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「『スーパー・ノート』 偽造ドル紙幣の秘密」 ドイツ・FAZ紙

 ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙は、1月8日付(速報は7日付)に偽造紙幣問題に詳しい経済専門のクラウス・W・ベンダー記者の「『スーパー・ノート』偽造ドル紙幣の秘密」と題する記事を掲載した。以下その要旨を紹介する。(翻訳=編集部)

 インターポール(国際刑事警察機構)にとって本件(偽造ドル紙幣「スーパー・ノート」)は最優先事項である。20年前からきわめて精巧な偽造100ドル紙幣が出回っており、長期間にわたって製造元を捜査しているが、いまだに見つかっていない。

 2005年3月、インターポールは加盟国に対して深刻な危機状況を知らせる「オレンジ警報」を発した。また2006年7月には、各国の中央銀行、捜査機構、特殊セキュリティ印刷企業の関係者を集め「スーパー・ノート危機(対策)会議」を開いた。

 米国人は、米国の大敵である北朝鮮が犯人だとにらんでいた。しかし、一日で会議が終了した時、そのような見方に対する疑問が会議場では支配的になった。もっとまずいことに、偽造の背後にはもしや米国がいるのでは、という噂が出た。

偽札を運ぶ外交官

 100ドル偽札は、1989年(フィリピンの)マニラのある銀行で初めて発見され、大騒ぎになった。紙幣印刷の専門家たちでさえ見たり触ったりしただけでは−おそらく一般人にとってはそれがもっとも重要な見分け方であるが−この100ドル紙幣が偽物か本物かを判別することができなかった。そのために、捜査官たちはこの驚異的な偽札を「スーパー・ノート」と名付けた。

 それ以来、イラン、シリア、レバノンのヒズボラ、ひいては旧東ドイツのような国々が疑われた。しかしながら、今やワシントンでは、そのように記憶することを好まない。なぜなら、こんにちでは、犯人は北朝鮮と見てまちがいないと固く信じているからだ。

 過去数年の間に、外交旅券を所持した北朝鮮の外交官や企業家の旅行カバンからぎっしり詰め込まれた「スーパー・ノート」の束が摘発された例がある。北朝鮮の裏切り者の中には、国家が運営する偽札工場について発言する者もいるが、彼等の発言の信憑性ははっきりさせなければならない。

口を塞ぐ米メディア

 北朝鮮犯人説を信じる者が決定的な証拠として挙げるのは、1998年にロシアのウラジオストクで3万ドル分の「スーパー・ノート」を所持していて捕まった、元駐ロシア北朝鮮大使館の経済担当官の例である。彼は2003年、西側に亡命したあと、自分が金正日の秘密資金を管理し、「スーパー・ノート」の製作にも個人的に関与したと主張した。

 それ以来、米国政府は金正日がその偽札でフランス産コニャックを購入し、ロケット、核兵器を開発しただけでなく、不調な経済を崩壊から守っていると信じている。米国はまた、北朝鮮が2億5000万ドル相当の「スーパー・ノート」を刷り流通させていると思いこんでいる。そのことについては一片の疑いをはさむことも許されない。したがって、米国の全メディアは、この重大なトピックについてだけは自ら口を塞いでいる。

木綿の原産地は米南部

 紙幣印刷は極度に複雑な技術を要する作業である。「スーパー・ノート」ほどの品質の偽札を作る専門知識は、素人には理解できない。「スーパー・ノート」に使われる紙幣用の紙は、綿75%とリンネル25%を正確に配合して、いわゆる「Fourdrinier」製紙機械で作られる。そうするのは米国人のみである。

 偽札には、「USA100」という極小文字も印刷されており、非常に薄いポリエステルのセキュリティ糸が透かしに織り込まれている。そうするためには、偽造者は少なくとも一台の抄紙機を必要とする。ある紙の専門家による化学物理的分析では、「スーパー・ノート」に使用されている綿は米国南部の州が原産地であることが判明している。しかしながら、この綿は市場で自由に入手できる。

凹版印刷による初の偽造

 第二次世界大戦中のナチスドイツによる英国ポンド紙幣偽造の試みを除けば、長い紙幣偽造の歴史の中で凹版印刷によって偽造されたケースは一度もない。しかし、「スーパー・ノート」は、完璧に感知できる彫刻凹版(インタリオ)印刷によるものである。彫刻凹版印刷機は、ヴュルツブルクにあるKBAギオリ(前身はDLRギオリ)だけが製造しており、米国造幣局(BEP)が長年にわたってドル印刷のために使ってきた。

 この特殊な印刷機は、自由市場では入手できない。中古品の転売でさえ、手続き上はインターポールに報告されるようになっている。北朝鮮は1970年代にKBAギオリ社が製造した標準型印刷機を一台所有した。しかし、ある専門家の話によると、その機械は設備を追加しなければ「スーパー・ノート」製造はおぼつかず、それ自体も部品不足のため長い間、稼働停止状態にあるという。

セキュリティ・インク

 北朝鮮が1990年代にKBAギオリ社の現代的な印刷機を密かに入手した、という主張は作り話である。北朝鮮は現在、ヨーロッパから新しい機械を買い入れようとしているが、今までのところ成功していない。というのも、同国が旧型の印刷機の代金を全部払い終えていないからだ。

