top_rogo.gif (16396 bytes)

朝鮮の「全民農作」制度 職場別に支援、寝食も共に

農場支援は「公民の義務」

 【平壌発=李相英記者】朝鮮各地の協同農場で5月中旬に始まった田植えも終盤に入った。朝鮮の農作風景は独特だ。5月の田植え期から7月の草取り期までの約2カ月、全人民が農場へ出向き農場員とともに農作を営む。朝鮮の「全民農作」について取材した。

地位を問わず

機械で田植えする農場員

 平壌市三石区域の長水院協同農場は、1958年11月に誕生した歴史ある農場だ。

 田植え期の一日はそれこそ忙しい。農繁期には大勢の支援者が同農場に赴き野良仕事を手伝う。

 朝鮮ではこの期間を「総動員」期間と呼ぶ。職位、職場、年齢に関係なく、労働能力のあるほぼ全ての人々がさまざまな形態で農場支援に参加する。

 同農場のリ・キョンボ管理委員長は、「田植え期間は『戦闘』期間。このときはみな休日なしで働く」と話す。

 農場支援は各行政区域単位や省、中央機関などの職場別に該当農場を担当する形式で行われている。

 平壌市牡丹峰区域が担当する長水院協同農場の場合、支援者は区域内の工場、企業所、サービス業を行う機関などで働く人々であり、その期間は現地で農場員らと寝食を共にする。また、その日のみの「当日支援者」は一日に約1500人だ。そのほか、同農場内にある長水院中学校、牡丹峰区域内の学生たちも支援に参加する。

 農場員は毎年この時期になれば寝食をともにしながら働く彼らを「家族のような存在だ」と話す。

 農場支援は人手面だけではない。各行政区域の人民委員会の中に設けられた農業担当部署が農機具をはじめいろいろな物的支援を行う。

 また、支援者の働きに対する分配はその労働量によって決まる。

農作は天下之大本

 リ管理委員長によると、農場に対する支援は1960年代から行われてきた。

 しかし、全ての協同農場が支援者を受け入れているのではない。独自の労力と資材で農作を保障し、労力支援を受けない農場も最近はたくさん増えたという。

 「もちろん全ての農場が支援を受けず独自で農作を営むのが理想だ。今後、農業がさらに近代化、機械化されれば労力支援は不用になるだろう」

 管理委員長はこのように語りながらも、支援事業は不足する人手を補充することだけに目的があるのではないと指摘しながら、「農作は天下之大本」だと強調する。

 「天下之大本」とは「この世で一番の基本となる大きな事」という意味で、古くから朝鮮民族は農作を「天下之大本」としており、それは現在も続いている。

 農業は人民生活向上の重要なポイントで、生活のもっとも基本的な問題である食べる問題と直結しているからだ。人々は幼いときから田植えをし、自然と闘いながら稲を収穫する過程で、農業について学び食物の大切さを学ぶ。

 とくに2005年から農業を経済建設の要として、全力を総動員、総集中させることに対する国家的措置が取られる中、農業支援に対する人々の意識は高まってきた。ある支援者は、農村支援を「公民の義務」だと言う。

 同農場では今月10日までに全ての田植え工程を終え、その後は、草取りに力を注ぐ予定だ。

 同協同農場のキム・ソングク作業班長(39)は、「国の方針を貫徹して食べる問題解決のために、わが班の収穫高を高めていきたい」と話した。

田畑にあふれる生活風景 主婦も農場へ

職場の同僚とともに田植えをする支援者ら(右から2人目がキム・ヘスクさん)

 キム・ヘスクさん(48、牡丹峰区域凱旋洞在住)は、長水院協同農場へ支援に出始めて今年で7年になる。彼女は主婦らの協同組合である牡丹峰区域家内生産協同組合労働者だ。帽子、手袋、座布団など、生活に必要な消費物資を生産している。

 同協同組合では今年、100人が長水院協同農場支援に動員された。2組に分かれ、一日交替で農場へ赴く。

 2005年、農業を経済建設の要として、全力を「総動員、総集中」する方針が提起され、キムさんの職場でも農場支援が強化された。

 農場には職場の同僚らとバスに乗って向かう。作業は朝8時から12時まで、昼食後14時から18時まで行われる。

 キムさんは、「コメで社会主義を守り、強盛大国建設を早めようというのが支援者全員の気持ちだ」と話す。

 彼女は、職場同僚40人と同じ作業班に属し一緒に働いている。

 「作業はきついが決して苦痛ではない」と人々はいう。

 田んぼには、放送車から流れる音楽が響き渡り、人々の笑い声が常にあふれていた。

 キムさんは、女性として、主婦として、母親として、ほかの支援者らと交わす話も多いようだ。「家族の話や生活の話で、キリがない」。

 キムさんの2人の娘と軍隊服務をしている夫も、この時期は農村支援に参加している。

 キムさんは、「農場支援も生活の一部だと思って楽しくすべき」だと、田植えをする手を休めずに語った。

[朝鮮新報 2007.6.13]