛煥くん)

 また、6年生の朴泰樹くんは、「きゅうりのキムチも含めて全部おいしかった。学校でおかわりできたのは、みんなで一緒に食べたから。みんなで食べると、楽しいしおいしい」と話した。

 5年生担任の金天晧先生(24)は、「今はオモニたちがボランティアで作ってくれているので苦労も多いかと思うが、とても感謝している」。

 給食時間には、全校生徒39人、教職員を含めて50余人が食堂に集い、一緒に食べている。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2007.5.24]