 法医学研究所による分析結果によると、「スーパー・ノート」に使われているセキュリティ・インクは本物のドル紙幣のそれと一致するという。ドル紙幣の場合、光の角度によってブロンズ色系グリーンからブラックに変わる高価な変色インクが用いられている。

 かかる機密性の高い変色インクは、(スイスの)ローザンヌにあるシクパ(Sicpa)社が独占して製造している。そしてBEPが、国内でライセンスを持つ、厳重に管理された工場で極秘に設定した色の配合率で使用されている。その他のドル紙幣印刷用セキュリティ・インクの場合も同様である。

 もちろん、厳重に管理されているこの特殊インクが生産過程でわずかな量が盗まれるという可能性は排除できない。しかし、そこで興味深い疑問が残る。それは、偽札の大量生産に必要な量が、しかも厳しい監視下にある国境を越えて、部外者の手に入る可能性についてである。北朝鮮はかつて、シクパ社の顧客だったことがある。

 シクパ社が「スーパー・ノート」に使用されたインクが本物であるかどうかを明らかにするのは易しいことだ。セキュリティ・インクに、「tagging」(タグ付け)という秘密表示が施されているので、個別の生産単位まで追跡できる。しかし、米国が最大の顧客であるということから、同社はそのことについての発言を拒否している。

「平壌コネクション」

 さらに不可解な事実が1996年以降、米連邦政府とBEPが発行した新ドル紙幣に表れる。贋造者たちはその後も、あらゆる変化に対応してきた。現在のところ、「スーパー・ノート」は19種類もある。それらは、完全無欠である。新版の大きな肖像画の上部に部分的に隠されている、大きさが1/4万2000インチ(1インチは24.5ミリ)の極小文字も印刷されている。 「スーパー・ノート」からは、拡大鏡でみても本物との違いは見つからない。偽造集団は、どこからそうした専門家たちを連れてきたのだろうか?

 だから、「平壌コネクション」や「対米経済戦争」といったワシントンの主張は説得力に欠ける。偽造者たちは、新版の紙幣に使われた赤外線反応セキュリティ・インクの技術も持っている。しかし、どこの銀行でも紙幣識別機で偽札であることがすぐにわかるような、いい加減な使い方をしている。だから米国では、この「スーパー・ノート」は使えない。50ドル偽札は、支払いの際はより使い道があるが、それがもっと完璧なできであるにもかかわらず偽造者たちは使うのをあきらめている。

誤った印刷機投資

 北朝鮮が紙幣偽造で経済的な利益を得ようと望んでいたとしたら、「スーパー・ノート」は典型的な投資ミスだ。米国の偽造紙幣担当の情報機関によると、過去17年間に都合5000万ドル分の偽札が押収された。しかし北朝鮮がいま、お目当ての印刷機を購入したいと思っても、その程度の金額ではせいぜい一台しか買えないだろう。

 ヨーロッパの偽札捜査官たちは、偽ドル紙幣が主に東アジアから流出しているのかどうかについては確認していない。ヨーロッパでは、偽札は銀行の通常の検査過程で押収されている。それらは、ほとんどが中近東、東アフリカ、そしてロシアから流入している。

 したがって、偽札はかかる地域から武器購入代金として北朝鮮に入っているのではないかと推測される。日本はこれまで北朝鮮と最も集中的な貿易関係を維持してきた。しかしながら、日本警察は、長年にわたって「スーパー・ノート」の増加についてまったく発見できなかった。

CIAの秘密印刷所

 韓国の警察によると、ソウルで何回も摘発された相当な額の偽ドル札は北朝鮮の国境地帯にある中国の瀋陽や丹東といった都市から入ってきた。韓国警察の説明では、多額の「スーパー・ノート」を所有していた北朝鮮の外交官が最後に逮捕されたのはすでに何年も前の話だ。

 したがって、米国の北朝鮮に対する非難は根拠が薄弱である。また、逆効果となっている。高度のセキュリティ印刷技術業界や偽造紙幣捜査官たちは、米中央情報局(CIA)が秘密印刷所で一体何を印刷しているのかと長い間問い続けてきた。ワシントン北部に位置する特に有名な都市の同施設には、「スーパー・ノート」の印刷に必要な機械が設置されている。

 CIAは、米国議会のコントロールを受けることなく、世界の危機的状況にある地域での秘密工作のための財源を、その秘密印刷所で製造した偽札でまかなってきた可能性がある。かかる紙幣偽造活動の責任を、大敵である平壌にご都合主義的になすりつけることもできる。

いわゆる「明確な証拠」

 「スーパー・ノート」は、15年にわたって偽札捜査官だけの関心を引きつけてきた。ジョージ・W・ブッシュ大統領は、この問題で初めて公式に平壌を非難し、自らの朝鮮半島政策の基軸に据えた。ワシントンは、「明確な証拠」があると言ってはいるものの、安全上の理由を挙げて証拠の公開を拒否している。

[朝鮮新報 2007.2.2]