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そこが知りたいQ&A−6者会談で何が合意されたのか?

米国の政策転換を前提にした核施設稼動中止 非核化に向けた「初期段階行動」

 【平壌=金志永記者】8日から13日まで北京で行われた第5回6者会談第3ラウンドでは9.19共同声明(2005年)履行の初期措置が合意された。会談参加国による朝鮮半島非核化のための取り組みが始まり、「10.9核実験」の衝撃によって動き始めた東北アジア情勢は対立から協調への転換の様相を呈している。

「見返り論」の嘘

合意文の発表に先立ち握手を交わす参加各国代表団の団長(13日)

 Q 6者は何を合意したのか。

 A 朝鮮半島非核化の実現に向けた各国の具体的な行動計画を期間を限定して策定した。2005年9月19日、第4回第2ラウンド会談で発表された共同宣言は、非核化実現の原則と目標達成にいたるまでの政策的課題を盛り込んだロードマップだった。言うならば「言葉対言葉」の公約だった。

 しかし約束は実行に移されず、共同宣言の原則に反する米国の強硬路線によって会談は中断、朝鮮は核実験を断行した。

 昨年末から再開された会談のテーマは共同宣言の履行、「行動対行動」のプロセスを始めることだった。今回の第3ラウンド会談では最初の第一歩、初期段階の行動措置について議論した。合意では初期措置の期間を60日と定めている。

 Q 日本国内では初期措置の内容に関する議論が「経済・エネルギー支援」に集中しているが。

 A 今回、日本は朝鮮半島をとりまく情勢の推移を見極められない政府の戦略なき外交と、それに追随するマスメディアの限界を露呈したといえるだろう。

 「瀬戸際外交」「物乞い外交」のステレオタイプにとらわれているかぎり、朝鮮が展開する「核外交」の真髄と6者会談の進展によってもたらされる変化のダイナミズムを理解することは不可能だ。

 日本の世論は、6者会談の目標が朝鮮による一方的核放棄ではないという事実を見失っている。すべての議論の出発点である9.19共同宣言は、朝米の敵対関係解消と信頼関係構築により朝鮮半島の非核化を実現するというビジョンを明確に示している。

 関係改善のために朝米双方が行動を起こし、ほかの参加国もそれに歩調を合わせることで朝鮮半島非核化の環境と条件をつくりだそうというアプローチだ。朝鮮側の行動に「見返り」を与えることで何かを達成できると考える思考方式は、6者会談の場では完全に排除されている。

米の政策転換がカギ

 Q 合意された初期措置の基本的なポイントは?

 A 朝鮮は自らの非核化公約履行の第一歩を踏み出し、米国も朝鮮に対する敵視政策の転換を始めるという点だ。60日以内に実行すべき行動措置は、会談で発表された合意文書の第2項目に記されている。

 朝鮮側が行う措置は、▼寧辺各施設の閉鎖、封印、IAEAによる監視、検証の受け入れ▼すべての核計画のリストに関する協議。

 一方、米国などほかの参加国の措置として、▼正常化に向けた朝米対話の開始▼平壌宣言に基づいた朝・日対話の開始▼朝鮮に対する経済、エネルギー、人道的支援−と定めた。

 ここで最も重要なのは、朝米の同時行動措置だ。朝鮮にとって寧辺の核施設を最終的に廃棄するということは核兵器の生産を止めるということ。

 国の安全保障を経済支援と取引することはできない。行動を起こす前提としては、朝鮮の「体制転覆」を追求する米国の政策が転換されなければならない。米国が朝鮮との国交正常化を目指す対話をスタートさせることは、政策転換の第一歩と位置づけられる。

 Q 今後、核問題はどう展開するのか。

 A 今回の会談終了後、朝鮮代表団関係者は「米国の出方を見極める」と語った。今後、検証されるべきは寧辺核施設の廃棄に向けたプロセスだけではない。米国がどこまで真剣に朝鮮との関係改善プランを推進しようとしているのか、ブッシュ政権の政策的決断が問題解決の要となる。

 朝鮮側は米国が信頼構築に真摯に取り組むのなら、自らの非核化公約を誠実に履行する決断をすでに下したと分析できる。

日本の孤立

 Q 東北アジア情勢にも大きな影響がありそうだ。

 A 今後、予想される朝米関係の変化を全体的な構図の中で捉えるならば、現在、6者会談の場で繰り広げられているのは、朝鮮の核実験が引き起こした東北アジア秩序再編の主導権をめぐる交渉と見ることもできる。

 6者の立場と主張、その駆け引きの様相は、この地域の国際政治の縮図だ。今回の合意が、共同宣言履行の初期措置に続くステップとして、6者による外相会談を明記した事実が示すように、核問題の進展は朝鮮半島と東北アジアに多角外交の舞台を準備した。

 いまだに対朝鮮強硬路線の修正を行うことなく、結果的に6者会談での発言権を持ちえない日本のような国は、多国間のパワーゲームに参加できなくなり、脱落するしかない。

[朝鮮新報 2007.2.19]