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平壌の近況報告から 街には映画VCD、カメラ、パソコンが流行

「日本の経済制裁の効き目ない」

 06年11月末、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の平壌を訪問した。朝鮮のことを真に理解する姿勢は、日本には皆無に近い。朝鮮は米日といまだに戦争状態にあり、理不尽な「制裁」に抗い闘っているということを、日本人はほとんどわかっていないのではないか。そして、どの国でも当たり前のことだが、朝鮮国内では人々は普通に生活を営んでいるのだ。朝鮮の最新状況を報告する。

核保有国のスローガンも

市内では核保有についての色鮮やかなスローガンが目立つ

 「核実験」から約1カ月半経った平壌市内は落ち着いていた。市民は普段どおり通勤、通学をしていた。日米の共謀による「国際的」な経済制裁による重苦しい雰囲気を感じたことは一度としてなかった。むしろ、5月の連休中に訪れたときより市内の店は増えており、人々も活発に動いているように見えた。

 「世界的な核保有国を勢いよく立ち上がらせてくださる絶世の霊将 金正日将軍 万歳!」というような核保有を宣言する色鮮やかなスローガンが街中にあった。私が見たのは2つだが、一つは赤に白字のもので、万寿台通りと勝利通りの交差点くらいにあった。もう一つは、青に赤字のもので、党創建記念塔の近くにあった。両方ともキャスターがついている移動式だ。

 「核を保有したのは、私たち国の自主のためだ。経済制裁はある意味覚悟していた。しかし、経済より政治的な自主が大切なのだ」とある労働者は語った。自分たちの国に対する自負心と自信が感じられた。

通りには設置された写真店がたくさんあった。市民が気軽に立ち寄って記念写真を撮っていた

 現在、平壌で流行しているものを見ると、市民の生活が身近に感じられる。平壌の若い女性の間では、今、厚底靴が流行している。厚底靴に赤や黄色の比較的派手なコートというスタイルをよく見た。平壌の若い女性の間ではこのような形が流行のスタイルかもしれない。ジャンマダン(市場)などで中国製の靴が売られていて、値段も比較的安く、手に入れやすいという。

 食べ物では焼き芋が人気だ。街中のあらゆるところで「焼き芋」と書かれた店を見た。1袋が150ウォン程度。ほかに、焼き栗や、芋を使ったパンが置いてあった。一つ買おうと思ったが、すでに売り切れだという。焼き芋はかなりの人気があり、夕方には売り切れてしまうらしい。

 アイスクリームも人気だ。朝鮮では「アイスクリーム」とは呼ばずに「氷菓子」「エスキモー」という。市民は冬でもおいしそうに食べている。公園や街頭にはパン、菓子などのスナックを売る店があり、アイスクリームも売っている。また、統一市場の入り口には、アイスクリーム売りのおばさんが何人もいて、人々に声をかけていた。


「昼夜間売店 24時間サービス」と書かれた店の看板。嗜好品から日常雑貨、お弁当のおかずまで売っているこの店はかなり繁盛していた

 カメラも流行している。デジタルカメラを持っている人も珍しくはないという。街中に、カメラ現像店があり、デジタルカメラにも対応してくれる。公園や牡丹峰では、スナップ写真のサービスをする露天商も見られた。街行くカップルは、歩きながらちょっといい景色があると、立ち止まって写真を撮ったりしていた。

 また、映画のVCDは平壌市民の間でかなりの人気がある。街には、VCD、CDショップがあり、一枚1300ウォン前後で販売している。朝鮮の映画、ドラマが主流だが、最近は、中国、ロシア製映画も流行っているという。また、レンタルサービスもある。VCD再生機も流通している。平壌市民には少し「高値の花」だが、購入する人も珍しくない。パソコンもある程度普及していて、DELLコンピュータを取り扱っている店もあった。

 小学生の間では、漫画が人気で、日本と変わらない。ただし、劇画チックな絵で日本敵国主義との闘いを描いた作品があり、スパイものも多い。本屋には貸本漫画のコーナーも設置されていた。一人で借りると高いからだろう、3人で一つの漫画を肩を寄せ合って読んでいる小学生を見た。ほほえましい。

「贅沢品」もいっぱい

小学生の間ではやっている漫画「終わらない対決」など(上)、漫画は、日本帝国主義との闘いを描いたものなどがある(下)

 10月9日に行われた朝鮮の核実験を経て、国連で朝鮮に対する非難決議がなされ、日本は米国とともに朝鮮への経済制裁に踏み切った。日本国内にある朝鮮の金融資産の凍結や朝鮮船舶の入港禁止などの制裁をすぐに決定し、11月14」日に、日本政府は、朝鮮への輸出禁止措置の品目を発表した。それは、酒類、たばこ、化粧品、貴金属、映像オーディオ機器、車などの種類である。しかし、日本の経済制裁については、効果がほとんどないと思われた。

 平壌市内の柳京ホテル近くにある情報センター1階の売店には、時計、貴金属など、日本政府が「贅沢品」に指定した物品が普通に販売されていた。

 03年8月にオープンした統一市場(自由市場)では、果物、野菜、肉、干魚、菓子などの食料品はもちろん、文房具などの日用品、酒、タバコなどの嗜好品、デジタルカメラ、MP3プレーヤー、電子ピアノ、PC用品などの比較的高価な電化製品、車用品、掃除機、電話など、ないものはほとんどない感じだ。

 値段は、たとえば果物のぶどう一房が2500ウォン。タイ産マンゴーが2000ウォン。ケーキのようなお菓子が一袋1500ウォン。大学生用ノートが一冊300ウォン。カシオのデジカメが230ドルという具合だ。

 ただ、経済制裁とどれほどの関係があるかはわからないが、平壌市内では、日に2時間程度の停電、断水が起こる。これは、需要に対して供給が追いついていないためだが、断水、停電も、たいてい早朝であり、生活に支障のない程度だ。

 エネルギー事情については、ガソリンが十分ではないようだ。日曜日は基本的にノーカーデーであるし(ただし、公用車や大使館職員などの滞朝外国人は別)、基本的に、自動車優先社会である。理由は、自動車が一旦停車を繰り返すと、それだけガソリンのロスであり、結果的に国全体のガソリン事情に響くからである。また、自動車は100万円以上するので、一般市民には買うことはほぼ不可能だ。一般に労働者の1カ月の賃金は、約3000ウォンと言われている。公式レートでは約1ドルである。

 このように、日本が行っている経済制裁は、実質上効き目がない。隣国に経済制裁をするということは宣戦布告の一歩手前だということだ。41年にわたる非人間的な植民地支配を行いながら、過去に真摯な姿勢で向き合わず、謝罪、補償をしないばかりか隣国を61年半敵視するばかりの日本こそ国際社会による正義に基づく「制裁」に価するのではないか。

 日本は自ら東アジアの危機を煽るのではなく、冷静に動かなければならない。経済制裁をやめ、日朝国交正常化を早期実現させることで朝鮮の自主性をきちんと認め、東アジアの安定に全力を注ぐべきだろう。

 「東アジアの平和のために日本の役割は重要だ。しかし、日本は今朝鮮を敵視している。私たち朝鮮民族による自主的な統一を、日米は邪魔しないでほしい」という平壌市民の言葉に、一人の日本人としてこたえていきたい。(写真、文=森類臣、同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻博士後期課程)

[朝鮮新報 2007.1.15]