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平壌市近郊のテチョン牧場 草取り作業の真最中 年間目標達成に自信

主要ホテルの台所預かる

 祖国を訪れた在日同胞たちの間で、平壌ホテルをはじめとする対外奉仕施設で出される料理がおいしいと評判だ。第一には料理士たちの腕だが、それとともに良い食材を使っていることにも要因がある。米、肉、調味料に至るまで食材は対外奉仕局傘下の農場など食材基地から提供されている。その一つ、米を提供している平壌市テチョン郡にあるテチョン牧場を訪ねた。

一面、緑の絨毯

腰ほどにまで成長した苗。田園に入り除草作業。後方はトウモロコシ畑

 梅雨の中休み、空は晴れ上がり心地よい風の吹く7月中旬の朝、大同江近隣の平壌ホテルを9時に出発し平壌−元山観光道路を車で走ること約40分。両脇にポプラとアカシアが植えられた観光道路を右に折れると一面、緑の田圃が目に飛び込んできた。テチョン牧場である。

 田圃では、10代後半から30〜40代の男女合わせて7人の農場員たちが草取り機を走らせていた。米の苗は約1メートルほど、農場員たちの腰ほどにまで成長していた。

 農場員たちが草取り機を走らせると、そのたびに居場所を追われた雨蛙がピョンピョンと飛びはねて逃げ回る。なんとものどかな風景である。

 それにしても、米を作っているのに「なぜ牧場?」と疑問に思い、案内役を買って出てくれたキム・マンゴル技師長(52)に尋ねてみた。

 「元々は農場だった。牧場という名前に代わったのは昨年から。というのも、穀物栽培の主要目的が飼料用だったからだ。しかし、水が豊かで米の質が良く、平壌市にも近いということで市内の主要ホテルに米を供給することにもなった」

 今年の稲作は順調だという。そのことは一面、緑の絨毯の光景が物語っていた。田植えは計画通り、6月1日までにすべてを終え、現在は苗の成長を妨げる雑草取り作業の真っ最中である。

 今年は例年に比べて降水量が少なく、稲栽培の命ともいえる水の確保が心配になったが、1970年代に、大同江へ合流するムンロ川とサンウォン川の水を引き入れた貯水池が建設されており支障はないという説明だった。

悩みは肥料不足

農場員たちと共に。みな表情が明るい(前列左から2番目がキム技師長)

 テチョン牧場では、450世帯が暮らしている。労働時間は朝8時から夜8時というのが平均だそうだ。間に、2時間半程度の昼食を兼ねた休憩時間をはさむ。

 主要作物は稲とトウモロコシでそれぞれ216、190ヘクタールの田圃、畑に植えられ、その他、大豆、玉ねぎ、唐辛子、蕎麦、からし菜などを栽培している。

 同牧場の住宅地に向かう道に沿った右側一面と左側の道端に近い幅20メートルほどが田圃で、左側の奥の部分にトウモロコシ、そして住宅地の周辺で豆や唐辛子などが栽培されていた。

 テチョン牧場の規模、収穫高などについて尋ねるとキム技師長は「米は昨年、ヘクタール当たり6.5トン取れた。全国的に見ても高い水準だ」と胸を張った。

 雑草取りの作業は、稲栽培において骨の折れる作業の一つだが、稲の成長においてこの時期、けっしておろそかにしてはならない作業でもある。

 またもう一つ、害虫駆除も欠かせない。10日に一度は害虫駆除と共に成長促進のための肥料を散布する。多い時はそれが一週間に一度になるという。悩みの種はその肥料不足だ。

 しかし、キム技師長は「ホテル用の米、資料用穀物の収穫目標はどんなことがあっても達成しなければならない。それが党員である私が党の前に誓ったこと。もしも達成できなければどこかにしわ寄せが行き、国の穀物生産計画にも支障をきたす。だから常日頃、農場員たちに目標達成の重要性を強調し、一体となって作業に取り組んでいる」と力強く語った。

「一石三鳥」の大豆栽培

 テチョン牧場で現在、力を注いでいる作物があるという。大豆の栽培だ。

 大豆からは食用油が取れるし豆腐の原料でもある。栄養価が高く、さらに残りかすは家畜の飼料にもなる。「一石三鳥」の作物だ。

 「大豆の目標収量は83トン。金正日総書記は、従来の大豆よりも収量が見込まれる『ファンジュ20号』を送ってくれた。その期待にはぜひ応えなければ」(キム技師長)

 草取り作業を終えた農場員たちが田圃から引き上げてきた。カラフルな服に麦藁帽子、みな疲れた表情を見せることなくニコニコの笑顔。一仕事をやり終えた満足感に満ちていた。

 同牧場一筋で、技術指導員から技師長になって5年、1男2女の父親であるキム技師長。「みな、明るいでしょう。強盛大国実現に自信を持っているからだ。苦難の行軍を経て、総書記の先軍政治が正しかったことが証明された」。

 農作業の傍ら、農場員たちは自力で新しい文化住宅の建設も行っていた。すでに40棟が完成、さらに6棟の完成が間近だった。「日本では総連組織、在日同胞に対し安倍政権が政治弾圧を行っているというニュースを連日、耳にして心配している。過去の清算もせず、植民地支配の犠牲者とその後裔である在日同胞をじゅうりんするなど安倍政権は常識も理性もない。主権侵害、絶対に許さない。屈することなく最後まで戦い抜いてほしい」

 キム技師長はこう語りながら、日焼けしゴツゴツとした両手で記者たちの手を力強く握り見送ってくれた。(文=厳正彦、写真=盧琴順記者)

[朝鮮新報 2007.8.1]