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〈在日朝鮮学生学術フェスタ 論文賞〉 朝鮮学校の学校保健における実践的な取り組みについて

京都の事例をもとに

 朝鮮学校は、在日朝鮮人が子どもたちに民族教育を行い、民族の心と歴史・文化を継承し発展させたいという願いにより設立され、昨年60周年という節目を迎えた。その間、弾圧や閉鎖など多くの困難に直面しながらも、同胞たちの手により民族教育は守られてきた。そして昨今では、2003年に国公立大学受験資格が認められるなど多くの権利を獲得してきた。しかし、朝鮮学校は学校教育法第83条の各種学校と位置付けられ、教育助成など児童生徒への制度的な処遇に、今なお多くの問題を抱えている。

 学校保健もその問題の一つとして挙げられる。2000年に在日朝鮮学校中央保健委員会による、民族教育史上初めての「朝鮮学校保健活動規定」が制定され、2001年度の4月から施行されたものの、6年が経った今でも朝鮮学校の学校保健を取り巻く多くの問題が残されている。まず、朝鮮学校には「保健室」と呼ぶにふさわしい施設がほとんど無く、体調の悪くなった生徒を休ませるベッドすら無いところもある。また、部屋はあっても担当の教員がいないのは当たり前となっている。そのほかにも、定期健康診断はボランティアでまかなわれており、学校医に対する助成はほとんど行われていない。

 このような環境下に置かれている朝鮮学校の学校保健をなんとかして整え、生徒や教員、保護者の安心できるものにしていきたいと思い、論文を書くに至った。この論文を通じて、朝鮮学校の学校保健を取り巻くさまざまな問題点を整理し、学校保健が整っていない中でも、京都の朝鮮学校でなされている実践的な取り組みに着目した。そして、そこから見えてくる今後の取り組むべき活動を提示すること、朝鮮学校の学校保健に対する意識を高めていくことを論文作成の目的とした。

 朝鮮学校は学校保健が整っておらず、さまざまな問題を抱えている。しかし、そんな中でも京都の朝鮮学校では何とか現状を改善しようと、ほかでは見られない取り組みを行っている。また、在日本朝鮮人医学協会でも、定期健康診断などのほか、兵庫の「担当看護師制度」などで朝鮮学校の学校保健を支えている。

 現在、京都で行われている取り組みについては、全国の朝鮮学校においても実践していくことは可能ではないだろうか。まず、保健室を学校内に設置することが第一の課題として考えられる。次に、京都朝鮮第2初級学校を模範例として、養護教諭の方にボランティアとして来ていただくことも現時点での解決策と考えられる。

 このように、京都における取り組みを全国に広めていくことによって、学校保健が朝鮮学校に定着していく足がかりとすることができるのではないか。

 朝鮮学校は在日朝鮮人の民族の代をつないでいくという大切な役割を担っている。60年以上もの間維持してきた朝鮮学校に、今もなおたくさんの児童が通い、未来へと民族教育をつないでいる。そのような児童たちを守っていけるのは、ほかでもない私たち同胞である。

 そして、依然として存在する学校保健の問題は、児童たちを守るために最も優先して解決されるべきである。学校保健は児童の発育と健康を守り、正しい知識を提供するものとして、欠かすことのできない重要な存在である。さまざまな制度的理由により、未だ解決を阻まれているが、京都の朝鮮学校における取り組みから、今は学校保健が整っていなくても、働きかけにより環境は大きく改善されることを知った。そして、働きかけを行っていかなければ、何も変わらないということを強く感じた。

 また、多くの方々が朝鮮学校を支援する活動を行っていることにも気づいた。日本学校と比べると、やはり朝鮮学校にはまだまだ足りない部分が多いと感じる。しかし朝鮮学校には、同胞や教員、保護者による温かい支援と熱い思いが深く根付いている。助成も制度も無いなりに児童たちを守ろうとし、それを実現できているのは朝鮮学校の誇れることである。そういった誇れる部分を残しつつ、学校の環境を改善していけたなら、より良い教育を行うことができる。もちろん環境が整っただけでは意味がない。熱い思いと環境の両方が合わさって本当の「教育」を行うことができる。(京都薬科大学薬学部4年 池祥恵、龍谷大学社会学部3年 李映叡、同志社大学社会学部2年 崔伶雅)

[朝鮮新報 2007.12.12]