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第6回6者会談 「2.13」履行の教訓は言行一致

BDA問題 共同声明履行の「先決条件」

 第6回6者会談は、「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)問題に足を取られ、上程された議題をすべて討議できないまま終わった。各国代表からは「荒唐な出来事」(南側団長の千英宇朝鮮半島平和交渉本部長)が起きたという声も上がった。一つの約束違反が会談全体の進展に支障を与えた今回の事態は、朝鮮半島非核化の原則と方法に関する重要な教訓を残した。

約束違反した米国

 今会談、BDA問題が解決されず核問題の討議は中断状態に陥った。この間、各国メディアは、米国側がBDA凍結資金解除に関する必要な措置を講じたのに、朝鮮側が資金返還の確認に執着したため事が複雑になっているかのように伝えた。

 しかし、そうした報道はBDA問題の経緯に目をそむけた的外れなものだった。

 BDA問題は、今会談で突然浮上した問題ではない。朝鮮の核実験(昨年10月)後、中断されていた6者会談の再開が検討される過程で米国側が会談再開の前提として解決の意向を表した問題だ。

 そのときから数カ月が経ったにもかかわらず、米国は問題解決を引き続き遅らせてきた。そして今会談の開幕直前になって、凍結資金の返還が伴わない形式的な「声明」を発表することによってあやふやにしようとした。BDA問題が未解決のまま残り、今会談が所期の目的を達成できなくなった1次的な責任は、約束履行の期限を守らなかった米国側にある。

 朝鮮は、米国側に金融制裁解除を9.19共同声明履行討議の「先決条件」として提示した。金融制裁を対朝鮮敵視政策の集中的な表現と見なしたからである。敵国の制裁を受けながら、その敵国と膝を交える会談には出られないというのが朝鮮の立場だ。

 米国は昨年来、朝鮮側にBDA問題解決の約束を何度もした。1月中旬、ベルリンで行われた朝米会談では30日以内に凍結資金を解除するという期限まで定めた。しかしこれも、口約束に終わった。

 6者会談では、9.19共同声明履行問題が討議されていった。2月に行われた第5回6者会談第3ラウンドでは朝鮮半島非核化に向けた初期段階行動措置を決めた「2.13共同文書」が採択された。

 今会談は、60日以内に取ることになっている初期措置の履行状況を中間点検し、「2.13共同文書」を本格的な行動段階に進めるための会談と位置付けされていた。

 初期行動段階で、寧辺核施設の稼動停止などの措置を講じることになっている朝鮮としては、これ以上米国の言行不一致を黙認することはできなかった。米国が敵視政策転換を行動で示さなかったのに、核放棄の過程を一方的に始められないと朝鮮側が判断したのは当然だ。過去のようにBDA問題がまたあやふやになった場合、今会談が空転するということは事前に十分、予想できた。

信頼醸成の問題

 今会談に参加するため北京を訪れた朝鮮代表団関係者は、「BDA問題の最終的な解決のためには凍結された資金の返還が確認されなければならない」と語った。米国がそのような朝鮮側の意中を推し測れなかったとしたら、金融制裁の解除問題をあまりにも実務的に扱ったという非難を免れないだろう。

 米国は今会談の数日前に、BDA問題に関する「調査結果」を発表した。朝鮮代表団関係者はそれを「不誠実な対応」だと受け取った。北京空港に到着した朝鮮外務省の金桂官次官が「われわれはまだ金融制裁解除について通達されていない」と言ったのは、米国の対応に対する不快の念の表れだった。

 金次官は「これまでの6者会談がもたらした現実的な結果は朝米間の不信と対立が極度に達しただけ」だとしながら、「非核化の方向に歩みを進めるようにしたいのなら、朝米の信頼が醸成されていかれるようにしなければならない」と指摘したことがある。朝鮮が金融制裁解除をかくも重視したのは、それを米国の対朝鮮敵視政策を是正する過程、朝米信頼醸成の一つの契機点と見なしていたからである。

 3月上旬、ニューヨークで行われた朝米作業部会は和やかな雰囲気に包まれた。双方が関係正常化の意志を内外に示した。ところが、同じ月に北京で開かれた6者会談でこれという進展が見られなかった現実は、米国が対朝鮮政策に関する実質的な措置を講じる外交的な美辞麗句をいくら繰り返しても、「2.13共同文書」は履行できないということを実証した。

 中身のない「微笑外交」では朝米間の不信と対立を解消することはできず、朝鮮半島非核化のプロセスも推し進めることはできない。歴史的に朝鮮を敵視してきた米国が朝鮮と平和共存しようとする国になろうとするなら、そのための法的および制度的な措置が講じられなければならない。

「同時行動」が原則

 しかし、BDA問題の処理過程が示しているように、米国が9.19共同声明に反し加えた制裁を自ら解除することさえ難航したのに、朝鮮を敵視する米国の法的及び制度的装置を撤廃するのは容易なことではない。だからこそ、今会談において朝鮮はBDA問題でいささかの譲歩もしなかったのだ。

 9.19共同声明の履行による朝鮮半島非核化の過程は、集約すれば、「朝鮮の核放棄」対「米国の敵視政策放棄」の過程だ。ここで貫くべき原則は「言葉対言葉」「行動対行動」の原則だ。

 それは、米国にとっても切実な課題である。

 6者会談米国側団長のクリストファー・ヒル国務次官補は、BDA問題に関する約束をもっと早く行動に移そうとしたができなかったのは、国内に「反対派」がいるからだと弁明するかもしれない。だからこそ、米国にとっても、朝鮮との同時行動原則を金科玉条にするのが何よりも重要な課題となる。「交渉派」がいくら活発な外交を繰り広げても、朝鮮を敵視している国の法と制度が「反対派」によってそのまま維持されるなら朝米関係は進展せず、朝鮮半島の非核化も実現できない。このように、今会談が空転した事態は「交渉派」に貴重な教訓を投げかけたといえる。

「行動計画は完了」

 しかし、9.19共同声明の履行において大きく落胆、失望する必要はなさそうだ。

 今会談で朝鮮が米国の言行不一致を正すためにBDA問題で頑強な立場を固守したのは、「2.13共同文書」を誠実に履行する準備が完了したからだと考えられるからだ。朝鮮はすでに「行動」を決断し、それに見合う米国の「行動」を確かめようとしたのだろう。

 BDA問題が解決すれば、再開される6者会談では「2.13共同文書」の履行計画が具体化されるようになる。6者が合意した時間表を守れるか否かは「2.13共同文書」履行の当事者、とくに米国がそれに明示された敵視政策転換に関する公約を実践していく意志をどれだけ固めて会談に出てくるかにかかっている。

 朝鮮代表団が北京を発った日、朝鮮外務省スポークスマンが、米国と南朝鮮が繰り広げる合同軍事演習が「2月13日の6者会談で苦労のすえにもたらされた合意履行と会談の進展プロセスに影を落とす危険きわまりない挑発行為である」と、指摘した意味を肝に銘ずる必要がある。

 朝鮮は「行動対行動」原則が貫徹されるなら「2.13共同文書」履行の速度をあげることを惜しまないだろう。米国が今回の会談の教訓を踏まえて、より積極的な対応策を講じていくことが求められている。(金志永記者)

[朝鮮新報 2007.3.28]